月
Moon
月齢14
2014年、4月15日の0:00~3:00にかけてスケッチした月
左下(月の方角では南西)に東の海(MARE ORIENTALE)が顔を見せています
月はほぼ満月の状態。西側が少し欠けていて、時間の経過と共に、東の海がじょじょに その姿を現していきました。東の海は巨大な多重リングのクレーターですが、地球からはわずかにその姿が見えるだけです。それでも、夜明けを迎えて陰影を明らかにしていくその姿を見ると、なにやら巨大な構造があると分かるでしょう。三つに重なった山脈のような感じで見えています。ただ、日が昇るにつれて影が短くなるので、3時を過ぎると、起伏のはっきりしない、のっぺりとした姿になっていました。東の海はごく短時間しか見えない構造のようです。また、秤動の影響で見えなくなる場合もあるので、観察が難しい地形です。
*マレ オリエンタレ(MARE ORIENTALE)、これは直訳すると”東の海”になります。実際、以上のスケッチは私たちからすると、右が西、左が東です。ですから左にあるマレ オリエンタレは東の海。しかし月からすれば逆です。太陽が昇る方角が東だとすると、とっくに光を浴びている右側が月の東、今、夜明けを迎えつつあるマレ オリエンタレが西側となります。手持ちの文献では、昔は地球から見て東だから”東の海”と名付けたそうですが、その後、月の方位で東西南北を表すことになったので、こういう不整合が生じたとか。
2014年5月13日、22:00〜翌1:30にスケッチした月
13日の正午月齢は13.9 スケッチ時の月齢は14.3~14.46
気流は普通。ただ、空がかすみがちで細かな地形までは分からず
月齢は冒頭2014年4月15日のものよりも前なので、東の海はまだ見えていません。月齢のことを考えると、黒抜きの、まだ夜明けを迎える前の部分が少し狭すぎのようですが、これはご愛嬌。南半球で巨大なクレーター・バイイ(Bailly)が見えています。これは直径が300キロあまり、月の表側で、なおかつクレーターらしいクレーターの中では最大のものです。
一方、これとは反対に、小さいものの特異なクレーターが北半球にあるリヒテンベルグ(Lichtenberg)です。これは嵐の大洋にあるクレーターですが、小さく目立たないながらも西側(画面左)に光条を持ちます。その一方でクレーターの東側(画面右側)には光条がなく、周囲の海の色が暗く濃くなっています。東西で対照的な明暗の様子はまるで陰影のようで、ちょうどえくぼのようにくぼんで見えます(実際にはくぼんでいません)。
これはリヒテンベルグの光条が溶岩で隠されたもののようです。光条のあるクレーターは月の歴史の中ではごく新しく、10億年より若いと考えられています、そうである以上、光条を覆う暗い溶岩はさらに若いことになるでしょう。月における代表的な火山活動は海を覆う溶岩が噴出した出来事で、これらは38億から31億年前の間に何度か起きました。それに比べると10億年前、あるいはそれより最近になって起きた火山活動というのは、破格に新しいものです。
かつてリヒテンベルグ周辺で起きた火山活動は、月における火山活動の、最後のものだったかもしれません(「月の科学」 Squdis 2000 pp137)。
ちなみにリヒテンベルグの直径は20キロあまり。100倍でも点のようにしか見えない、小振りなクレーターです。
2017年12月2日 20:00〜23:00の月
正午月齢は13.6 スケッチ時の月齢は14ほぼきっかり
巨大クレーター、バイイが見えるかと思ってのぞいてみると、バイイはすでに夜明けを迎えて、絶頂に真っ白けっけ。描いてもどうにもならないので、ここでは書き記していません。
代わりというわけではありませんが、クレーター、ダーウィンとラマルクを200倍で見た様子を左下に描いています。中央、縦に並んだ長方形っぽく見える二つのクレーターがそれで、上がダーウィン、下がラマルクです。ラマルクの方がやや標高が高いので、まずラマルクが形成されてから、ダーウィンが形成されたように見えます。
ダーウィンとラマルクのさらに下(方位でいうと南)にはクレーター、ラグランジュが見えています。
また、ダーウィンよりも奥、さらにそこからラグランジュまで、南北に線状の谷の影が走り、さらにその向こうで朝日を浴びる直線の構造が見えます。これはコルディエラ山脈で、東の海を囲む多重リングのひとつです。手持ちの資料では、ダーウィンクレーターを縁取る奥の壁も多重リングのひとつに数えるものがあります([The Geology of Multi-Ring Impact Basins Fig3.9 ])。
さらにラグランジュの南に見える直線構造は東の海形成時に出た放出物によってうがたれたものと言います。
以下は月齢14における南極の景観(上下が逆さまで画面下が北)
2018年3月31日 22:00〜25:00 月の南極の様子 正午月齢は13・6、スケッチ時は14・1
2018年3月31日の月。月齢は14・1 画面は上が南で下が北。ちょうど南極を逆さまで見ている状態です。満月だけれども南極だけ影がある状態で、画面右にバイイ(直径284キロ)がうっすらと見えています。バイイは奥の方がなにかこう、暗く見えます。
目立つのは画面中央やや左に扁平な姿を見せるクレーター、デモナックス(Demonax)紀元後2世紀のギリシャ人哲学者の名を冠されたクレーターです。直径は114キロ。バイイに匹敵するぐらい大きく見えますが、どうも同じぐらいの大きさのクレーターが隣り合ってそう見えているだけの様子。デモナックスの右にクレーター、スコット(Scott)があります。スケッチには書き込んでいませんが、スコットの背後にある山はクレーター、アムンゼン(Amundsen)の周壁です。南極点一番乗りを目指して争った二人の名前がついています。
他は、横から見たクレーターの周壁や山(周壁の残骸みたいなもの?)が重なり合ってよくわかりません。それでも一応書くと、デモナックスの左手前に四つ並ぶ薄暗い影、これはクレーターで、左手前のものがヘルムホルツ(Helmhoitz)。そしてバイイのやや左にある山脈のさらに後ろにある壁のようなもの、これがボルツマン(Boltzman)の周壁のようです。どちらも有名な近代物理学者の名前ですね。画面中央、クレーターの周壁の前に並ぶ二つの影、手前の影がニュートン。
以下は2018年5月1日 月齢14・5の月とその南極
2018年5月1日1:00 正午月齢は15 観測時の月齢は14・5 南極とその周辺
2018年5月1日 月齢14・5の月とその南極。満月を通り過ぎてすでに欠け始め、画面向かって左から影がせまり始めました。クレーター、デモナックスやスコットの陰影が強くなっています。その後ろのアムンゼンは姿がはっきり分かります。その右側にある影は良く分かりません。スコットとアムンゼンの間にはいくつかクレーターがあるのですが、この影自体はいずれにも該当しないようです。単に手前の山が作る影かもしれません。
そしてその右側に見えているのがシャックルトン(Shackleton)。太陽が画面向かって右側から照り始めた反映でしょう、影が右側にできています。南極から見ると太陽が地平線をぐるぐる回っているように見えることが分かります。シャックルトンは南極にあるため、内部が永久影となっているクレーター。このため内部には氷が揮発しないで残っているのでは? と期待されているクレーターです。
シャックルトンの手前やや右ではマラパートがありますが、こちらを向いたお椀のような影を見せるのみです。その右にあるカベウス。山の作る影が濃く見えますが、他は実際には淡くて、ここまではっきりした姿ではありません。このスケッチでは陰影を強調しています(そうしないとカベウスの地形が分かりません)。さらにその右にドリガルスキーが見えています。これは巨大でなおかつきれいな形のクレーターです。