Mars

火星

公転周期:686.98日

軌道長半径:1.524天文単位

赤道半径:3396km

質量:地球の0.1074倍

密度:3.93

自転周期:1.026日

 

ここでは2020年、準大接近時の火星を10月10日から紹介します。

 2020年、2年2ヶ月ぶりに地球が火星を追い抜き、双方の距離が縮まる時期が来ました。今回の接近は準大接近というべきもので、距離は6207万km。火星の北半球は9月2日に冬至。反対に南半球(スケッチでは上半球で今回、地球に向いている面)は夏至を迎え、地球との最接近は2020年の10月6日。それから1ヶ月が過ぎた11月12日、火星のオーロラ湾で砂嵐(黄雲:ダストストーム)が発生します。以下は発生前の11月10日からの火星の様子。

 

 左は11月10日 21:20の火星。この前のスケッチは10月31日なので、10日ぶりの火星観測となります。11月、天気を悩ませた台風はこなくなり、秋雨前線も消え、晴天が続きます。しかし、気流は顕著に悪化。いつ火星を見ても、南半球が暗いこと、南極冠がまだ残り、夕暮れの経度の赤道付近で白雲が輝いていること。これしかわかりません。どうも列島上空を通るジェット気流が強まったのが原因らしい。気流が比較的良好になったのはようやく10日。

 左の火星の中央の経度は100度。観察していなかった10日の間に火星の欠けははっきりわかるようになって、明け方の経度が欠け始めています。火星の中央やや左に太陽湖がありますが、観察はすでに難しくなりました。最接近から1ヶ月経過。火星はかなり小さくなって、乱れる気流の中で小さな太陽湖はおぼろにかすみ、なかなか見ることができません。

 真ん中は11日、21:10の火星。中央の経度は90度。太陽湖(Solis)とその周辺が見えています。これが砂嵐が起こる前、火星本来の姿。ちなみにこの日、ジェット気流の速い領域は列島の南に下がる予報で、そのせいか気流は比較的良好。

 右は続いて11日 23:55の火星。シレーンの海が正午を迎えつつあります。明け方の白雲が顕著。

 

 12日にオーロラ湾で砂嵐(黄雲)の発生第一報。しかしこの時点で私はこれを知りません。左は13日 21:30の火星。気流は悪く、上空のジェット気流は50m/s 中央の経度は80度。火星の左にオーロラ湾(Aurorae)が見えています。砂嵐発生から1日が過ぎていますが、この時の自分は気づいていません。ただ、オーロラ湾の向こう、夕暮れの領域が明るく黄色味を帯びて輝いていることには気がついて、スケッチにも

 ”(オーロラ湾の向こうが)明るく黄色味をおびる オーロラ湾の向こうが明るいのは10/10ー11−12にもあった”

 と、当日の書き込みがしてあります。

 今回の接近において火星は南半球が夏を迎えており、赤道付近、特に低地になっている場所で夕暮れ時に雲が明るく輝くということがしばしば観察できました。オーロラ湾とマルガリータ湾の間は標高が低く、多分、それで明るく見えているのだろう。雲もかかりやすいのだろう。当日はそう考えています。しかし黄色く見える、ということからすると、多分、夕暮れに輝く砂嵐をそうと知らずに見ていたのでしょう。

 ちなみに、当日の自分の注目は実のところ、オーロラ湾の下から北極へ伸びるはっきりした帯でした。この帯は多分、GangesからLunae Lacusで、最接近時(例えば10月10日の23:30)よりもはっきり見えている。これは多分、昔から知られていた濃化現象というもので、極(この場合は南極冠)が夏を迎えて溶けるに従い、火星の模様がだんだんに濃くなっていく。それも、最初は極冠に近い場所。そして次第に遠い場所へと模様の濃化が広がっていく。濃化現象は古典的には水分の供給に従って火星植物が成長していくものと解釈されましたが、もちろんこれは正しくない。しかし今、濃化現象を見ている。ではこれは一体どういう現象であるのか? それはわかりません。

 真ん中は14日、21:10の火星 ジェット気流は30〜40m/s 細かな乱れはないけども、像が多重にぶれる気流です。火星の中央の経度は65度 正面にオーロラ湾が来ています。実はこの時、オーロラ湾が分離しているように見えましたが、確信は持てませんでした。一方、正面のオーロラ湾と左のマルガリータ湾の間が黄色く、明るく見えており、これは多分、砂嵐を見ていたのでしょう。

 一方、オーロラ湾から下に伸びる模様は以前よりもはっきりしており、やはり濃化現象が起きていることがわかります。濃化現象の原因はなんでしょうか? ただの目の錯覚なのか、あるいは何か原因がある、実在の現象なのか?

 右は15日 18:50の火星 オーロラ湾で砂嵐発生のニュースを聞いた後に観察したもので、上空のジェット気流は30m/s以下 火星の正面にマルガリータ湾が来ており、明け方の領域が奇妙に黄色く、明るく見えます。スケッチ右に描いた火星は気流が悪い状態で見た時の様子で、マルガリータ湾よりも右が黄色い領域にすっぽり削られています。しかし気流が良い状態だと砂嵐の中にぽっかり浮いたようなオーロラ湾を確認できます。砂嵐が拡大してはっきりと見えてきました。

 

 左は先に続いて15日 20:55の火星 中央の経度は55度 正面にオーロラ湾 その上、横に伸びる棒状の明るい領域が見え、これが砂嵐。14日、さらには同じ15日の18:50に明るく見えたオーロラ湾とマルガリータ湾の間は、特に何も見えません。しかしこの後、22:35には明るく見えてくるので、時刻と太陽の位置によって砂嵐が目立つか目立たないかが決まるらしい。一方、火星の右側、明け方の太陽湖(solis)の周囲が明るいですが、これも砂嵐らしい。

 真ん中は続いて15日 22:35の火星 中央の経度は70度 オーロラ湾は日没へ。オーロラ湾の上、そしてオーロラ湾とマルガリータ湾の間が黄色く輝いています。さらにアガトダエモン(Agathodaemon)が見えないか、あるいは不明瞭。先の20:55の時には見えていたのに見えないのは、さてなぜか? 気流が悪いせいなのか、あるいはニュースによるとアガトダエモンの正体であるマリネリス峡谷に嵐が入り込んでいるので、アガトダエモンが見えにくいのは道理で、一方でアガトダエモン周辺の暗い領域はまだ見えているのかもしれない。砂嵐自体が時刻や太陽の位置で見え方が相当変わるので、模様も同様に顕著に見えにくくなったり、見えたりするのかもしれません。

 右は16日 19:25の火星 上空のジェット気流は30m/s 明け方と夕暮れの経度が奇妙に赤く見えますが、これは気流で画像が乱れる時にそう見えただけなのか、あるいは砂嵐のせいで本当に夕暮れが赤いのか? これが良くわからない。火星の夕焼けは本来、青のはずで、夕暮れが赤いということは...原則ないはず。ちなみに自分が火星スケッチで夕暮れ色と表現する時、それは”この部分は暗い砂漠色で通常の黄色よりは黄土色やオレンジに見え、そして白雲もない”という程度の意味です。とはいえ、この時間の観測の感想を言うとスケッチ右に書き込んでいるように、明け方の経度にはその上に薄く白雲がかかっており、そのさらに上に赤い領域があって、朝焼けしているように見える、というものでした。

 

 左は続いて16日 20:50の火星 中央の経度は40度。火星の真ん中に十文字に明るい領域が見えていて、正中線の上部分は多分、アルギューレI (Argyre I) そして東西に明るい帯、下側(方位は北)にはマルガリータ湾とオーロラ湾を切るように明るい領域が伸びます。火星の地形図と等高線を見ると、これはアリュギューレ盆地からアキダリアの海へと続く低地と谷間で、火星の砂嵐が低地に沿って拡大したことがうかがえます。

 真ん中はさらに続いて16日 22:00の火星。中央の経度は55度。雲がかかってしまって観測時間は短く、概要のみのスケッチ。オーロラ湾が太陽湖とその周辺から分断されており、間に砂嵐が伸びていることがうかがえます(写真撮影した人たちの画像を見ると、マリネリス峡谷に砂嵐が流れ込んでおり、それでオーロラ湾が分断されて見えている)

 右は続いて日付変わって17日 1:00の火星 中央の経度は100度 火星の真ん中に太陽湖が見えるはずですが見えません。またオーロラ湾が太陽湖とその周辺からほぼ分断されており、マリネリス峡谷に流れ込んだ砂嵐のみならず、太陽湖にまで広く砂嵐が拡大したことがうかがえます。太陽湖は標高が高いので、ここの砂嵐は風でなびいて画面右側、火星の方位でいうと西へ動いていることが推論できます(つまり東風が吹いている)。

 

 左は11月17日 20:10の火星 中央の経度は20度 南風強く望遠鏡がゆれる天気で上空のジェット気流は30m/s 気流は乱れつつも時折回復する感じ。火星の明暗境界線の右上がふくらんでおり、太陽湖の周辺にある雲が朝日で輝いていることがわかります。火星の中央にはヒョウタン型、あるいは亜鈴状の明るい領域があり、砂嵐が南北に拡大していることが分かります。

 真ん中は17日 21:40の火星 気流悪く、雲が出て観察は50分に終了。太陽の照らし具合の違いか、砂嵐の特に明るい部分が東西に棒状に伸びて輝いています。その延長右側で火星の明暗境界線がふくらんでいますが、20:10の時よりふくらみが弱くなっている。多分、正中線の経度40度から考えて60度ぐらい先が明暗境界とすると、経度100には砂嵐がまだ広がっていないのでしょう。

 右は続いて日付変わった18日 0:15の火星 中央の経度は75度 左上の明るい領域はアルギューレ盆地 その延長に明るい領域が火星中央付近にまで斜め帯状に伸びています。多分、これは砂嵐(黄雲)で、先の21:40の観測で見た明暗境界線の膨らみの正体が多分これ。この黄雲は火星の正中線75度ぐらいで途切れているので、21:40の明暗境界線の雲の輝きが弱っていたこと、つまり経度100度に黄雲が広がっていないだろう推論と整合的です。そしてオーロラ湾が周囲(特にエリスラエウム Erythraeum)から分断されていることから、ここにも黄雲が流れ込んでいることが推論できます。

 

 左は18日 20:20の火星 上空のジェット気流は60〜70m/s ジェットが速い解析なわりには気流は比較的良くなる場合があり、火星中央の経度は15度 火星正中を挟んで東西に並ぶのはマルガリータ湾とオーロラ湾。間を南北に貫いて砂嵐が広がっており、右上では黄雲が明け方の方向、つまり西へ伸びています。要するに火星の南半球では東風(東から西へ流れる風)が吹いている。一方、火星の左下ではサバ人の湾(Sabaeus)とアリンの爪(Aryn)の先を左下へ舌状に伸びる砂嵐があります。つまり火星の北半球では西風(西から東へ流れる風)が吹いているらしい。実際、そうとでも考えないとより標高の低いアキダリアの海へ砂嵐が広がらないことは説明できないでしょう。

 

 *火星の気象に関しての予備的な注釈:火星は地球の100分の1以下の大気しか持ちません。太陽光が遮られることなく地表に届くため、火星の気象は日照により受け取る熱の影響をそのまま反映します。今、火星は南半球が夏至をすぎて夏であり、白夜状態の南極が一番熱を受け取っている。このため、南半球(スケッチで言うと上半球)では暖かい南極から周囲に風が流れる。この風は火星の自転によるコリオリの力を受けて進路が曲がります。直感的に説明すると、惑星の回転軸に立つ人は軸の上で1日一回回るだけ。しかし赤道にいる人は猛烈な速度(地球なら時速1670km 火星なら870km)で動いている。つまり極から赤道へ向かうと大地の速度はだんだんと速くなるわけで、極から出歩いた人は速い速度を持つ大地に取り残されることになり、自転と反対方向、西へ移動するようになる。風も同様で、夏を迎えた火星の南半球において、南極から赤道方面へ吹き出た風は進路が曲がり、東から西へ吹く東風となる。だから南半球の太陽湖では砂嵐が西へ(スケッチでは右側、火星の明け方の方向へ)なびく。

 *反対に冬を迎えた北半球では、北極が一番寒く、赤道が素直に一番暖かい。つまり北半球では温度分布も気象パターンも地球と同じで、赤道から極へ風が向かう。さて、この場合、大地の動く速度が速い赤道から、動きが遅くなる極へ向かうわけで、風は大地を追い抜いて自転方向へと進路が曲がる。つまり東へ向かう風、西から東へ吹く偏西風となる。だからクリュセの平原を超えた砂嵐は東へ、スケッチでいうと左、夕暮れの方角、アリンの爪方面に流れる。アキダリアの海へは進まない。そういうことが説明できるし、見て取れるでしょう。

 

 さて、真ん中は続いて18日、21:50の火星 中央の経度は35度 20:20に見えていた明暗境界線でのふくらみ、つまり明け方に輝く雲が見当たらないことから、火星正中の35度から60度ほど足した90〜100度付近に砂嵐が達していないらしいことがうかがえます。

 右は19日 18:45の火星 中央の経度は345度 上空のジェット気流は30〜50m/sとの解析だけども、気流は良くありません。とはいえ、一応概略を知ることはできて、火星左中央から三又に伸びるサバ人の湾、パンドラ海峡、ヘレスポントス海峡を見ることができています。前日18日やさらにその前の17日に見た、マルガリータ湾の左に見える斑点はなんだろう? と首をひねっていたのですが、これはサバ人の湾の先端、アリンの爪で良いらしい。アリンの爪も(一時)黄雲に隠されたと聞いていましたが、肉眼で見る限りはちゃんと見えています。あるいは隠されているけど部分的に見えていたのかもしれません。あるいはこの時、この地域の砂嵐は止んでいたのかもしれない。ともあれ、この時、舌状に伸びる明るい黄雲を見ているので、18日、アリンの爪の周囲に砂嵐があるのは事実。ただし経度35度で南北に連なる明るい黄雲よりは淡い状態(ちなみに概略図ではアリンの爪のスペルが間違って Arygn になってますが正しくは Aryn)。

 

 左は続いて19日 21:00の火星 前線が近づき風があり鏡筒が揺れる状況。気流も悪化。火星の中央の経度は15度 真ん中にマルガリータ湾。その左にある黒い斑点はアリンの爪/子午線の湾 アリンの爪とマルガリータ湾の間が比較的明るく、同様にマルガリータ湾の下も逆三角で明るく、多分、砂嵐あり。顕著に明るいのは火星の右上に帯状に伸びる領域。

 真ん中は続いて19日 23:40 気流悪く、雲も出て観察時間短い。中央の経度55度 オーロラ湾が分断されているので、ここに前と同様砂嵐があることが推し量れます。火星の右上、明暗境界線がふくらんでおり、火星中央の経度からすると太陽湖の向こう、100度以上に黄雲があることが見て取れます。18日の21:50では中央の経度35度ですでにこのようなふくらみがなくなっていたので、黄雲が東風に流されて西へ西へと広がっている証拠かもしれない。

 右は21日 19:00の火星 観測は1日空き。列島を前線が通過。雨が少し降って曇り空の後、21日の夜は快晴。ジェット気流は60〜70m/s ジェットの速さの割りには気流は比較的良好で、しかし像は多重にブレる。火星の左下は夕暮れの大シルチスと、いつもどおり雲をかぶって白く輝くイシディス(isidis)の盆地。上は同じく夕暮れに輝くヘラス。しかしヘラスはやや黄色で、黄雲をかむっている? という色合い。もしかしたら太陽湖を超えた黄雲がヘラスを越えた? とも思ったけども、それはいくらなんでも早すぎる。また、21日に検索した限りヘラスに黄雲が発生したという報告はありません。

 一方、ヘラスから火星の中央には明るく舌状に伸びる地域があり、こちらは明らかに黄雲。ヘラスで発生した黄雲が拡大してきたようにも見えますが両者がつながっているのか確証が持ってません(続く20:45の見た目からするとむしろつながっていないように見える)。それにそもそもヘラスで砂嵐が発生したという証拠もない。火星の中央やや下を横切るようにサバ人の湾が見えていますが、先端のアリンの爪/子午線の湾が細くなっているか、あるいは見えない。もしかしたらマルガリータ湾の左下直下にある斑点が子午線の湾かもしれませんが、いずれにせよ、この近辺も黄雲に覆われている模様。

 

 左は続いて21日 20:45の火星 中央の経度は20度 気流はそこそこだけどもやはり像がブレる。火星の左ではヘラス方面が明るく黄色く膨らんでおり、どうも黄雲があるように見えるのだけども....。サバ人の湾とマルガリータ湾とその周辺が斜めの平行線状態。間は明らかに黄色で砂嵐が目立ちます。火星中央右側は淡いけどもオーロラ湾。時間経過にしたがってはっきり見えてくるので、多分、朝靄に覆われていて、太陽に照らされるにつれてモヤが晴れていく状況らしい。オーロラ湾の上では東風に流された黄雲が右側へ棒状に伸び、オーロラ湾の下では舌状に伸びた黄雲が西風に流されて、さらにアリンの爪/子午線の湾のあたりで回り込むように流れているように見えます。

 真ん中は続いて21日 22:40の火星 中央の経度は50度 像のブレはおさまりましたが、高度が低くなったせいか、細かな陽炎のような乱れが発生。火星左に輝くふくらみがあり、位置が20:45よりも下がっている。もしこれがヘラスの黄雲(があるの)なら、その黄雲は斜め伸びているように思えます。オーロラ湾の左下には舌状に伸びる黄雲。上には棒状の黄雲。

 右はさらに続き日付変わって22日、0:10の火星 中央の経度は70度 高度はさらにさらに低くなり気流は顕著に悪化。明白に同定できるアルベド地形はオーロラ湾しかありません。とはいえ、どうもオーロラ湾の上の黄雲がうねるように西(右)へ伸びて、明暗境界線にまで達しているらしいことが見て取れます。中央の経度から例えば単純に60度を足したら、多分、経度130度にまで黄雲が届いているのでは? 先入観を持ってしまうのであまり良いことではないかもしれないけど、スケッチ後に検索してみると海外の観測者の写真でシレーンの海にまで黄雲がなびいているものがありました。このスケッチではシレーンの海は明瞭には見えていませんが、明暗境界線にやや明るい領域に挟まれた棒状の模様が見えています。経度からすると多分、これがシレーンの海と同定(ちなみにシレーンの海にまで黄雲がなびいている写真を見つけたのはこの同定の後)。

 

 22日より前線通過で天気悪く、24日に晴れ しかし突然薄雲が出て、それがうろこ雲になったりする夜。左は24日 21:55の火星 ジェット気流は50〜70m/s 火星の中央の経度は360度 全体的に黄色く、明暗のコントラスト弱く、かなり広い範囲が煙っているらしい。中央斜めによぎるのはサバ人の湾。21日にあったサバ人の湾の南(上)にあった顕著な砂嵐は見えず、ここの嵐は弱ったらしい。その一方でパンドラとマルガリータ湾が途切れているので、パンドラの東端に黄雲が存在するらしい。一方、太陽湖方面は19日、18:45にあった右上のふくらみが見えず、この近辺の嵐は弱まった/高さが低くなったことが見て取れます。

 真ん中は日付変わって25日 0:30の火星 中央の経度は35度 高度はすでに低くなったものの、気流はまだしも良い方。マルガリータ湾とオーロラ湾の間が途切れており、ここがまだ煙っていること、一方でその下(方位で言うと北)は明るく黄色いので、まだここは嵐が強いらしい(あるいは標高が低いので漂う砂煙がまだ厚いだけ?)。一方でマルガリータ湾の上からうねるように右へ明るい領域が伸びており、南半球高緯度を帯状に黄雲がなびいているのがわかります。21日〜22日の観測も合わせて考えると、マルガリータ湾の右上から始まりオーロラ湾、ボスポラス海峡を通ってうねり、濃淡ありながらシレーンの海の経度まで伸びている様子。

 右は25日 18:30の火星 ジェット気流は50〜60m/s 中央の経度は300度 大シルチスとヘラス盆地が正面に見えており、黄雲がヘラスの中央を横切っています。21日、19:00に推論されたヘラスの砂嵐はやはりあったらしい。東端は区切られているので、火星を一周してきたものではない。この黄雲はオーロラ湾で発生したものとは別の雲なのでしょう。右を見るとセルペンティスの海を越えて西へ伸びている様子がうかがえます。なお、気流が悪いので判別が難しいですが、南極冠の脇と下に明るい光点があります。

 

 左は続いて25日 21:15の火星 中央の経度は340度 大シルチスは日没を迎え、いつものようにイシディス盆地が夕暮れの中で白く輝いています。時間経過と共に白銀になっていくので、ここは砂嵐がなく、普通に白雲がかかっている感じ。サバ人の湾は奇妙な形になっており、おそらく右の下半分が黄雲に隠されている。反対に付け根側と大シルチスの間はオレンジ色で、ここには嵐がない。ヘラス盆地からは帯状に黄雲が伸びており、セルペンティスの海で途切れているように見えます。しかし、セルペンティスの海の周辺が奇妙な形、二重の帯状になって見えているので、黄雲が存在していること、濃い領域が点々とあるらしきことがわかるでしょう。

 真ん中は続いて日付変わった26日 0:10の火星 中央の経度は20度 ヘラスから帯状に伸びてきた黄雲がマルガリータ湾にまで伸びていることがうかがえます。21日、19:00にはすでにヘラスで黄雲が発生していたように思えるので、それから考えれば5日間に経度で100〜120度動いたことになり、秒速は12メートル程度。そのぐらいの東風が火星の南半球で吹いていると考えれば、この黄雲の動きを説明できるでしょう。反対に先にオーロラ湾で生じて拡大した黄雲は薄まっています(21日 20:45の火星と比べるとそれが顕著)。

 以下は19日から26日までのおおまかなまとめ。

 

 画像のファイル名はmars20201127となっているけど、27日は曇りで観測できず。以上の画像は19日から26日までのスケッチを抜粋して時系列と経度で配置したもの。上下はおよその日時で上が時系列の前で下が後。左右は火星の経度ごとで、左が300度で右が70度(火星の経度は古典的なものを使用)。

 中央縦列を見ると、火星の右上(マルガリータ湾から太陽湖の南にかけて)にあった帯状の黄雲が止んで薄くなっていくこと、反対に火星の左上から新しい黄色雲が帯状にやってきたことが見て取れます。古い黄雲は12日にオーロラ湾で発生しました。一方、この新しいものはヘラス盆地で生じたようで、多分、21日ごろに発生。下段を経度ごとに見ると、新しい黄雲が火星の左、ヘラス盆地から来たことが分かります。

 上段を見ると火星の上の部分(南半球高緯度)には、うねるように、そしてかなりの濃淡を見せながら、南極冠をぐるっと囲むように(古い)黄雲が西へ伸びていることが分かります。海外の写真を見るとこの雲は22日にはシレーンの海付近まで届きましたが、その一方で、27日付けの画像では、太陽湖近辺においてはほとんど消えたようです。

 

 

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