種の起源:第5章の概略的なメモ

変異を説明できる理論/あるいは法則に関する章

Laws of Variation

第0段落

経験や習性によって生じた変化が遺伝する場合がありうる

(*注:この見解自体は間違い)

しかしそれは変異の供給源としてはメインではない(第1章を見よ)

ただ使用しない器官が縮小すること

こうした変化が遺伝することで説明されうる現象がある

とはいえ

それだけでは”ある器官の退化”は説明しきれない

発生する変異と復帰、これと自然選択の作用が長い時間拮抗することで安定的な変異が生まれる

こうした変異に関する法則は進化理論によって予測される生物の有り様と相補的である

 

 ダーウィンが自然界における変異がどのような振る舞いを示すのか。それを説明するモデルというか法則を提示している章。これまでの1〜4章までの内容と重複が多く、なおかつ変異の事例と、それを説明する法則、その法則から導きだされる結論、さらには進化理論をサポートすると思われる現象の記述と、なぜそれが証拠になるのかについての考察など、内容が多岐に渡っており、なおかつ順序がばらばらというかそれぞれ断片的に出てきます。正直言って非常に難解。ただし、非常に興味深い章でもあります。

 

 段落01:Effect of external conditions 外部環境による効果

→第1章と同様。外部環境による生殖細胞の撹乱で遺伝する変異が生じるという説明

 段落02:Effects of Use and Disuse 使用と不使用による効果

→洞窟性の昆虫がなぜ複眼を退化させているのかについて要調査。不用な器官が浮動せずになぜ退化するんだ? というダーウィンの疑問はごもっともで、なおかつこれに答えられるほど自分自身が事例を知らないために要調査ということ。2008.08.07

 それにしてもダーウィンという人は尋常ならざるくらいに頭がいいのでは? と思えてしまう部分。なるほど深海魚の目がひっちゃかめっちゃかなのはこういうことか、と改めて納得(ほんの一言だけ、深海生物ファイルにおけるチョウチンハダカのページで書きましたが)。後、ダーウィンが用不用説を信じていた、という一部でありがちな話はたぶん、おおいに誤解。2008.08.07

 

 段落03:Acclimatisation 気候順化、生物が環境に順応すること(例えば高山にずっといたら慣れました)

 

 段落04:Correlation of Growth 成長の相関、あるいは発生の相関、あるいは変異が相関することについて、とでも訳すべきか、、、。第1章参考。

 

 段落05:A part developed in any species in an extraordinary degree or manner, in comparison with the same part in allied species, tends to be highly variable.

どんな種が持つものであれ、異常に、あるいは異様に発達した器官は、近縁の種におけるものと比べた場合、非常に変異している傾向がある。(Mr.Waterhouse と同様の意見)

異常に発達した器官は、それを持つ近縁種同士が持つものとを比較すると、非常に変異が大きい(意訳)

→:その器官が例えば二次性徴などであって選択の圧力が少ない場合、多様な変異が並立する余地がでてくる。あるいは自然選択を受けて今まさに活発に進化している場所では変異が頻発する。というような内容。前者は多分正しく、後者の見解はひとつにはダーウィンが持っていた変異の理論に基礎があるらしい。どうも彼は進化している器官なり生物では変異が頻繁に発生すると考えている様子。ただしこの解釈が正しいかどうかをまず確かめる必要あり。2008.08.07

 また、これが実際のメンデル遺伝の世界ではどう解釈されるのかも含めて、要検討。ダーウィンが変異を説明するために持ち出した理論や法則はどうもメンデル遺伝の世界と逐一対応しているようなので、これをどう解釈するのかも含めて考える必要がある。2008.08.07

 →:ダーウィンはある遺伝子が種内で固定されるというか定着する仕組みを現代人とはまるで違うように認識していました。そりゃあ遺伝理論というかモデルに違いがあるんですから当然ですね。どうもなかなか理解できないのですが、彼の世界観だとたぶん、生物が本だとすれば自然選択は何度も本を開く行為で、そして変異はそれぞれのページ。彼にとって変異が固定されるというのは、何度も自然選択が本を開くことで本の特定のページに開き癖がつくようなものではないのかと、、、、、。とまあこの北村自身の解釈そのものが正しいのかどうかも含めて要検討/要調査。それにしても以上にもメモりましたが、彼のモデルはメンデル遺伝の世界と逐一対応しているように見えるので(考えてみれば現実を説明するのだから理想的には当然なんですけどね)、ちょっとこの人は尋常ではないなあ、と思う次第。2008.08.07

 

 段落06:Distinct species present analogous variations ; and a variety of one species often assumes some of the characters of an allied species, or reverts to some of the characters of an early progenitor.

→はっきりと異なる種が類似した変異を示すこと。すなわち、ある種に所属する変種がしばしば類縁種が持つ特徴を装っていたり、あるいは原初の祖先が持つ特徴へと復帰していることについて。

共通祖先から派生したそれぞれの種は、しばしば祖先を共有していたと思われる類似した形質を共有していたり、時には祖先が持っていたと思われる原始的な形質を示す場合がある(とてつもなく意訳)。

 

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