種の起源:第6章の概略的なメモ
進化理論に関する難点の考察と、難点による理論それ自体の検証、その1
Difficulties on Theory
理論における難点
第0段落
私(ダーウィン)の進化理論は自然界のすべてを説明できるのだろうか?
生物界の成り立ちを説明する理論である以上
進化理論は自然界のあらゆる事柄を”積極的”に説明できなければならない
そして
進化理論にとって難点と思われる事柄を実際に説明できるか確かめること
そのような行為、それ自体が
進化理論の確からしさを検証することになるだろう
Difficulties on the theory of descent with modification :意訳:自然選択による有利な変異の集積によって系統が誕生するという理論における困難
この章で語られていることはおおむね次の通り、
1:なぜ移行的な種族(transitional formes)がほとんど見つからないのか?
2:コウモリへと至る途中のような、完成されていない種族(コウモリもどき)が果たして存続できるのか?→原始的な種族から”完成された”種族に至るまで絶えず有利さが保証されているような進化上のルートが存在するのか?(自然選択説は理論の性質上、他より有利なルート上しか系統の枝が伸びない)
3:完成されていない器官が果たして役に立つのか(中途半端な目が役に立つのか)→原始的な器官から”完成された”器官に至るまで絶えず有利さが保証されているような進化上のルートが存在するのか?(同上)
1に関しては存続をめぐる争いで中間的な種族(あるいは親種)が新しく、より適合した種族に圧倒されて滅ぼされてしまうから。ゆえに見つからないという説明。
*ただし、この説明は現在において移行的な種族が発見されないことは説明してくれるが、化石記録でもそのような移行が(ほとんど)知られていないことは説明していない。化石記録で種から種、あるいは変種から変種への移行がほとんど追跡できないことに関しては第9章を参考。
2と3は基本的に同じ疑問。考えてみれば当然の疑問であるし、実際、150年間えんえんと投げかけられる質問です。しかしこれらはまあ、あまり内容のない疑問かもしれませんね。ようするにこの手の質問は、
:上にしか登れない
:隣のマス目にしか動けない
というルールで果たしてあの山の頂上まで本当にいけるんですか? という質問ですから、意味があるんだかないんだか。有意義なのかしょうもない疑問になるかは質問者の考えと心がけ次第ということでしょうか?
後、このルールにおいては山頂へと至るルートが原理上存在しないと”証明”した上でこの質問をした人はいないんじゃないですかね(証明自体が不可能なのかは不明)。個人的に聞いたことがあるのは”そんなルートは存在しないと思います”という信仰告白だけでした。
ともあれ、解答者のダーウィン自身は説明する必要があったので、実際にありえたルートの解説を本文で邁進。
:交配の作用が強大だと想定している時に、連続した地域で種分化が起きると考えたその根拠はなに?
個人的に興味があるのは、この章でダーウィンが、隔離されておらず、なおかつ物理的な環境がじょじょに変化しているだけの連続した地域でも種分化が起きると考えていたらしい点。第4章では同じ問題に対してむしろ慎重ともとれる見解を示しているので興味深いところです。南米の2種類のレアのように、まったく連続した地域で種分化している例を彼は見ている。だから現実はそうなのか、、、という程度の考えなのか、あるいはより積極的な説明をダーウィンが試みようとしていたのかは要検討。
後、創造理論に対して進化理論の方が説明能力が高いという論法が比較的多く出てくるのはこの章以後だと思います。それぞれの内容は随時検討。
←第5章00へ戻る 第7章へ進む→