Lichida

リキダ/リカス目

 

 リカス目とは?:

 リカス目はリカスを代表とする三葉虫グループで、目の階級が与えられています。オルドビス紀に現れ、デボン紀末に滅びました。トゲが発達する三葉虫で、コレクターに人気のあるトゲトゲ三葉虫の一角を占めます。ただしリカス目の化石はレアもので、数はそう多くありません。頭鞍(とうあん)は深い溝に区切られ、左右一対の大きな葉(よう:bullar lobe)が目立ちます。

 

 リカス目の特徴と頭鞍:

 リカス目の特徴としては

尾板が比較的大きく、典型的には三対の棘がある

頭鞍が深い溝で区分されて左右一対の大きな区画がある

があげられます。尾板はともかくとして、ここでは頭鞍の特徴について述べます。*ちなみにリカス目の代表であるリカス・ラキニアツスの尾板には二対しか棘がありません。

 頭鞍(とうあん)とは三葉虫の眼と眼の間、頭部の中央にある盛り上がった部分のことです。三葉虫の頭を顔に見立てると鼻のようにも見えます。この頭鞍。解剖学的にはglabella(グラベッラ)と言います。意味はラテン語で眉間のこと。文字通り顔に見立てた用語だと言えるでしょう。日本語訳の頭鞍は、形態的には分かりやすいですが、語源的には正しくないと言えます。

 節足動物の頭部は複数の節が融合することで出来ています。三葉虫も同様で、頭鞍には溝がある。これは融合した体節の痕跡かもしれません。この溝を頭鞍溝(glabellar furrows)とか、単に溝(furrow)と呼びます。三葉虫の頭鞍溝は種類によって特徴的で、溝が深くなって頭鞍を区画することもあります。

 リカス目の場合、深い溝が頭鞍を区分し、左右一対の大きな区画を作る。これが彼らの特徴であり、bullar lobe と呼ばれます(例えばThomas & Holloway 1988 Classification and Phylogeny of the Trilobite Order Lichida を参照)。bullarはラテン語で球とか胞のこと。つまりbullar lobeは頭鞍が区切られて出来た丸みを帯びた葉(よう)と解釈すればいいでしょう。bullar lobeの訳語は見つからなかったので、ブッラーローブとか、頭鞍の区画された領域とか、あるいは単純に(頭鞍の)葉とでも呼ぶことにします。

 以下はリカスのbullar lobeとその様子。頭鞍が区画されて左右一対の大きな区分が出来ていることがわかるでしょう。しかし詳細に見ると、その後ろに小さな区画(L1a)があることがわかります。

 L1aとは三葉虫の頭鞍が溝で区切られてできた葉状の部分のことで、後ろからL1,L2...という具合に番号が振られるもの。リカス目ではbullar lobeの後ろにある小さな区画(葉)が後ろからL1a、L1bと番号が振られています。以上のリカスの場合、L1bがbullar lobeに融合してほぼ消えています。

 

 リカス目とオドントプレウラ目

 リカス目とオドントプレウラ目はよく似ています。どちらもトゲトゲ三葉虫で、頭鞍が複雑な形をしている。違いは頭鞍の区画された領域の数です。リカス目は左右一対。これに対してオドントプレウラ目は左右二対、あるいは三対です。

 このようにリカス目とオドントプレウラ目は識別が可能ですが、詳しく見ると話はそう単純ではありません。実はリカス目の三葉虫も頭鞍を詳しく観察すると、目立たないものの、一対の大きな葉の他に、小さな葉が他にもあることがわかります。例えばホプロリコイデスなの頭鞍を見るとそれがわかります。

 リカス目とオドントプレウラ目は、違いがはっきりしているようで、実は見た目以上によく似ている。多分、二つの目は同じ祖先から進化したのでしょう。分類や、あるいは博物館の展示によってはオドントプレウラ目はリカス目に入れられることもあります。

 

 主なリカス目

 リカス

 ホプロリカスとホプロリコイデス 

 アカンソピゲとロボピゲ

 アルクティヌルス

 

 

 

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