Chelicerata

ケリケラータ/鋏角類

 ナガコガネグモ

陸上で生活する代表的なケリケラータ

2006.03.11更新:クリックでアラネアのコンテンツへ

 

 ケリケラータ(鋏角類)とは?:

 ケリケラータ(つづりがChelicerata なので英語とかではチェリセラータと発音されるらしい)にはクモ・ダニ・ザトウムシ・サソリなどの他にカブトエビ、絶滅したウミサソリ、奇妙な節足動物であるウミグモが含まれます。

 現在の種はウミグモとカブトガニを抜かすとすべて地上性か、あるいはミズグモとかミズダニのように二次的に水中にもどった動物しかいません。ただ絶滅した種類には海中で巨大な捕食者になったものもいます。

 非常に特異な特徴は触角を持たないことです。節足動物における他の大グループである甲殻類、昆虫、多足類、さらにケリケラータに近縁であろう三葉虫でさえ触角を持っています。また顎はなく、そのかわり胴体にある最初の脚が鋏角(chelicerae)とよばれるハサミのような器官になって、これで獲物を捕まえたり、ちぎったり、毒を打ち込んだりします。

 この鋏角は日本語では「きょうかく」と読みます。一般的に鋏角は甲殻類の第2触角に相当するのではないか?、と考えられています(参考:「動物系統分類学」中山書店 :[Arachnida] T.Savory 1964 Academic Press)。

 ちなみにそうだとするとケリケラータの特徴である、触角を持たない、鋏角を持つ、この2つの特徴はある程度は連動した特徴である、ということになりそうですが、そこのあたりの議論はまだ把握していません。なお、違う仮説もあって鋏角は甲殻類や昆虫の大顎に相当するものであるというものもあります。いずれにせよ古典的にスタンダードな仮説はケリセラータの鋏角=甲殻類の第2触角ですね(近年の成果についてはおいおい補完の予定)。またこの仮説に従うと昆虫にはこれに相当する脚はありません。また相同ウンヌンの問題とはまったく関係なくクモの鋏角はしばしば大顎:Mandible と呼ばれます(「原色日本蜘蛛類図鑑」 八木沼健夫 保育社 1978)

 

 ケリケラータの特徴:

 先にいったように触角がなく(どうも退化したらしい)、また身体は胴体と腹部に分かれます。胴体には6対の脚が残っていますが、最初の1対は鋏角になっており、次ぎの1対は触肢と呼ばれるものになっています。つまり、

 1対目→鋏角(Chelicera)

 2対目→触肢(Pedipalpus)

 3〜6対→歩行用の脚

になっているわけですね。

 右のサソリの写真を見て鋏角と触肢を具体的に見てみましょう。ここで注意しなくてはいけませんが、鋏(<ハサミ)であるからといって、サソリのハサミが鋏角なのではありません。口にあるフックのようなハサミが鋏角で、大きな腕のハサミは触肢です。

 ケリケラータでは3、4、5、6と4対の脚が歩行に使われるので、クモ、サソリ、ダニなどの脚は4対=8本になるわけです。もっともなかには触肢が発達していてまるで歩行用の脚かなにかのように見えるものもいます。こういった種類では脚が見た目2、3、4、5、6の5対=10本に見えます(トタテグモやハラフシグモ、ヒヨケムシなんかはそうらしい)。

 また一部の種類では触肢が巨大なのに逆に3対目の脚が細くなって触角のような感じになっているので、なんともチンチクリンな姿に見えるものがいます(サソリモドキ、ヤイトムシなんかはそうらしい)。

 

 ケリケラータの系統

  

_____Pantopoda:パントポーダ/ウミグモ類(海産種)

  |___Xyphosura:クシフォスラ/剣尾類:カブトガニ(海産種)

   |__Eurypterida:ユーリプテリダ/広翼類:ウミサソリ† 

   |__Arachnida:アラクニダ/クモ形類(蛛形類)

      |_______Scorpiones:サソリ類

      |_______Opiliones:ザトウムシ 

      |  |____Pseudscorpiones:カニムシ類

      |    |__Solifugae:ヒヨケムシ

      |

      |_______Acari:ダニ類

      |    |__Ricinulei:クツコムシ

      |

      |_______Palpigradi:コヨリムシ

         |____Amblypygi:ウデムシ

         | |__Araneae:アラネア/真正クモ類 

         |____Thelyphonida( しばしばUropigi ):サソリモドキ/ムチサソリ

           |__Schizomida:ヤイトムシ

 

 「動物系統分類学 追補版」中山書店 と「クモ学」東海大学出版会 「クモの生物学」東京大学出版会 から文献を孫引き。複数の系統樹をおおよそざっと一致させたもの(系統樹/正確には分岐図の引用は Shultz 1990, Wheeler & Hayahsi 1998, Weygoldt 1996, 原論文は以上の書籍を参考のこと)。

 概要しか把握していないけれども、メモとして最近の研究の手堅いらしい部分を述べると、およそ次ぎの点では一致(あるいは比較的一致)しているようです。

 1:クモ形類の姉妹グループはウミサソリであり、さらにその外側にカブトガニがくる。おそらくではあるが、それらすべての外にウミグモがやってくる。

 2:クモ形類のうち、

 (カニムシ+ヒヨケムシ)+ザトウムシ)

 (ヤイトムシ+サソリモドキ+ウデムシ+クモ+コヨリムシ)

 (ダニ+クツコムシ)

以上それぞれが単系統であることは確かであるらしい

 3:クモ+ウデムシが姉妹グループであるのはかなり確かであるらしい。ようするにクモにもっとも近いケリケラータはウデムシ。ただしそうでない系統解析の結果もある。

 4:ヤイトムシとサソリモドキは単系統かもしれない

ダニ+クツコムシは((カニムシ+ヒヨケムシ)+ザトウムシ)の姉妹グループになるという結果もある。またダニ類が多系統かもしれない、という可能性はまだ残っているらしい。

 詳しいことはおいおい補完する予定。

 

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