鳥盤類と竜盤類とは何か? どう区別するのか?

 

 鳥盤類とは”鳥の骨盤(つまり腰の骨)を持つもの”という意味があります。一方、竜盤類には”トカゲの骨盤を持つもの”という意味があります。

  

 鳥盤類はしばしば鳥盤目とか鳥盤上目とか表記されます。この目とか上目というのは分類階級ってやつですね。竜盤類がやはり竜盤目とか竜盤上目と表記されるのと一緒です。いずれにせよ、こうした分類階級は現代の恐竜学では使われなくなる傾向があります。実際、分類階級は人為的なもので実在しません。ですからここでは使いません。

  

   

 さて、鳥の骨盤、トカゲの骨盤とはどういう意味でしょうか?。陸上脊椎動物の腰は三つの骨、腸骨(ちょうこつ)・恥骨(ちこつ)・坐骨(ざこつ)から出来ています。鳥の骨盤は面白い作りになっていて、恥骨が後ろに伸びています。下の図、右端のヒヨドリの骨盤を参考にしてください。鳥盤類の一種、ヒプシロフォドンの腰の骨(図左端)の恥骨は後ろにヒョロりと伸びていて、ヒヨドリの骨と似ています。ですから鳥盤類と呼ばれるのです。

 

 一方で竜盤類の恥骨は大抵の場合、前方に向いています。これは脊椎動物としては古典的な配置と向きで、トカゲの腰と基本的に似ています。そういうことでこのような腰を持つ彼らには竜盤類という名前が付けられました。

 

 恐竜の骨盤

 Ornithischia=鳥盤類・Saurischia=竜盤類・Sauropodomorpha=竜脚型類・Theropoda=獣脚類

 恐竜の骨盤を左から見た図。つまり左側が胴体で、右側に尻尾がつく。骨盤の持ち主は左からヒプシロフォドン・アパトサウルス・アロサウルス・鳥(ヒヨドリ)。

 骨盤の三つの骨の内、紫色に塗られたのは恥骨。ヒプシロフォドンと鳥の恥骨が共に後ろに伸びていることに注意。

 

 でも、ここでふと疑問に思うかもしれません。恥骨が後ろに向いているのなら鳥は竜盤類ではないのじゃないか?。その疑問はもっともです。

 しかし竜盤類とは単なる名前にすぎません。名前の意味が”トカゲの腰の骨を持つ”であっても、それは竜盤類の恥骨がすべて前方に向いていることを強制しているわけではありません。

 

 実際、竜盤類、つまりSaurischia の定義は”トリケラトプスよりも鳥に近い”です。別に骨盤の特徴がどうしたとか、身体にこうした特徴があるとか、そんなことは定められていません。

 

 それに系統解析をする時に用いる特徴は一つや二つではありません。腰の骨だけを見ているわけではないのです。また、生物の特徴は、グループのほぼ全体にわたって見られるような一般的なものでさえ、進化の過程で変化してしまうことがあります。

 例えば私たち人間を見てみましょう。人間はほとんど裸の哺乳類です。それに直立して歩いていますし、おまけに異常に大きな脳を持っています。こんな変な哺乳類はいません。では人間は哺乳類ではないのでしょうか?。そんなことはありません。身体にある他の多くの特徴を含めて系統解析をすると人間は哺乳類であることが分かります。人間が持つ異様な特徴の幾つかは、多くの哺乳類やサルが持っている特徴が変わってしまったものです。

 この例とまったく同じというわけではありませんが、鳥の恥骨も祖先のものからずいぶんと変化してしている点では同じです。”特徴がひとつ違う”ということと、その生き物がその系統に属さないこととイコールではありません。身体の特徴を系統解析すれば鳥がティラノサウルスやアパトサウルスとひとつの系統を作ることは明らかです。

 

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 恐竜の系統と分類のコンフリクト