ヴァーテブラータ

Vertebrata

コノドント(Conodont:手前・中・下)とサカバンバスピス(Sacabanbaspis.sp:奥)を描く。舞台はオルドビス紀後期(およそ4億5000万年あまり前)の海で、海底の上を2種類の脊椎動物が泳いでいる。コノドントは長い間、歯しか知られていなかったが、1980年代以降の化石の発見で、おそらくは脊椎動物(広い意味では魚)であるらしいことが明らかになった。サカバンバスピスは側線を持つなど、脊椎動物の特徴をはっきりとそなえており、魚であることは間違いないがきわめて原始的な特徴を持っている。コノドントもサカバンバスピスも顎を持っておらず、胸びれのような、左右対になるヒレも持っていない。

 

 ヴァーテブラータ/脊椎動物とは?:

 脊椎動物は動物のなかでは体がかなり大型になるグループで非常に目立つ存在です。地球の歴史上最大の動物であるシロナガスクジラ(30m 130t) などはその典型でしょう。しかしその一方で、全長が8~10mm にしかならないハゼ(Trimmatom nanus 参考 [Fishes of the World] 3ed 1994 ) のような小さな種類もいます。脊椎動物には、いわゆる魚からカエル、サンショウウオ、イモリ、トカゲ、鳥、私たち人間のような哺乳類などがこれに含まれます。

 

 ヴァーテブラータの特徴:

 他のコルダータと違って、背索が背骨によって完全に置き換えられてしまうグループもいますが、一生脊索を残すものもいますし、背骨、ようするに脊椎骨がほとんど発達しないものもいます。

固有で派生的な特徴は

:側線を持つこと

:左右対になった目を持ち、明瞭で発達した頭部を持つこと

などです。側線を持たないヌタウナギは脊椎動物から除外される場合がありますし、一方でコノドントが脊椎動物であるか疑う人もいます。また、初期の脊椎動物は非常によく発達した外骨格を持ち、体はまるで鎧で覆われたようになっていました。

 

 ヴァーテブラータの系統:

 

______________Myxiniformes :ミクシニフォームス ヌタウナギ目 ヌタウナギなど

  |   ?________Conodonts:コノドント類

  |____________Pteraspidomorphi:プテラスピドモルフィ 翼甲類 サカバンバスピスなど

    |__________*Petromyzontiformes :ペトロミゾンティフォームス ヤツメウナギ目 ヤツメウナギなど

    |  |_______*Anaspida:アナスピダ 欠甲類 アナスピスなど

    |  ?_______*Osteostraci:オステオストラキイ 骨甲類 ケファラスピスなど

    |__________Galeaspida:ガレアスピダ ガレアスピス類

       |_______Pituriaspida:ピテュリアスピダ

          |____Gnathostomata:グナトストマータ 顎口類 板皮類やサメ、イワシや人間など 

           

 脊椎動物は、当初、顎と呼べるものを持ちませんでした。顎が出現するのは顎口類(がくこうるい:軟骨魚類や硬骨魚類などから成るグループ)以降からです。他のものは顎を持たないことから無顎類(むがくるい)と呼ばれていますが、これは系統を反映したグループではなく、便宜的な分類でしかありません。顎のない魚類は細かいものしか食べられなかったようで、顎口類に比べると生活のバリエーションには限りがあったようです。

 顎のない脊椎動物は現在、ヌタウナギとヤツメウナギしか残っていません。この両者は以上に示したようにかなり縁遠い関係のようですが、実は単系統群ではないか、と考えられる場合もあります。

 また、人によるとCephalaspidomorphi:ケファラスピドモルフィ 頭甲類はどこだ? と思うかもしれません。頭甲類はヤツメウナギ+アナスピス+ケファラスピス(骨甲類)がまとまったものです(以上の系統でグループ名の前に*印がついているもの)。このまとまりを支持する派生形質として”特異な構造をした鼻”があります。しかしその一方で、ケファラスピスは発達した胸ビレを持つなど、むしろ軟骨魚類+硬骨魚類に近いことを支持する派生形質も持っています。この系統図では、ケファラスピスの系統的位置については不確定な部分があることを?マークで示すにとどめました(したがって頭甲類というグループが単系統かどうかは不明瞭です)。

参考:Janvier1996. [Early Vertebrates] Oxford Science Publications

  

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