恐竜の絶滅について

 恐竜絶滅といっていますが、じっさいは白亜紀の末期に起きた生物の大量絶滅のことです。当時、鳥以外の恐竜のみならず、モササウルスや首長竜、翼竜、アンモナイト、幾つかの植物や無脊椎動物などが滅びました。絶滅しなかった生物も余裕で生き延びたというよりも手ひどいダメージを受け、ようやく生き延びたようです。

 ともあれ、ここでは恐竜絶滅という目立ったタイトルでこの絶滅の原因を紹介しました。

 今回の本のなかでは恐竜の絶滅には2つの有力な仮説がある、という言い方をしています。それぞれメキシコのユカタン半島でおきた巨大隕石の衝突とインドで起こった大規模な火山活動のことですが、人によっては、北村がこの2つを同じ程度に有力な仮説であるかのように扱っていることに問題を感じるでしょう(教官によっては大丈夫かお前??と笑うかもしれない)。

 一応そこんとこ弁護させてもらいますと、支持者がいることウンヌンは別にして、火山活動が恐竜絶滅の有力な仮説であったことがそもそもあったのか?、というと、北村もそれには非常な疑問を感じます、とはいえ、本当はさして同等でもない2つの仮説をまるで同じ程度に確かであるかのように比較して、そして最終的にこちらの方が説明能力があると結論づける。そういう書き方をするのは物書きのある意味、常套手段ですから・・・。

 そういうわけでこれは文章表現のうちだと受け取ってください(ところでなんかしらんけど日本では隕石衝突はダメな仮説で火山噴火こそ有力という話が広がっているらしいのですが、なんでなんでしょうね?、いや研究者がじゃなくて普通の人たちが、ですけども)。

 さて、基本的なことは今回の本で書きました。ですから以下は考え方について。

 隕石衝突説にたいする疑問のかなりの部分は化石記録を見ると絶滅がじょじょに進行したように見える、というところにあるようです。つまり右のように縦軸に発見された化石の種類の数、横軸に時間をとって、時代ごとに発見された生物の種類、例えば恐竜の種類の数をプロットするとこうなる。

 ようするに時代が進むごとに化石の種類がへっていくように見えるのですね。このことは(おおむね)事実なんですが、問題はこの並びをどう解釈するか、つまりこれからどういうグラフを描くのか?、が問題になる。

 例えば極めて素直に以下のようなグラフを描くこともできる。

 

これは絶滅がじょじょに進行したのだ、というグラフですね。この場合、隕石衝突の前から絶滅が進行していたことになる。こういう解釈をする人は隕石衝突説を否定するようです。今も恐竜研究者とかにはこういう考えをする人がいるらしい。

 しかしまったく違う考え方もある。つまりこのようなデータの並びは化石の数がせいぜい数千個なんていう貧弱な資料に基づいているからそう見えるみせかけだけのものだ。実際には以下のようなグラフが描けるだろう、と見ることもできる。

  

 これは絶滅が急激に進行したというグラフです。

 どちらが正しそうなグラフなのか?。それを調べるには調査すればいい。ようするに次ぎに見つかるデータはどちらのグラフを支持するのか?、それをくり返せばどちらが妥当なのか分かってくる。さて、しばらく前、白亜紀最末期の地層から植物や動物、さらに断片的だけどたくさんの種類の恐竜の化石がでてきた。これら恐竜、および動植物の化石は上野の国立科学博物館、新館地下2階で見る事ができます。今回の本では244ページにでてくる写真がそれ。

 ちなみに北村が以前書いた「恐竜と遊ぼう」の72ページに載っている写真もじつはこれらと同じ地層からでた化石のもの。あの写真に写っている化石はかなり有名な恐竜の断片的な骨格なんですが、骨に詳しい人ならあれらがどういった動物のどの部分なのか、あの写真からも分かるでしょう。さて、これら新しいデータを加えると以下のようになります。

  

 赤い点が新しく見つかったデータなわけだけど、このデータはどうも

  

 こちらのグラフを支持するようです。つまり急激な絶滅が支持されるというわけ。

 ようするにこの話は仮説を観察や発見によって検証しよう、という話なわけですね^^)。そして有利なのは隕石衝突説の方。こうして科学という作業は進行していくというわけ。

 ちなみにこれで隕石衝突に反対する根拠はほとんど消滅したと考えてよいかと思います。あと、火山噴火説は積極的に肯定されないだけでなく、むしろこれを否定するかのようなデータが多いので北村としてはこれを支持してはいませんし、今回の本にでてくるマンガも以上の結果を反映させたものとして打ち合わせて作ってもらいました^^)。

 なお、一般向きには「白亜紀に夜がくる」ジェームズ・ローレンス・パウエル 青土社 という本があります。これがよい参考になるでしょう。

 

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