恐竜と鳥という言葉は何を指し示しているのか?
恐竜という言葉は系統学の世界では系統のある部分を指し示す言葉として使われます。その範囲は次ぎのように指定されています。
トリケラトプスと現在の鳥のもっとも近い共通祖先とそのすべての子孫
しかし、この指定は一般には知られていません。そこで今回の本(「ティラノサウルス全百科」小学館)では恐竜と鳥という言葉を次ぎのように使いました。
恐竜:系統学でいう恐竜のうち、鳥以外を指し示す
鳥:始祖鳥と現在の鳥のもっとも最近の共通の祖先とそのすべての子孫を指し示す
でもじつは同じ本の別の部分で、鳥は恐竜なのです、とも北村は書いている。ようするに北村は恐竜という言葉を次ぎのようにもつかっている、
恐竜2:先の恐竜+鳥(つまり系統学でいう恐竜)
同じ言葉を同じ本の中でそれぞれ別の範囲を指し示すものとして使うのは混乱的だという言い方もあるでしょうが、以下のような理由でこうしました。
1:歴史的に鳥が恐竜であるとは認識されてこなかった(注:たしかにハックスリーは140年前、鳥と恐竜、特に一部の肉食恐竜が極めて鳥に近いことを指摘しているけれども、この仮説がコンセンサスを得られたのは事実上、1986年以降であろう)
2:分岐学の導入で鳥が恐竜であるという仮説が確からしいものになったのは事実上、1986年である
3:つまり歴史的な順番としては最初、鳥と恐竜は別物であった、その後、鳥は恐竜に含まれることがはっきりした
4:一般的には鳥と恐竜は別々なものであると受け取られている(これは1986年以前の状態のままだとも言える)
5:鳥が恐竜に含まれるということを伝えることは、1986年以前から以後へと時間を回すことと同じだ
6:鳥と恐竜→鳥は恐竜、という言葉の変化は説明の順序と歴史的な言葉の変化の順序をなぞっている。なぞっているから恐竜という同じ単語が別々の範囲を指し示すものとして使われる。
と、まあこういうわけですね。