Ⅸ心、包む
包
①はらむ。みごもる。
②つつむ。くるむ。かこむ。かくす。ふくむ。いれる。
③つつみ。つつんだもの。
④しげる。
(角川 大字源より)
包-前口上
あれもしていない、
これもしていないと
気づくこと大変多くなった今の私。
し残してきたことがあると感じるのは
それだけ覇気あるからと
自画自賛する己を認めたいのかもしれないし
有言不実行のいい加減さ示しているのかもしれない。
それらを片づけないでは死ねないと思うのは
死の気配に包まれるようになった私に
逆に生きる張り合いを与えるためと勝手読みしている。
そのくせこのごろとみに根気なくなり
何をやろうとしたのかさえ忘れること多くなったのは
死の恐怖を忘れさせる天の配剤とさえ
思って糊塗しようとする私となっている。
包①
定年少し前の頃
物忘れしたり注意散漫になったりして
ミスを犯すことが多くなった。
ケアレスミスしても
自ずと責任取る厳しい組織にいたので
すっぱりと現役退き責任取らなくてもいい
第二の人生に入る決断をした。
そこで気づいたのは日本を包む無責任な雰囲気。
ミス犯しても責任取らない官界はいつものこととして
公約破ってもどこに責任あるのかと開き直る政界や
言い間違ってもこともなげに訂正し糊塗するマスコミ界。
自利にのみ固執する各界の無責任ぶりは
老化現象と体の不具合で苦しむ私を
一層に嘆かせることとなった。
包②
映画の「猿の惑星」では
核戦争によって人類が滅んだことになっているが
福島原発事故以来の人間の対応を覆い隠しているのは
人類の滅亡は何も核兵器の使用によってではなく
「想定外」の原発多発事故によっても
起こるだろうとの思いだ。
原発なければ今の生活レベルが守れないというのなら
国民のために原発の稼働を決断しても良い。
だが生活レベル下げてまで原発不要を言うのなら
それなりの覚悟を国民がする必要はあるだろう。
私個人は原発稼働に反対の立場だが
それを押し通せるのは
電気代高くなっても生活のレベルが下がっても
今生きていさえすればよいと思っているからであろう。
包③
大学入試に共通一次試験制度採用されてから
受験生の心を包み込むようになったのは
事実の単なる暗記力あるかどうかだった。
その結果日本人は背景・原因を探ったり
結果・影響を予測する「考える力」よりも
ただ事実を記録するだけの力を大事にするようになった。
正解を○×式や選択肢から決める方法で
どうして「思考力」や「想像力」が醸成されようか。
そんな共通一次試験の申し子達が、今や
司法・行政・立法に携わる人を初め警察や地方の役人
それに経済界やマスコミ界を差配するようになった。
共通一次試験を経なかった私が
彼らの不見識や不祥事や頼りなさを痛感するのは
エリートになれなかった者の僻みからだけではないのである。
包④
かつての若手起業家ホリエモンが
自身に投げかけられる困難事に
「想定内」と発言して自信のほどを示した。
それでも起訴され裁判闘争にも敗れるという
「想定外」に翻弄されることとなった。
その後の東日本大地震および津波による天災と
それに起因する福島原発事故による人災は
逆に「想定外」という言葉をも定着させたしまった。
責任のない人が使うのなら許されたとしても
「想定内」にすべき役人が使ったものだから
この「想定外」という言葉は
「無謬主義」に包まれた役人の
責任逃れの恰好の言葉として
以後ことある毎に使われるようになった。
包⑤
広告としてよく使われるのは
その商品を使用した人の感想を紹介する手法だ。
当然ながらその商品を推奨する声で包み込まれている。
その商品を非難する声を紹介するなんてのは滅多にない。
それは広告なのだからとわれわれも知っている。
これと全く同じなのが
新聞や雑誌に見られる読者からの投書の声。
仲間用に作られた機関誌にならいざ知らず
報道として一般読者のために作られた新聞や雑誌の投書にも
その新聞や雑誌の記事を非難する投稿なんてとんとない。
読者は殊更によいしょの声を包み込んで投書している。
新聞や雑誌は都合が悪い報道の掲載控えている。
ペンは剣よりも強いかも知れないが
新聞や雑誌の独りよがりな価値観は剣よりも恐ろしい。
包⑥
テレビの映像が茶の間に入りこんだおかげで
リアルタイムで情報を知るようになり
喜怒哀楽の感情が著しく増幅されるようになった。
例えば東日本大地震と大津波と原発事故災害は
余すことなく映像が明らかにしてくれたので
同時代人として当事者ならずとも日本人は
その感情を共有できたと思われる。
それはそれとして一方的に流れる映像を見て
何となく釈然としない観もあった。
大津波直後の原発の映像はきれいだったが
後で映された映像は無惨な姿だったことである。
どちらもリアルタイムでの実写は間違いないとしても
その映像さえも人間の思惑を包み込んでいるようで
テレビ媒体の有り難さと恐ろしさを垣間見た思いである。
包⑦
広島の悲惨さを実際見聞きしたなら
核兵器容認云々しないだろう。
死刑執行を実際見聞きしたなら
死刑制度容認云々しないだろう。
餓死者を実際見聞きしたなら
本人の甲斐性の結果云々しないだろう。
性に狂奔もしなく
神にすがりつかないでもいられる
常に死から逃れられている安全地帯の人は
第三者に見聞きしたものを材料に現実を判断する。
でなければ
己のしたこと感じたことをそのまま胎んだまま判断する。
悲しいかな
人は他人に対してあまりにも盲目である。
包⑧
原始時代には原始時代の人の生き方あるように
現代には現代人の生き方がある。
封建時代には封建時代の人の生き方あるように
民主主義の時代には民主主義の時代の人の生き方がある。
イスラムの国にはイスラムの国の人の生き方あるように
仏教国には仏教国の人の生き方がある。
中国には中国人の生き方あるように
日本には日本人の生き方がある。
そして
子供には子供の生き方あるように
年寄りは年寄りの生き方がある。
ところが人間は時・場所・状況に包み込まれている。
考えが違うと相手を理解すること難しくなるが
喜怒哀楽の感情は古今東西・老若男女問わず共通している。
包⑨
司法界が正義貫く公正で神聖な場所だというのが
単なる神話でしかないと明らかにしてくれたのが
例の大阪特捜検事の証拠改ざん事件。
最近の警察から裁判所に至る司法関係者のモラールは
弁護士も含めて著しく低下している。
ドラマの世界では仰々しく美化されているが
実際は閉鎖的な縦社会の典型となっている。
思うに警察の捜査もずさん。
検察は確かめもせず立件。
裁判所はほとんど鵜呑みにして裁定。
上級にあがってもよく吟味もせず書類だけで裁定。
官僚の無謬主義と同じで誤判断しても責任は取らない。
そう判断させた民の側に責任転嫁する。
ここにも司法界のいい加減さが日本社会を包み込んでいる。
包⑩
たとえば収入少なくなったにもかかわらず
今までの贅沢が忘れられず
あれもこれもで収入の二倍の生活をしたら
その一家は確実ににっちもさっちもいかなくなるだろう。
常識人ならすぐわかることである。
それがあれもこれもの要求で
国民の声含み込んで打ち立てた国家予算。
ついに歳出が歳入の二倍になった。
政治家や公僕は何しているのだという気さえおこる。
一家の主が家族を路頭に迷わせれば主失格だ。
だのに国家運営携わる政治家や公僕の方は
東日本大震災の処理の無能ぶりでわかるように
収入の2倍の支出を許す政治をしては
国のために働いているとうそぶけるのである。
包⑪
政界も大半政治屋でしめられ
官界も総じて官僚の資質が低下している中で
経済活動で一流といわれた財界も
政官癒着の報い受けたせいか
それとも経済人も全体的に資質落ちたせいか
次第にかげり見せ始めた日本。
その不吉な予感を日本的経営する東電・関電に見た。
国の庇護で儲けさせてもらいながら
客たる電気利用者を小馬鹿にしたような経営感覚。
そのくせ自力再生の努力もなく困れば国に甘える。
戦後教育の負の部分を背負った電力会社の体質は
その権利意識と無責任さを
財界の中にも癌のように包み込んでいることを
まざまざと見せつけた。
包⑫
沖縄にあるアメリカの基地の移転問題。
これは日本人の心の暗部を包み込んでいる。
外国の軍隊がいまだに日本にいるのは
どう考えたっておかしい。
それ言うと平和惚けだの誰が日本を守っているのだと
自称愛国者はいろいろご託並べるが
結局核兵器もてない日本だからと飛躍して
アメリカの基地を容認してしまう。
国民も沖縄は気の毒だけど
わが県に来るのは厭だと反対運動に走る。
政治家は地方のことは地方にと唱うくせに
自国のことは自国で守るとまでは言うことできない。
いっぱしの軍隊持ちながらアメリカ頼みなのは
小金持ちながらそれでもお上頼みなのとよく似てる。
包⑬
地方分権の声聞かれて久しいが
あれやこれやの抵抗あって
結局は霞ヶ関官僚の手の中に入れ込まれてしまったた。
地方の公務員は中央の通達には奴隷のごとくだし
地方の政治家は国政預かる政治家の手法をそっくり真似る。
何が地方自治なのなのだと言いたくなる。
政治家のレベルは国政であれ地方政治であれ
政治家選ぶ民衆のレベル以上にならないとは
言い得て妙の政治的真理だが
「由らしむるべし知らしめぬべし」の日本人の感性が
為政者のずる賢い思い上がりを未だに許している。
いくらかけ声あっても元の木阿弥になる様は
日本人の懲りない習性を見事に包み込んだ見返りだ。
それでも今の私は一票分の意思表明するしかないのである。
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