Ⅵ心、笑う

                                     笑
                                          ①わらう。えむ。ほほえむ。はながさく。
                                      ②わらい。えみ。
                                             (角川 大字源より)



笑-前口上

今の世の中
胡散臭いと思いつつ
ブランドや権威に惑わされ
本物と信じ込む人は数多い。
後で笑い話になるならよいが
取り返しのつかない怖いこともある。
例えば一流ホテルでの食材擬装の話。
例えば有名団体の公募は実は公募ではないの話
例えば国宝の中にも偽物があるのではの話。
例えばメディアはねつ造ややらせをしているのではの話。
例えば警察は数えきれぬ冤罪を作っているのではの話。
例えば権威ある組織は犯罪事実を隠しているのではの話。
例えば歴史的事実とされるものでも嘘があるのではの話。
これらは笑い話以上に怖い話なのである。


笑①

日本で間違いもなくあった知人による笑い話。
行方不明の身内の戸籍を調べたところ
戸籍が抜かれ幾つかの別住所に記載されていた。
訪れると別人が住んでおり
前住者の身内は全く知らないと言う。
警察へも届け移住先の役所にも行けども
警察は捜すにそんなに熱心に見えず
戸籍係は本人と確認して受け付けたと譲らず
本人の字かどうか確かめようにも規則だからと断わられた。
ある偶然から行方不明者の所在がわかり事情尋ねると
ずっと同じところにいたとのこと。
おそらく戸籍は誰かに利用されたのであろう。
知人は警察や役所のずさんさを怒るよりも
まさにあきれ果て笑ってしまったとのことだった。


笑②

戦後教育のもたらす負の面なのか
それとも人間全体が惚けてきたのか
このごろの日本人の常識的感覚が揺らいでいる。
例の高齢者の行方不明者件数の突然の増大。
行方不明にして年金せしめる家族の姿勢は論外だが
おかしいと思ってもそれを気にしなくなっている近隣住民。
家からの返事ないから何もなかったと判断する行政担当者。
もっと調査する必要があるのではの声に
では110歳以上の人からを調べると答えた大臣。
思わず笑ってしまった。
おかしい判断、おかしい物言いであるということに
気づかなくなっでいる現役が多いということに
初めは笑っていたものの次第に
恐さ覚える後期高齢者扱いの私であった。


笑③

悪筆だったので
ワープロが世に出たとき
これで悪字から解放されるとほくそ笑んだものだった。
カセットテープで文章保存したのを最初に
文章書いて人に見せるまで
今までにどれだけの文章作成のソフトを
どれだけのワープロ機器やパソコン機器を
どれだけのメモリー器具やプリンターを
買い換えてきたことか。
確かに機能も増え速くもなり
絵も描け形まで作れるようになって
単に文章作成以上のものになった。
初めは苦笑しながらついて行ったが
しまいには機械に振り回され喘ぐようになりだした。


笑④

オリンピックやサッカーの国際試合での
ワイドショー等の独りよがりな報道ぶりには
メディアの幼児性示すようで笑ってしまう。
へきへきするくらいに同じシーンを繰り返す中
レポーターはメダルメダルの言葉の外は語らず
ゲストコメンテーターは褒めそやすばかり。
ほとんどが聞きかじりの情報を丸飲みにして
芝居もどきに誇大にあおり立ている。
お祭りなのだからと笑ってすませられるが
日頃の視聴者をなめきった態度が
無意識のうちに現れているのだろう。
いずれお祭りが終われば次のお祭りくるまで
見聞きしたシーンを再現もなく繰り返して
糊塗するのが手抜き好きなテレビ界の実態である。


笑⑤

「人権」と「人権」と囃す朝日新聞が
橋下憎しの思いあまって
自らの週刊誌使って人格貶めるレポートし
「差別」の朝日新聞となった。
人権社是としながら肝心の人権忘れてしまった感じで
これほど笑ってしまった話はない。
そう言えば橋下人気出だした頃から
客観的に報道するポーズ示しながら
様々な記事の言外にあるいは「声」欄使って
何となく橋下政策非難する記事が多かった。
そしていわゆる「従軍慰安婦」発言には
ここぞとばかりに自称人権派を使って責め立てた。
権力持つ朝日はその後何とか糊塗していったが
大メディアの思い上がりと裏を見せられた思いであった。


笑⑥

最近テレビのワイドショーで
芸能タレントを使ってコメンテーターもどきの
発言をさせることがある。
笑いながら適当な話でお茶を濁し
決して責任を取らなないように振る舞っているのは
日本の官僚そっくりでつい笑ってしまう。
さもいっぱしのことを言っているが
日常的に笑い話としていること以上には言ってはいない。
タレントにはそれで小遣い稼ぎになるのだから
巧みに世渡りするタレントが出るのだろう。
もっともタレント自身には問題はない。
テレビ局スタッフの見識の問題なのである。
安上がりに製作しておいて
視聴率あれば儲けものと考える浅さなのである。


笑⑦

新聞はそれほどでもないが
聴くに堪えないのがテレビの報道。
ワイドショー的なものが割り込んできてからは
報道関係者の品格が落ちた。
視聴率第一主義のせいで
人間が犬を噛んだような報道で視聴者を笑わせ
そのくせ警察情報を鵜呑みにして垂れ流す。
無節操に反対の識者を安易に引っ張り出してきては
いかにも批判しているような態度を示す。
あおり立てるだけあおり立てておいて
事実を伝えていて何が悪いかと心の中では笑っている。
報道に対する責任の意識が
口で言うほど希薄なのだ。
その軽薄さは松本サリン事件以後少しもも変わっていない。


笑⑧

「最低でも県外」と
大見得切った民主党政権下の首相の
「あれは公約ではなかった」の一言が
多くの日本人の冷笑を買った。
首相としての無能性と資質の無さはともかく
首相の思いを実行する仲間も本土の人もいなく、
結局はしごをはずされてしまったのかと
同情したくもなる。
「普天間問題は対岸の火事」と笑ってすませることなのか。
はしごをはずしたのは誰か。
何かあったらアメリカに助けてくれるからと
思い思わされるぬるま湯の中の日本人は
治外法権なくす努力した明治の人の気概を
多少なりとも思い起こすべきだ。


笑⑨

あつものに懲りて膾を吹くの喩えのように
あまりに国のため社会のためを
吹き込まれ信じた臣民の反動が
戦後になって
あまりに自己の権利と利益を唱うことになり
メディアから永田町・霞ヶ関のエリートに至るまで
建前に免罪符求める自己中の日本人に変身した。
百年に一度の不景気といわれる時代に
勝ち組となった人の笑いに魅せられて
大企業までが派遣切りをし
その労働組合までそれを容認した事実は
色々理屈並べ糊塗して笑っているが
人思い社会思う昔の日本人の心が失われ
戦後の負の部分を破廉恥にも露呈した。


笑⑩

敵失による民主党政権の誕生は
喚起の笑いもそこそこに失望の苦笑もたらした。
変化望む国民や無定見なマスコミがせっかちなのか…。
前政権の残務整理がきついのか…。
政権担うリーダー達の資質がないのか…。
根っこは案外国家考えぬ戦後の国民意識にあった。
自分だけの利益しか考えない。
地元だけの利益しか考えない。
組織だけの利益しか考えない。
だから己の得することには口を閉ざし
己の損することには文句言う。
この70年の間に日本国民は
「ほしがりません勝つまでは」から
「国のことなど関係ない」とせせら笑うようになっていた。


笑⑪

実質的に官僚社会主義の国日本では
脱官僚を唱う民主党が与党となっても
政治主導の道は平坦ではなかった。
官僚は使いこなすものだとうそぶいた某総理も
結局は官僚に使いこなされて笑いものになっている。
当然民主党の総理のいずれも右往左往して何もできなかった。
とどのつまり
ほとんどすべての政治家は官僚よりは勉強不足だし
ほとんどすべての日本人はお上頼みだし
おかげさまで
下々によるお上への陳情とお伺い
お上による下々への交付金と補助金は大流行。
これらは官僚のさじ加減一つで決まるというのでのあるから
官僚には日本は笑いが止まらない国なのだろう。


笑⑫

運の悪さ巡り合わせの悪さで
人生の落伍者になったりする人がいる一方
運に恵まれ思わずほくそ笑む人も結構多い。
さしずめ市民運動出の首相もその運の持ち主の一人。
彼が首相になる前の政治情勢で
たまたまそこに前政権の金属疲労あった。
たまたまそこに政治と金の権化とされる政治家いた。
たまたまそこに首相が替わりすぎと非難の現実あった。
たまたまそこにメディア作る世論のサポートあった。
かくて力もない口だけうまい首相が誕生した。
運も実力の内と考えれば
首相になるのも実力あったからとも言えるが
首相になって大震災と原発事故で地金を出して
史上最低の宰相とあざ笑われた。


笑⑬

東北の大震災ではよい意味でも悪い意味でも
日本のエリートたちの実力のほどを知らされた。
すべての分野であまりにももたもたしていた。
超法規的措置をとっても許されそうな復興対策なのに
自分たちのやり方が通用すると思っている。
だのにマニュアル通りにしかことができない。
彼らの弁明の「最大限の努力をしている」を信じれば
文字通り彼らの資質そのものが低下している。
政治家にしろ官僚にしろ司法の人間にしろ
企業の役員にしろ学者やマスコミ携わる人にせよ
相変わらず日本を差配しているつもりなのだろうが
実際は欲だけ長けた巧言令色の人と
世間から蔑み笑われているということに
気づこうとしないのは何とも滑稽な話である。


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