悪その二 女なる者
口上 これも一生あれも一生
① 盗みする子は憎からで縄掛くる人が恨めしい
② おなごは男同士
③ 花の下より鼻の下
④ 分別過ぐれば愚に返る
⑤ 得手勝手は向こうには効かない
⑥ 金が言わせる旦那
⑦ 時異なれば事異なり
⑧ 世の中は相持ち
⑨ 女は化け物
⑩ 果報は寝て待て
⑪ 張り子の虎
⑫ 男は天下を動かし、女はその男を動かす
⑬ 女の仕返しは三層倍
口上-これも一生あれも一生
聞けばあたいが生まれた時は
あれやこれやの親戚や
はたまた世話する人達からも
股ぐら覗かれ一物なくて
失意の声が聞こえたとか。
この話聞いてからと言うものは
あたいの人生影さした。
どうせ期待されぬなら
期待されずにわが道行こう。
どうせ弱いと言われるのなら
弱いままにしぶとく生きよう。
そんなあたいの生きざまを
男が悪いと言うならば
誉め言葉だと思わなきゃあ。
① 盗みする子は憎からで縄掛くる人が恨めしい
やっと掴んだ男だもの。
縄掛けてでも監視をし
ぐっとこちらに引きつけて
逃げないようにすることが
つまりは女の幸せと思わなきゃあ。
その見返りは勿論尽くしてやっているんだから
もしも男の心が離れたならば
きっと他に女がいたからよ。
そりゃあその時悋気を起こし
一時男をなじるんだけど
咎めなきゃならぬはその女の方。
なぜって男は女の大事な金づる。
そんな金づるとるなんて
泥棒猫と変わらないんだから。
② おなごは男同士
美しさで負けていた女が結婚した相手は
自分の結婚した相手よりも醜男だった。
それでその女に勝ったと思った。
頭のよさで負けていた女が結婚した相手は
自分の結婚した相手よりも学歴がなかった。
それでその女に勝ったと思った。
恋人争いで負けて男を取られてしまったけれど
自分の結婚した相手の方がより出世した。
それでその女に勝ったと思った。
良くも悪くも女の道は
結婚相手で決まってくるもの。
だからどんなに劣っていても
結婚相手で差をつけさえすれば
「幸せ」二文字が見えてくる。
③ 花の下より鼻の下
仕事で不始末しでかして
鼻の下長い上司から叱られて
よよと泣き崩れて何が悪い。
だから女なんだと言われても
それで不始末許されるんなら
それはそれでいいではないか。
街を一人で歩いておって
ふらちな男に襲われて
操投げ出して何が悪い。
やはり隙があったと責められても
それで命が助かるんなら
それはそれでいいではないか。
男どもが勝手に決めたイメージに
振り回されないことが大切だ。
④ 分別過ぐれば愚に返る
人見分けるに理屈なんかいるものか。
あの人は分別があるのだの
あの人は地位があるのだの
あの人は切れ者であるのだの
そんな男どもの言いぐさがどうだと言うの。
あの人がスキ。
それで十分でないの。
あの人はキライ。
それで十分でないの。
スキでもないものを良いのだと言いくるめ
キライなものでも悪くはないんだと言いくるめる
そんな男のまだるっこさが
世の中かえって複雑にしているのよね。
バカみたいって感じ。
⑤ 得手勝手は向こうには効かない
複雑な論理で打ちまかせば
してやったりと悦にいる男どもに対しては
「わかーんない」の連発で
話を封じ込めることがどうしていけないの。
「だから女はどうしようもないんだ」と
男どもはつけ上がってるようだけど
そのくせそれを女の甘えと受け取って
男の胸にしなだれがかってくることを
密かに期待するこの馬鹿さかげん。
「いい加減にしない?」ってのが
女の正直な気持ち。
口では「わかーんない」を連発していても
男どもがどの程度のこと言っているか
ちゃんと見抜いているってこと知らないの。
⑥ 金が言わせる旦那
どんなに位があったとしても
どんなに金があったとしても
どんなに力があったとしても
裸になればただの人。
どんなに知識を持ってはいても
どんなに技術を持ってはいても
どんなに名誉を持ってはいても
裸になればただの人。
どんなに偉い先生でも
どんなに尊い坊さんでも
どんなに巧いお医者でも
裸になればただの人。
商売女と言われても
そのことだけは見抜いてる。
⑦ 時異なれば事異なり
貴賎を問わず男どもは
時を問わず所を問わず
稼ぎに応じて女を買って
男のうさを晴らすとか。
だからかつては国まで売春宿を作ったのだ。
でも買われた女が売られた女であったとは悲しい話だった。
それでも男にとってはやはりうれしい話だった。
万歳!ヒューマニズム!
今じゃ男は女をこっそり買わねばならぬ。
それでも買われた女が売られた女であったのなら
それはやはり悲しい話だった。
それがいつしか何かをするための資金稼ぎに
女は女を売るようになってきた。
男にとってはそれは悲しい話となったろう。
⑧ 世の中は相持ち
メッシィーが嫌なら誘わなければよい。
アッシィーが嫌なら自動車持たなくてよい。
ミツグ君が嫌なら金持つ振りしなければよい。
楽して稼ぎ楽しく暮らしたいのは
何も女だけのことではない。
女がそんなあだ名つけるのは
利用できるなら種なしカボチャでも利用したいという
人なら当たり前の気持ちからなの。
今時、男の魂胆なんてたかが知れている。
体がほしいのならそう言えばよい。
「したって減るもんじゃない」って男の台詞。
まったくその通りなのよね。
こっちはそんなに大層に思ってないのに
気の弱い男ほど大層に思うのよね。
⑨ 女は化け物
男らしさあるならば
女は男に惚れると言うけど
男らしさとは何だろう。
美男であっても見慣れりゃあ飽きる。
セックスタフでも馬鹿じゃあ飽きる。
優しさあっても覇気なきゃあ飽きる。
飽きさせないもの探してみれば
とどのつまりは物持ってることか。
こういう男に限っては
気だてのよさなど必要ない。
化けて化けて化け抜いて
男の心をふぬけにしよう。
もしも化けの皮が剥がれても
がっぽり慰謝料請求しよう。
⑩ 果報は寝て待て
そりゃあ男社会だもの。
もしも果報が巡ってきても
世の中動かして見せるなんて思ったことはない。
そんなことおっちょこちょいの男どもに委せておけばよい。
所詮男は作っては壊す威張りやでしかない。
女はそんな男を冷やかに見上げる神様みたいなもの。
そりゃあ男が強ければ
女は犯されることもあるだろう。
女はかしずくこともあるだろう。
それがどうだと言うのだろう。
いずれその内、男が萎えりゃあ
どんなに世の中動かすお方とて
役立たずはおしまいだってことを
女はちゃんと見透しているんだもの。
⑪ 張り子の虎
ヒトは動物に違いないのに
ヒトは声張り上げて
ヒトと動物の違いを強調するように
男と女は同じであるのに
男と女は同じでないかに
男は殊更思いたがる。
「弱きものよ、汝の名は女なり」と
ヒューマニストでさえ言ってしまう社会では
無知で無能の男でさえも
女に優位さ示そうと
張り子の虎の威を借りて
人の姿してたむろしている。
父親を認定しない子持ちの女なる者が
虎視眈々と次の歴史窺っているのも知らずにね。
⑫ 男は天下を動かし、女はその男を動かす
口惜しいというより腹が立つ。
男が作る歴史が人間の歴史になってしまうのは。
たかだか男の作るものが文明そのものになるなんて
そんなのありって言いたい。
そもそもの元凶ってのは
家族ってのが出来たことかもね。
いつのまにか「父親」ってのがまかり通ってさ。
子供を実際産めるのが
女だけってこと知らないの。
今は父親ってこと認知させなければ
喰って行けないから我慢するけれど
その内働き蜂だけの男がたくさん出来て
父親であること認めてもらうために
女の前にかしずく時代が来るってもんだ。
⑬ 女の仕返しは三層倍
何で女だけが朝寝坊してはいけないの。
何で女だけが昼間ごろごろしてはいけないの。
何で女だけが夜遊びしてはいけないの。
何で女だけが食事をつくらなければならないの。
何で女だけが洗濯しなければならないの。
何で女だけが掃除しなければならないの。
何で女だけが子育てしなければならないの。
何で女だけが姑の面倒見なければならないの。
何で女だけが夫に尽くさなければならないの。
何で女だけが夫以外の男と寝てはいけないの。
それは女が男の所有物だから?
それは女が男の家の人間になったから?
それとも女は所詮女だから?
おふざけでないよ!!!!!
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