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最近読んだ本
2004年・
その3


「鍵」
「冬のソナタ特別編」

「ダ・ヴィンチ・コード」
乃南アサ
「冬のソナタの人々」
特別編集委員会
ダン・ブラウン
「オールイン
「真実」
「眠れぬ夜を抱いて」
「39【刑法大39条】
ノ・スンイル
入間眞、キム・イニョン
野沢尚
永井泰宇

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(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。


◆   乃南アサ

西 俊太郎は25歳にしてフリーター。一度は商社に就職したものの、仕事が性に合わず退職。親が残してくれたアパート経営を本職にしようかと悩んでいるところ。
俊太郎の両親は亡くなったばかりで、現在は母親代わりで高校教師をしている長姉秀子、耳が聞こえない高校生の妹・麻里子の兄弟3人で暮らしている。しかし、麻里子の世話を一手に引き受けていた母親が亡くなったことで3人の関係も変わってしまった。

結婚を考えている相手がいるにもかかわらず、長女としての責任から一家を支えようとする秀子。障害者である妹を守るのは兄である自分しかいないとわかっていながらそのことに重圧を感じる俊太郎。姉と兄の負担になることを恐れる麻里子。母親の死から3人の関係がギクシャクしたものになってしまっていた。
そんな時、近所で女子高校生が連続して襲われる通り魔事件が起こり、麻里子の友達も被害者になってしまう・・・

通り魔事件に関しては動機など、不自然なところが多く、あまり納得できる解決ではありませんでした。この小説は「あとがき」にもあるように、推理ものというより家族の再生を描くことが目的のようです。それにしてはあまり突き詰めた問題提起にはなっていないような気もしますが。

障害を持つ家族を支える苦悩といっても(特に親ではなく兄弟)、麻里子の障害が比較的軽いものであることから、俊太郎が麻里子から逃げる心理があまり素直に伝わってこないんですよね。ただこういう設定だと、ほとんどの場合、兄は妹を守るナイトのような存在に描かれますが、俊太郎が全面的に妹を支える役割の重さに臆する気持ちも同感できる気がします。



◆ 冬のソナタ特別編
「冬のソナタの人々」特別編集委員会 (編集), ユン ユンドウ (翻訳)

韓国の冬ソナファンによって書かれた創作短編を翻訳編集したもの。ユジンがサンヒョクとの結婚を決めるまで心の動きや、チェリン、ジンスクのモノローグなどが描かれてます。

なかなか読ませる作品もあるのですが、惜しいのは日本語の文章が作文レベルなことと、キャラクターのイメージが私と一致しなったこと。まあこれは人それぞれだから仕方ないですが。でもジンスクのモノローグは面白かったです(笑)

本の最後に「冬のソナタの撮影地を訪ねて」という撮影地レポートが付いているのですが、実はこのレポートが一番面白い。韓国の地名はほとんど知らないので、説明文はわからないのですが、それぞれのシーンについて差し挟まれる意見や解釈がとても率直で楽しめました。日本とはちょっと違う韓国のファンの生の声がわかりますよ。

この本はラムさんからお借りしました。ありがとう♪



◆ ダ・ヴィンチ・コード  (ダン・ブラウン)

ルーヴル美術館の館長が深夜の館内で殺されていた。そして現場にはダ・ヴィンチの作品に関連したダイイングメッセージが残されていた。

全編謎解きというスリリングな展開。その謎もダイイングメッセージ、暗号、からくり、と趣向満載。聖書やキリスト教の謎解きだけでなく、犯人探しのミステリーとしての面白さも充分です。

ただ、この作品で明かされるのはあくまで「キリスト教の根源に関わる秘密」なので、日本人にはそれほど衝撃でもないということは残念。二千年に渡って秘められてきた謎が数日で解けてしまうのか?という疑問もありますしね(^^;)
でも「最後の晩餐」の謎解きなどは充分に面白いので、お薦め作品であることは間違いありません。

それにしても欧米の人は秘密結社が好きなんですね。
ネタ本はリン・ピクネットあたりらしい(その本のタイトルもネタバレっぽいので下に)。ピクネットは以前「トリノ聖骸布の謎」を読みかけて挫折したことがあります。ネタ本も図書館で見かけたことがあるので見てみようかとは思ってますが、読めないだろうな・・・(^^;)

作品とは別に感じたことですが、最近はキリスト教も変化しているんですね。このように時代と共に変化していくことが可能であるということが長い時間を生き残る大宗教の条件なんでしょうね。

しかしネット時代とは便利なもので、こういう本を読んだあとにいくつかのキーワードで検索すると、歴史的研究から奇説までほとんどの知識は得ることが出来る。図書館で調べようとしたら時間も手間もかかるから、楽になったものです。


ネタバレ→【
◆ソフィーのおばあさんがいるならソニエールが死んでも聖杯の謎は受け継がれる。
あんな派手なダイイングメッセージを残こす必要はないと思うのですが?
あれはつまりソニエールが作ったクリプテックスを伝えるだけの暗号ですよね。

◆スイス銀行の地下金庫の鍵があんなに特徴的ではすぐバレると思うし、
パスワードも単純すぎませんか?
「パスワードに既存の単語を使うのは危険」とBiglobeのHPにも書いてあるのに(笑)

◆「最後の晩餐」については、ナイフを持つ手はペテロの手じゃないの?
でも、どの人物も顔に比べて手がデカイよね。

◆マグダラのアリアがイエスの恋人であったという説はずいぶん前から他の作品でも読んだことがありますが、子孫がいたという説は知らなかった。
で、リン・ピクネットの本は「マグダラとヨハネのミステリー」です。        
 】

ネタバレ掲示板



◆ 真実    (入間眞 キム・イニョン)

韓国ドラマ「真実」のノベライズ。
クリスマス前の雪の夜、ソウル市郊外で起こった交通事故。運転していたのは国会議員の娘で大学生のイ・シニ。同乗していたのはその同窓生のジャヨンとヒョヌ。事故後、一人だけ意識を取り戻したシニは事故を起こした恐怖から助手席にいたジャヨンを運転席に移し、事実の隠蔽を図る。
実はジャヨンの父親はシニの父親である国会議員のお抱え運転手で、一家はシニの屋敷の地下に住んでいた。ヒョヌは財閥の息子でその恋人だがシニの初恋の人でもあった。この3人の因縁の関係は高校時代から始まっていた。

ドラマが面白かったのでラムさんにお借りして読んだ本。
わがままな国会議員の娘と、その屋敷の地下に住むお抱え運転手の娘。この設定だけで思わず引き込まれてしまいましたよ。まるで70年代の少女マンガのようでしょう?(笑)

しかもお嬢様の方は外見は美しいが勉強はまったくダメ。一方、運転手の娘は常に成績1位を取るようなまじめな優等生。さらに美人。それでもシニの家がただのお金持ちなら、お嬢様は美しく着飾って遊んでいてもすんだのに、父親の議員は政治的な思惑もあって、彼女に一流大学への進学を要求する。次第に追い詰められていくシニ。そこで彼女がとった行動が様々な波紋を起こしていく。

こう書くとシニはわがままないじめ役にしか思えないし、たしかに最初はそういうキャラなんだけど、物語が進むうちに彼女の心の底に隠された苦悩が浮かび上がってくるんですよ。ドラマではあまり深く描かれていなかった彼女の心の屈折が小説では細かく描かれているので、そういう点でもシニの心情がより理解できます。
一方ヒロインであるジャヨンは、どうもただの優等生にしか思えない(^^;)
すぐに「私さえ我慢すれば」と思い込む自虐性は、どうも苦手(笑)

この本はラムさんからお借りしました。ありがとう♪

ネタバレ→【  
「真実」というタイトルの重みもより深くわかります。でもやっぱり自分がやってしまったことから逃げてはいけない。「真実には人の命を奪う力がある」のではなく、真実を歪めようとするところに人の命を奪うほどの負の力が働いてしまうんだと思う。

あとがきにあった「最初はヒロインを支える人物が死ぬ予定だった」はヒョヌよね。視聴者の嘆願で生き延びることになったらしいけど、死んだ方が物語としては落ち着くような気がします。特にラストシーンで心の底から幸せそうな二人はかなり違和感があったので。見ているほうは車が沈むシーンと続けて見るからね。自業自得とは言え知り合いが二人も死んだのに、あそこまで笑えるとは無神経な二人に見えてしまった(^^;) 現実はそんなものと言ってしまえばそれまでだけど。  
 】




◆ オールイン  (ノ・スンイル)

韓国ドラマ『オールイン』の原作。この本もラムさんに貸していただきました。
天才ギャンブラーとその親友。そしてその二人に愛された女性のストーリー。

両親のいないキム・イナは詐欺師である叔父に育てられていた。二人はイカサマ賭博で稼ぎながら地方を回って生活していたが、イナが17歳の時に本拠地、永登浦に戻る。そこで出会うのがヒロインのミン・スヨン。彼女の父も賭博で身を持ち崩し、そのトラブルで殺されてしまう。そしてもう一人、高校生活に復帰したイナが不思議な連帯感と反発を感じた同級生がチェ・ジョンウォン。彼は学年トップの優等生で、しかも実業家の息子。しかし手段を選ばず次々に事業を広げる父のやり方が納得できず屈折した感情を抱えていた。

この3人の運命が絡まりあいながら進んでいく話ですが、その波乱万丈さは他のドラマとは違ってスケールが大きい。イナはいきなり服役してしまうし、やっと出所し成功をつかみかけたところで、今度は殺人事件に巻き込まれてしまう。そしてイナが死んだものと思い込んだスヨンにジョンウォンが愛を告白するというのは、言わば韓国ドラマのお約束(^^)

でもこの話はそれだけで終わるんじゃないんですよ。イナの成功と失敗の裏にある駆け引きや謎解きも魅力ですすし、さらに親友同士が敵となって戦うという、おいしい場面もあり(^w^)

主な舞台となるのが済州島のホテルのカジノなので、カジノ経営の裏側も覗ける。
バカラ、ブラックジャック、ポーカー。勝負シーンがもう少し突っこんで書かれてると、さらに面白かったと思いますね。

この本はラムさんからお借りしました。ありがとう♪



◆ 眠れぬ夜を抱いて  (野沢尚)  

銀行強盗にホームドラマ、元自衛隊員からマフィアまで登場する、香港映画のようなストーリー。

信州に開発された分譲地「清澄リゾートホーム」。そこに移り住んだ2つの家族が突然消えた。開発者の妻であり、同じ分譲地に住んでいた中河悠子は、最初の一家が消えたあと、次に消えてしまった山路君枝から、ある秘密を打ち明けられていた。警察の捜査がなかなか進展しないことから、悠子は自分の家族を守るために独自の調査を始める。

ドラマは見ていたんですが、やはり原作の方が設定が細かくてわかりやすい。
特に他に野沢作品とシンクロしているところが、隠れた楽しみ。
ただ言ってしまえば、これはやはり映像で見る作品でしょう。登場人物の発想がみんな飛んでるんですよ。それがドラマでは面白いポイントなんだけど、活字にすると違和感になってしまうんですよね。

もう1つ、オカルトに流れないようにプロローグを付けたんだろうけど、ネタバレになってしまっていることも確か。本格ではないのだから、強盗シーンは最初に書かなくてもよかったのでは?

この本はshortさんからいただきました。ありがとう♪



◆ 39【刑法第三十九条】  (永井泰宇)

東京豊島区で夫婦が殺害され、しかも被害者の妊娠中である妻は腹を割かれていたという猟奇的な事件が起こる。2日後、現場に残された遺留品から、劇団員・柴田真樹が逮捕された。柴田は罪を認め素直に取り調べに応じていたが、公判の途中、突然大声で叫び始めるなどの奇行が見られた。そして精神鑑定の結果、いわゆる“多重人格”と判定される。しかし鑑定人の一人である香深は、あまりに完璧な柴田の受け答えに違和感を感じ、検察側に再鑑定を提案する。

刑法第39条の是非を問う作品というより、それをアレンジしたミステリー。
真相はなんとなく予想出来るのですが、結末に至るまでの捻りは面白かったかな。
ただ、推理の過程が香深の勘に頼りすぎているのは難点。

刑法第39条に規定される「心神喪失」というものがどういう状態をさすのか、よくわからないんですよね。一般的には精神的な病気と捉えられていると思うけど、それまでふつうに日常生活を送っていた人間が突然激情したことも含めるのかな?

自分の勝手な都合や感情で人を殺したら、減刑の必要はないというのが私の考え。
生きる権利は、最も基本的で何よりも尊重されるべき権利。それが揺らぐようでは、
正常な社会は成り立たない。

弁護士さんなどは「刑罰を重くしても犯罪の減少には役立たない」という統計を示される。たしかに犯罪の原因は様々だから、刑が重くなったからといって、それだけで犯罪を犯す人が減るわけではないというのはわかる。

でも、自分勝手な理由で凶悪な殺人を犯した人間が、それに応じた重い罰を受けるということは、社会の秩序を維持するために必要なことだと思うのよね。信賞必罰と公平さは、社会が健全に運営されるために守らなければならないことだと思います。

ただし、殺人罪以外では、犯人の年齢や病気などいろいろな状況が考慮されるべきだと思いますが。

この本はshortさんからいただきました。ありがとう♪


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