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最近読んだ本
2003年・
その4


「火の粉」
「四日間の奇蹟」
「5年目の魔女」
雫井脩介
浅倉卓弥
乃南アサ
   

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(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。

 ◆ 火の粉  (雫井脩介)  幻冬舎

これはお薦め!

調布市にある2階建て住宅で、幼い子供を含む一家3人が殺されるという事件が起こった。当時、被害社宅を訪れていた被害者の友人・武内真伍が容疑者として逮捕されたが、武内は背中に骨折をするほどの打撲を受けており、突然侵入してきた見知らぬ男による犯行と証言していた。検察は武内の負傷を偽装工作と見なしたが、裁判を担当した梶間勲は、骨折するほどの打撲を自作自演するのは不可能と判断し、武内を無罪とした。それから数年後、退官した梶間の家の隣に武内が越してきた。そして・・・

梶間家の家族は、退官して大学教授になった勲と、妻の尋恵、司法試験に向けて勉強中の30歳の息子とその妻、3才の孫娘、寝たきりの勲の母の6人。そんな一家の隣に50歳前後の独身男性が越してきて、家の中まで入ってくるようになる。

それだけなら、かなり不自然だと思ってしまうですが、日常生活の描写がとてもリアルなので、読者もその日常の中に引きこまれてしまいます。次々と起こる出来事が、日常なのか事件なのか、緊張感の中に引きこまれて、読んでる方も迷います(^^;)

この手のサスペンスの場合、追い詰められる人間が異常に過敏になっていたりして、読む方としては冷めてしまったりするのですが、この本では、梶間一家が本当にふつうの人達でふつうの生活をしているので、最後まで緊張感が持続しています。
本当に危険なのは誰か・・・? 
推理とサスペンスをゆっくり楽しんでください。

あ〜、でも介護とか看病って、親戚との戦いなんですよね。それはとても納得!

【  考えてみれば、母親の介護の手伝いを越してきたばかりの独身男性に頼むというのも不自然なんですけどね。池本もあやし過ぎるけど、実際はあんなものなのかもしれないですね。でも最初に犬が出てくるのはなんでなんだろう? あれでは雪見が警戒するのも当然ですよね。
別荘が武内のものだったというのは、思いつきませんでした。騙された〜  




 ◆  四日間の奇蹟  (浅倉卓弥)  宝島社

最初にお断りしておきたいのですが、私は癒し系といわれるものが苦手です。
だから感想も辛口になっていますので、ご了解下さいね。

この小説で私が受けた印象は、「宗教団体が宣伝のために出したような小説」でした。内容は、事故で指を失ったピアニストと、知的障害のある少女が、ある奇跡に遭遇した話です。

この奇跡というのが、有名な小説の設定と同じだというのですが、それ自体は問題ではないでしょう。あの設定は古典にもありますからね。先行作品を書いた作家のオリジナルとは言えないものです。ただ同じ設定を使うなら、新しい切り口、工夫が欲しかった。そうでないと、「同じだ」というところばかりが印象に残ってしまうんですよね。同じ設定を使っていても、使い方や味付けが新しいと、「言われるまで気がつかなかった」となることもあるんですよね。

山上のセンターというのもまた、受け入れにくい設定だったかもしれません。ああいう環境ではかえってストレスが溜まるような気もするのですが、こればかりは経験がないのでなんとも言えません。

その上、センターの説明役の女性の、いきなりの親しさが布教活動してる人のようだったので、すべてが演出ではないかと勘ぐってしまったんですよね(笑)
いっそすべてが演出で、オチがあった方が読みやすかったかも・・・

こういう小説に素直に感動出来ないのは、ひねくれているのかもしれませんが、
その分、あやしい布教や勧誘には騙されないでしょう(^^)



 ◆ 5年目の魔女   (乃南アサ)   幻冬舎文庫

町田景子は、同僚である“貴世美”の不倫騒動に巻き込まれて、会社を辞める羽目に陥った。それから5年、建築関係の会社でインテリアの勉強を続けていた景子は、町で偶然に昔の同僚萩原織絵に出会う。織絵から貴世美の消息を聞いたことで、景子は貴世美に会ってみたいと思い、彼女の足取りを追うことになる。しかしその時から、貴世美の気配が景子に付きまとう。

男にはどうしてもわからないらしい、あるタイプ女の怖さを描いたもの。
こういう女ってけっこう居るし、こういう女に引っかかる男もけっこう居るのよね(笑)
女の方も、その本性を隠してるわけじゃないから、同性から見ると、このタイプは一目瞭然なんだけど、男にはいくら話しても通じない。面白いよね(笑)
でも景子もかなり危ない・・・(^^;)


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