食べ物をテーマにした往復エッセイ。
グルメものはあまり読まないんですけど、「美味しいものを食べたぞ」って話ではなく、お二人の遠慮のないやりとりが面白いので、楽しめます。
レシピに忠実なあまり「胡椒耳掻き1杯」と書いてあれば、耳掻きを買いに行ってしまう檀ふみさんが料理が苦手で、軽量カップを使わない大雑把な阿川さんが料理が得意というのが面白い。
お皿の洗い方がわからない中学生というのも、いかにもという感じですね。
・・・私はあなたをずっと見てる。ずっと、ずっと・・・
・・・あなたのことは何もかも知っている。
「新潮ケータイ文庫」で配信された小説。
二浪の予備校生である秀明は、3回目の受験を控えて体調不良に悩まされていた。やがて彼のまわりで説明できないおかしな事が起こり始める。
いわゆる憑き物ホラーというジャンルですね。
前半のほとんどは、タラシ(死語かな)の秀明の女性遍歴なので、退屈してしまうし、後半になってやっとホラーらしくなるものの、展開はありがちで、種明かしも消化不良でした。
でも携帯のサービスの1つとして、小説などほとんど読んだことのない子供たちに向けて書かれたものと思えば、こういう書き方が有効なんでしょうね。
それに深夜の携帯で「今もあなたを見てる。ほら部屋の隅を見てごらん」なんて読んだら、やっぱり怖いような気がするし(笑)
・・・しかし、いつ勉強してるんだこの男は〜?
ちょっとしたツッコミ→ 【 しかし二浪で、こんなに女ばっかり追いかけていて早稲田とは、余程優秀なのか? 早稲田のイメージダウンに追い討ちかけることになりそうだが(笑) 】
第1巻 匠 日本推理作家協会編 文芸春秋
収録作品 |
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阿刀田高
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「運のいい男」阿刀田高
「替玉計画」結城昌治
エッセイ「阿漕な生業」 |
佐野洋
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「お試しください」佐野洋
「葬式紳士」結城昌治
エッセイ「ヒッチコック劇場の時代」 |
柴田よしき
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「聖夜の憂鬱」柴田よしき
「版画画廊の殺人」荒巻義雄
エッセイ「無限のイマジネーションと日常の小さな謎」 |
志水辰夫
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「ダチ」志水辰夫
「入れ札」菊地寛
エッセイ「頭の隅から」 |
乃南アサ
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「かくし味」乃南アサ
「夢十夜」夏目漱石
エッセイ「文豪の夢」 |
宮部みゆき
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「決して見えない」宮部みゆき
「双頭の影」今邑彩
エッセイ「ピカリと閃いて」 |
「もっとも好きな他人の作品」と「もっとも好きな自分の作品」を、それぞれ1本づつ選び、その理由を解説するという趣向になっています。さすがに活躍中の推理作家が推薦する1編ということで、どれも読み応えがありました。
私の好きな作品をあげると、
・「かくし味」乃南アサ
エッセイでも書かかれている「日常の不可解な恐怖」をたっぷり味わえます。
・「替玉計画」結城昌治
結末の予想はつくのですが、その見せ方が好きですね。
・「葬式紳士」結城昌治
これも同じ。タネはわかるのですが、結末が面白い。
乃南アサさんが求めていらっしゃるという「奇妙な怖さ」「不可思議な恐怖」というものは、とてもわかる気がしますね。やっぱり好きです。
結城昌治さんの作品が2作選ばれているので驚いたのですが、どちらも面白かったです。実は氏の作品ははじめて読んだのですが(^^;)
似顔絵婦警・平野瑞穂が主人公の連作集。
横山秀夫は2作目ですが、「半落ち」に比べれば、ずっと面白かった。
主人公が女性警察官というと、男社会で頑張って、でも結局挫折するというパターンが多いけど、この平野瑞穂は、感覚がふつうのお嬢さん。
突っ張ってないし、頑張り過ぎてないところがいいですね。こういうタイプが実は強いのよね。ただ、あまりに“良いお嬢さん”的なところが、女性には感情移入しにくいかもしれませんが。
あと、登場人物が、いろんな警察ドラマの刑事さんを思い出させます。「これはあの人、こっちはあの人」と想像して楽しみました(笑)
奥田さんが作家になる前に連載していたスポーツエッセイ集。
東京ドームの野球中継では、バックネット裏の観客ばかり気になり、ボクシング中継ではリングサイドの観客を観察して楽しむという、ふつうとはちょっと(…かなり)違った視点から見たスポーツ話。
なんとなく清水義範作品に似てるなと思ったら、奥田さんご本人がインタビューで、
「清水義範の『永遠のジャック&ベティ』や『蕎麦ときしめん』などを読んだ時には、しゃれてるなあと思いましたね。「こういうのを書いてみたい」とは思いました。
」とおっしゃってたんですね。それなら、似てると言っても失礼じゃないですね。
バックネット裏の観客は私も気になります。いつだったか、東京ドームの中継でピクリとも動かないご夫婦を見つけた時は、ずっと注視してしまいました(笑) 最初は人形かと思ったくらい動かなかったんですよ(笑)
他にも、アジア大会の大らかさは好きだし、インタビューで泣かない選手が好きというのも同感。「箱根駅伝高視聴率の秘密」は素直に納得。笑えるところも共感するところもあって面白かったです。
体育の時間のサッカーの独自解釈については、同じことを言った某有名監督が居ましたね。たとえば、W杯最終予選のような重要な試合で、1点取られたら出場できなくなるという試合展開。時間は後半45分を過ぎようかというところ。敵の放ったシュートがゴールの枠内に。キーパーは反応出来ず、ヘディングは届かない。
こんな時、どうするか? 「手で止めろ」って言ったんですね。もちろんハンドで退場だし、エリア内ならPKだけど、確実に1点入るより、入らない可能性を残した方がいいってことですね。PKだって失敗することはけっこう多いし、FKならなおさら。1人減っても残りはロスタイムだけだから、手を使っても止めた方が戦術的に有利と言えるんですね。
こういうところがサッカーの国際性(笑)で、他のスポーツのファンに理解されないところかも(笑) あ、でも、もちろんこれは特別の試合でのことで、ふつうのリーグ戦でやったらダメなのよ←時々わかってない選手もいる。試合が始まって10分なのに手を使うヤツもいるし(笑)
精神科医・伊良部一郎が現代人の心の病を癒す連作短編集…なんて書くと、堅い小説だと思われそうですが、これが全然違っていて、笑えて癒される1冊です(^^)
伊良部一郎は伊良部総合病院の院長の息子。病院の地下で細々精神科の診療をしているんですが、これがかなり変わった性格の持ち主。徹底的な現実肯定派で、自分に正直で悩みがない。自然のままに生きてる。
そんな性格なので、深刻な問題を抱えてやってくる患者も、伊良部先生と話しているうちに、そのペースに巻きこまれて不思議と治ってしまうんですね(笑)
人間関係って、親しくても、というか親しいほど、相手に対して批判的になることってありますよね。この本の中でも、水泳中毒の夫を心配して、奥さんは必死に泳ぐのを止めようとする。でもそれって、本人が一番わかっているんだから、逆に心配してくれる相手に距離を感じてしまったりするんですよね。
その点、伊良部先生は違う(笑)
「僕にも教えてね」などと言っていっしょに泳ぎ、「豊島園のプールに行ってみない?」とまで誘い出す。それが自分の側に立ってくれてる人、味方だというという安らぎになるんですよね。どんなことでも、「面白そうだね。いっしょにやろうね」と言って味方になってくれる人。そんな人がいたら、いろんなことを話してみたいと思いませんか? それが伊良部先生です(笑)
(それにしても伊良部一郎って「大リーグで頑張ります」って名前だな・・・)
死を間近にした患者の願い事を、たった1つだけかなえてくれるという仕事人。その仕事人の連作短編集。
死を間近にしたら、すべて雑念が払われて清らかな気持になるなんていうのは、やっぱり嘘なんでしょうか。この中に出てくる人物は、みんな煩悩を引きずって、もがいています。宣伝では、クールと書いてありましたが、中身はけっこう、こってりした人間くさいエピソードになってます。文章はクールですが。
わたしは入院経験などもあって、病院の中はよく知っているのですが、細かい描写がリアルでウケました。入院しないとわからないことってありますよね。
ラストのネタバレは予想通りでちょっと残念。
ヤオイマンガ家・片桐紫織里を中心に、同好の仲間が集まっていたHP「薔薇庭園」。そのHPの掲示板に書きこみをしていたメンバーが、次々に消えていった。そしてついには商業誌デビューを控えていた片桐紫織里までが忽然として消えてしまう。
よくわからなかった〜
この世界にはけっこう馴染んでるつもりなんですが、読みながら、「こういう世界があるのか」と驚いてました(笑) 私のまわりに居るヤオイ系の仲間を見てると、むしろ他のジャンルよりクールな気がするんですよね。HPでもMLでも。
少女マンガ系のが荒れてますよね。恐ろしい女の戦いが繰り広げられている(笑)
あ、そう、だからヤオイ女は女性性を全面に出すタイプじゃないというのは言えてますね。どっちかというと男性をリードしたいタイプが多いような気がします。そのフラストレーションが逆転Hシーンに出るのかも(笑)
でも、江戸時代にもJUNEブームはあったらしいです。少年愛を描いた読本が若い女性の間で人気を集めた時期があったそうです。だから現代社会特有の現象とは思えないですけどね。戦闘のない時期が続いて、女性が強くなると出てくる現象なのかな?
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