◆「R.P.G.」(宮部みゆき)集英社文庫
解説が清水義範さんというのが楽しい!
このタイトルも意味が深いです。「摸倣犯」の武上刑事と「クロスファイア」の石津刑事が登場。「事件より先に刑事が紹介されるのは宮部作品では珍しい」…と思ったあなたは、既に騙されているのです(笑)
正当派のミステリーというよりも、ある趣向を楽しむ作品ですね。全編に仕掛けがある作品なので詳しい事は書けませんが、「48歳の会社員が殺される。実生活でも42歳の妻と16歳の娘を持つ父親である彼は、ネット上でも擬似家族を持ち“お父さん”を演じていた。犯人を目撃した実の娘が擬似家族達を見分けていく」という話です。いつもの宮部作品のつもりで読むと肩透かしですが、とにかく気軽に楽しめる一冊です。
感想としては、私には犯人の気持ちがどうしてもわからなかったです。そこまでするほどの問題ではないと思ってしまいました。ネットで別人になるという話もよく聞きますが、難しそうですよね。つい地が出てしまうので、私には出来そうもありません(^^;)
ちょっとだけ疑問を↓ネタバレなので反転させてね。
【所詮警察が考えた事と言ってしまえば仕方ないんですが、偽者とは言え、擬似家族の娘役が若い女の子で弟役が男の子、母親役は中年女性と言うのは想像力が無さ過ぎるのでは? それでいいならネットじゃなくても出来そうです。嘘っぽいと思った方も多いのではないでしょうか。
目撃者の池田さんは、町内会の付き合いで母親の事はよく知っていたが、一美の事は見分けられなかったということなんですが、実際はそうでもないよね! 確かに16歳の娘は隣近所の事には無関心でしょうけど、近所の主婦の方は違いますよ。特に若い娘の事はよく見てると思う。私の経験から言っても、近所のおばさん達には服装から行動までいろいろチェックされてました(笑)「芽衣ちゃん、昨日○○で買い物してたわね」なんて母に言いつけてたぞ(笑)
とにかく16歳の娘にあそこまでかまってもらえる父親は恵まれてるかも・・】
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◆「柚木野山荘の惨劇」(柴田よしき)角川書店
猫探偵の正太郎が活躍するユーモアミステリーです。
ミステリ作家である桜川ひとみと同居人の正太郎は、奈良の山奥の山荘で行われる結婚披露パーティに招かれた。しかし、招待客が到着した直後に崖崩れで道が埋まり“閉ざされた山荘(あるいは“雪の山荘”)”状態になってしまう。こうなれば殺人事件が起こらない方がおかしい。案の定・・・
これは猫本かもしれない・・・(笑)
この猫探偵は言葉がわかります。という訳で猫の視点から描かれています。もちろん人間とは話せませんが、人間の会話は理解してます。猫同志の会話も日本語です(笑)
この本の感想は猫と暮らした事があるかどうかで変わるでしょうね(笑) 猫と暮らした事がある人なら、彼らが人間の言葉を理解してることを知ってるものね(^_-)
文庫版は「ゆきの山荘の惨劇」になってます。
◆「壷中の天国」(倉知 淳)角川書店
>「オタクの代表」倉知さんのオタク話炸裂の一冊(笑) 「壷中の天地」とは、俗世を忘れさせる理想郷、別世界という意味だそうです。まさにオタクの世界ですね。
小さな地方都市稲岡市。そこで起こった連続した通り魔的殺人を、普通の一家の日常から描いています。被害者になった人達には何の共通項もないように思われた。
しかし、事件の後に送られてきた犯行声明文には「被害者達が宇宙からの通信を妨害したので殺した」と書かれていた。
途中まではクイーンの「九尾の猫」にような展開になるのかと楽しみだったのですが、共通項探しとしてはちょっと物足りない。でもオタク話は楽しいです。
「う〜ん、わかる!」と思って読んでました(笑) 被害者が犯行に合うまでの行動が詳しく描写されていて、さらに声明文がよく考えて書かれています。よ〜く読むとヒントはすべて書いてあるので、その意味では面白い構成です。
ネタバレ注意→【「更新」→「交信」。「受診」→「受信」。おまけに「痩身」が「送信」て〜
(・・;) ダジャレみたい(笑) たしかに自分が興味を持っている単語は、そこだけ強調されて耳に入ってくることがあるので判らないでもないけど。解決を読んでちょっとウケてしまいました(^^;)】
◆「七人の中にいる」(今邑 彩)中央公論社
ペンションのオーナー晶子は、クリスマスイブに自ら経営するペンションで再婚披露パーティーを開き、新しい幸せに向かって歩き出そうとしていた、そんな時、晶子の元に脅迫状が届いた。晶子は過去に一家惨殺という犯罪に関係していた。脅迫状はその生き残りらしい人物からのもので、復讐を予告していた。イブにペンションにいる人物は7人。この中に復讐者がいる・・・。
あとがきにも書いてありますが、閉ざされた山荘物かと思ったら違っていました。復讐者に関する情報がほとんど外部からもたらされるので、サスペンス感はイマイチ。晶子の考え方に疑問が残るので、解決もちょっと後味が悪い気がしました。
◆「超・殺人事件」(東野圭吾)新潮社
推理作家はどのようにして作品を生み出しているのか? 「推理作家の舞台裏を描く衝撃」の短編集。今回は推理小説家のパロディ。つい読みながら「これはあの作家か?」「あの本のことか?」などと、いろいろと想像してしまいました(笑)
「超税金対策殺人事件」
必要経費が少ない著作業、節税の為には何でもやる。 思わず納得してしまう!(笑) こんなトラベルミステリーあるものね。
「超理系殺人事件」
「私」タイプいますね〜 「超日本史殺人事件」だったら、私もそういうタイプかも?(^^ゞ
「超読書機械殺人事件」
“ショヒョックス”使ってる人がいそうな気がする…(笑) いろんな小説の酷評モードが読みたくなりました。
「超長編小説殺人事件」
1番面白かったです。ミステリーはどこまで厚くなるのか? 「何で最近のミステリーはみんな分厚いんだ?」と思ってる方、是非読んでください。笑えます!
◆「ビーの話」(群ようこ)筑摩書房
ビーは群さんのお友達の猫。マンションの隣に住むモリタさんの飼い猫です。でも群さんの部屋にも自由に出入りしています。このビーを中心に近所の猫達のエピソードが描かれています。
群さんとモリタさんは近所の路地を勝手に「きれい通り」「きたな通り」と名付けてしまいます。きれいな野良猫が住みついている通りが「きれい通り」、迫力満点の生粋の野良が住み着いているのが「きたな通り」。それぞれに世話をする人達がいるんですが、近所に気を使いながら野良猫達の面倒を見てくれる人がいるのはホッとしますね。
特にノノヤマさんはすごい。雨の日も台風の日も、一時間かけて近所中の野良たちに餌を運んでいるんですよ。こういう人があちこちにいて、勝手な人が捨てた猫の世話をしてるんですね。
私は後半の“猫だまり”のエピソードが好きなんです。並んで餌の順番を待つオス猫達は面白いです(^o^)
私も現在の社会では室内飼いが良いと思っていますが、野良猫の社会も観察すると面白いです。猫が自由に外を歩けない現代はやっぱり寂しいですね。
◆「 幽霊刑事」(有栖川有栖)講談社
犯人当ての推理劇を小説化したものということで、会話を中心にストーリーが進んでいきます。この会話のテンポが良くて、いかにも舞台劇という感じで面白かったです。
巴東署の捜査一課の刑事である神崎達也は、ある日突然上司に呼び出され射殺されてしまう。その時、上司が最後に言った言葉が「すまん」。自分を殺した犯人は判っているが殺された理由が判らない。
この世に思いを残した神埼は、1ヶ月後幽霊になって蘇って来ます。しかし幽霊ですから当然普通の人間には見えないし、話も出来ない。ただ1人、霊媒の資質を持つ刑事だけが神崎と話が出来た。幽霊刑事と霊媒刑事のコンビが真犯人を探し始めます。そのうちに密室殺人なんかも起こって、巴東署は大変な騒ぎになってしまいます。
犯人当てと言うだけあってヒントもいろいろ隠されているし、引っ掻けなんかも用意されてます。ミステリー好きな人ほど引っかかりそう(笑) 夏の夜に推理を楽しむのには良い一冊でした。
◆「 天使が消えていく」(夏樹静子)講談社文庫
主婦と母親の立場から、女性の行き方をテーマにミステリーを書き続けている夏樹静子のデビュー作です。昭和44年の乱歩賞の最終候補に残り、受賞は逃したものの、優秀作品として刊行されました。(受賞作は森村誠一の「高層の死角」)
福岡のホテルで出張中の営業マンが殺される事件が起こった。なぜか続いてホテルのオーナーも殺される。
一方、雑誌記者の砂見亜紀子は取材の過程で心臓に欠陥のある赤ちゃんに出会う。費用が足りない為に手術を受けられない赤ちゃんの話を雑誌で取り上げると、寄付が寄せられ手術は成功する。しかし母子家庭の母親は、手術が成功した事を喜ばず、赤ん坊に冷たく当たるだけだった。その母親は男をつなぎとめるために子供を産んだが、子供は他の男の子供だったからなのだ。やがて、その母親も無残な死に方をする。3つの死をつなぐものは何なのか?
この作品にはトリックの妙というものはありません。表面に現れた事件をつなぐ、動機が重要なテーマなのです。ラストの手紙は感動します。見事な伏線があるのですが、それ自体が女性向かも(^^;)
◆「 天使の傷跡」(西村京太郎)講談社文庫
昭和40年乱歩賞受賞作。ハイキングに来ていた新聞記者と婚約者が殺人を目撃する。被害者は女性ばかりを対象に複数の強請りをやっていた事が判明し、容疑者が次々にリストアップされてくる。やがて意外な人物が犯人として浮かび上がり、大胆なトリックが明かされます。
最初の80ページまでで、被害者、第1容疑者、重要証人の3人が死んでしまうという超スピードの展開です。その後も次々に証拠が出てきて、すぐ犯人が見つかります。最近の分厚いミステリーを読みなれていると、ダイジェストを読んでいるよう〜(笑)
でもこの作品のテーマは動機で、この部分に長いページが割かれています。現代では、この動機はわかりにくくなってしまっているかもしれませんね。といって問題が無くなった訳ではないのですが・・・。
◆「 「Y」の悲劇」講談社文庫
クイーンの「Yの悲劇」をテーマに、“Y”に関する書き下ろしミステリー4作を集めたアンソロジー。
★「あるYの悲劇」(有栖川有栖)
インディーズバンドのメンバーがギターで殴り殺された。現場となった部屋の壁には「Y」の血文字が残されていた。Yの謎解きは面白いですが、名前に関する謎は
ちょっと強引かも・・・。
★「ダイイングメッセージ《Y》」(篠田真由美)
ネットのミステリーサイトで出会った高校生のヒロとEmi。Emiは双子の兄が作った戯曲「鏡の中のアリス」を上演することになり、上演前夜、深夜の学校でヒロの前で演じて見せたがその後に殺されてしまう。床には「Yが殺す」の文字が残されていた。「聖ルカ学院の中の宣教師館・ヨークシャー館での殺人」ですから、雰囲気がわかりますよね。そういうお話です。
★ 「「Y」の悲劇―Yが増える」(二階堂黎人)
地下シェルターに閉じ込められた5人の男女。その中の1人が殺される。床にはYの引っ掻き傷が残されていた。そしてとんでもない殺人方法が明かされる。
評価はいろいろあるでしょうが、ここまで飛んでると面白い(笑)
★「イコールYの悲劇」(法月綸太郎)
姉夫婦の家で留守番をしていた妹が殺され、メモには「=Y」の筆跡が残っていた。義兄の浮気相手が疑われるが、皮肉にも彼女のアリバイは夫の行動を見張っていた姉によって証明される。容疑者のアリバイがすべて証明された後、意外な犯罪が事件を逆転させてしまった
。短編ですが、2転3転する凝った内容です。
解決を読むと「出来過ぎだ〜」と思いますが、読んでる途中は面白かったです。
ダイイングメッセージはどうしても強引な謎解きになってしまうからこのくらいならOKでしょう。
◆「 茶色い部屋の謎」(清水義範)光文社文庫
ミステリーを主に集めた短編集。
いきなり「読者への挑戦」があるところなんぞは、やってくれます(笑)
「茶色い部屋の謎」は、名探偵もどきが集まったパーティーで家の主人が撲殺される話。
他にも凶器になりそうなものがたくさんあるにも関わらず、ノートという不可思議な凶器が使われていたのはなぜか? ここまでで、詳しい方なら有名なミステリーのパロディとわかりますよね(^_-)
「また盗まれた手紙」も、もちろんパロディですが、この方法は某乱歩賞受賞作にありますよね。
「領収書ください」は森村誠一作品であったような気がします。
「バイライフ」は人生を途中からやり直せる話なんですが、その間に小説を書いて貯めておくと言う発想が面白いです。
「誘拐屋繁盛記」が1番面白かったですね。
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