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最近読んだ本

2001年・
その4


刑事ぶたぶた」  (矢崎存美) 
遺骨」      (内田康夫) 
早春の少年」  (栗本薫)
古い骨」 (アーロン・エルキンズ)
ミーのいない朝」   (稲葉真弓)
ぶたぶた」「ぶたぶたの休日」(矢崎存美)   
[平安妖異伝」           (平岩弓枝) 
星の海を君と泳ごう 時の鐘を君と鳴らそう」 
                  (柴田よしき) 
顔のない男」          (北森鴻) 
三毛猫ホームズの花嫁人形」 (赤川次郎) 

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(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。


ぶたぶた」「ぶたぶたの休日」(矢崎存美)徳間デュアル文庫

連作短編集。
主人公は生きてる"ぶたのぬいぐるみ"と言ってもファンタジーなら驚かないですよね。
でも中年男性で仕事をしていて、どうやらお父さんらしいと言ったらどうでしょう??

バレーボール大のピンクのぶたのぬいぐるみがタクシーの運転手だったり、料理人だったり刑事だったりする。おまけに真面目で有能なんだからカッコイイ!!
タクシーの場合はちょっと謎だけど・・・(笑)
内容は、ほのぼのした話からミステリーまで、いろいろ揃ってます。

小さいぬいぐるみがせっせと働いているところを想像すると、めちゃくちゃ可愛いですよ〜

好きなのは「ぶたぶた」の「ただいま」。「しらふの客」も笑えます。
「ぶたぶたの休日」では「評判のいい定食屋」です。
立ち読みコーナーは矢崎電脳海牛倶楽部へどうぞ!



刑事ぶたぶた(矢崎存美)徳間デュアル文庫

山崎ぶたぶたさん、今回は刑事になっています。
ぶたのぬいぐるみが刑事だったら便利な事が多いと思うでしょう?
そうなんです!
凶悪事件には向かないけれど、潜入捜査はお任せです。
その割りにはあたふたしてるところも楽しいのです。
なにしろ、ぬいぐるみが動いたりしゃべったりしてるんだから、
よ〜く考えてみるとそっちの方が怪しいよね(笑)

とにかく、ぶたぶたさんの生真面目でやさしい、前向きなキャラクターがいいです。
おまけ・・・ぬいぐるみの洗い方がわかります(^^)


遺骨(内田康夫)角川書店

テーマは脳死問題と臓器移植法です。
淡路島へ向かうフェリーの中で、浅見光彦は訳あり気な40代の男と出会った。
東京から来たというその男は、淡路島に父の遺骨を納めに来たと言う。
だが数日後、その男が殺され友人と名乗る男が寺に遺骨を引き取りに来た。
しかし、遺骨はすでに親類という女性に引き取られた後だった。
その女性の行方がわからない上に、名前を使われた友人までが殺される。
遺骨の中身は前医師連盟会長の過去に関係する物らしいのだが・・・。


殺人事件の謎よりも事件の背景に隠された大きな謎の解明が主でした。
浅見光彦もストレートに事件を追っています。
今回は政治的な問題が絡んでくるので、陽一郎兄さんの出番が多い。
嬉しいです〜(^^)

↓既読の方は反転させて読んでね。

この医師連盟会長のように犯罪を立証できない、政治的・モラル上の行動で糾弾されるべき人間が、あきらかに刑事事件として裁かれるような犯罪を犯したら、物事がはっきりしていいでしょうね。被害者には気の毒ですが。


早春の少年(栗本薫)講談社

副題が「伊集院大介の誕生」で、伊集院大介が最初に関わった事件の話です。
14歳の伊集院大介は、父親の仕事の関係で名古屋に近い古い城下町に引っ越して来た。その町には戦国時代の因縁にまつわる暗い伝説が残されていた。
伊集院大介が越して来る前後から動物が虐殺される事件が相次いで起こり、ついにバラバラ殺人事件に発展してしまう。しかしそれも、その後に起こる事件の序章に過ぎなかった。

・・・というのが全体のストーリーなのですが、
この作品は事件の内容よりも、14歳の伊集院大介の内面を描くのが主になっています。自分はいくら大人だと思っていても周りは14歳にしか見てくれない。
自分の未熟さが許せない気負いとか、自分は特別な人間だと思う熱さとか、いかにも14歳の伊集院さんは、何となくせつないです・・・

でも伊集院さんて、こんなキャラでしたっけ?
「伊集院大介の私生活」とはずいぶん違う気がする・・・
ナリスさまになったのかと思ってしまった。


古い骨(アーロン・エルキンズ)早川書房

アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
人類学の教授で白骨死体の法科学的分析が専門のギデオン・オリヴァー教授を探偵役にしたミステリー。冒頭のシーンが世界遺産の(天空の城?^^)モン・サン・ミシェルなんですよ。これである種の雰囲気が出来てますね。

舞台はモン・サン・ミシェルに近い古い領主館。当主が重要な一族会議を召集したが、問題を話し合う前に事故死してしまった。その直後、館の地下室から白骨死体が発見される。ギデオンの鑑定で白骨は第2次大戦中のものと判明するのだが、その身元の判定をめぐって、さらに一族の1人が殺される。

あとがきでは、あまり誉めてなかったりするのですが、たしかに本格謎解きものではないかもしれません。
でも、ギデオンのキャラクターが親しめるし、ワトソン役のFBI捜査官ジョン・ロウとの会話が楽しいです。アメリカでは観光ミステリーを言われているらしい。
たぶん日本の「京都○○殺人事件」のような感じなのでしょうね。
映像化したら絶対面白いだろうと思いました。ドラマは無いのかな?


ミーのいない朝(稲葉真弓)河出書房新社

泣きました・・・

愛猫ミーとの20年の生活を描いた作品。
話は1977年夏の夜、中学校の金網フェンスに首を突っ込まれて苦しんでいた子猫との出会いから始まります。怯えながら作者にすがり付いてきた子猫を連れて帰って世話をするうちに、ミーは著者の心に住みつき、何よりかけがえのない存在になってゆく・・・

それから20年、自然豊かな郊外の戸建の幸せな生活(猫にとって?)から、離婚による都内のマンションへの引っ越しなど、楽しい事苦しい事、著者と猫との密着した生活が描かれています。

飼いはじめの頃、ペットショップのはしごをして猫用品を買い集めてしまうところなどは、自分の事を思い出して楽しいです。(思い出してって〜、今でもそうなんだけど^^ゞ)

でも楽しい話だけではありません。
この本の半分近くは老猫看護の記述になっています。足腰が立たなくなり自力排泄ができなくなったミーの介護は、壮絶なくらいすさまじいです。動物の老いとはきびしいものですね。
体が大きいほど大変だから、ハムスターはまだ楽だ・・・
動物と暮らした事のある人には、辛いけど心に響く作品です。

著者は「エンドレス・ワルツ」で第31回女流文学賞を受賞した作家。
・・・でも知らなかった。
映画「エンドレス・ワルツ殺したいほど、愛したい」(若松孝二監督)の原作。騒乱の70年代(最近こんな表現ばっかり書いてるな)新宿騒乱で出会った女優で小説家だった鈴木いずみと天才サックス奏者と呼ばれた阿部薫の無軌道な恋愛を描いた作品・・・らしい(読んでないので)


平安妖異伝(平岩弓枝)新潮社

藤原道長と樂所の伶人、秦真比呂が宮廷で起こる怪事件を解決していく連作集。

一条帝がまだ11歳の頃の話で、道長は25歳の中納言、真比呂は15歳です。
真比呂は秦氏の子供となっていますが、その出生には謎があり、雅楽に人並みはずれた才能を持つばかりでなく、陰陽師以上の不思議な能力を持つ少年です。

内容は陰陽師ものに似ていますが、どろどろしたところが無く、華やかで美しい小説になっています。真比呂が楽人ということで、雅楽に関連した話が多いせいかもしれません。

藤原行成、斉信など「枕草子」でお馴染みの人物も出て来ます。
真比呂の母親の知り合いが乾闥婆というのだから、先が楽しみですよね(^o^)


星の海を君と泳ごう 時の鐘を君と鳴らそう(柴田よしき)アスキー

99年に「SFオンライン」で連載された「星の・・・」に、書き下ろしの「時の・・・」を加えた2部構成の作品。

時は銀河38世紀。銀河連邦の中央銀河市から遠く離れた辺境にある銀河総合大学テラブロックA校。そこで行方不明になった学生を探すという冒険ファンタジー。
ヒロインのララは13歳の普通の女の子、ヒーローは9歳の天才少年ウィニー。

第2部はその冒険から20年後。
左遷された編集者のララと、ついに大統領に立候補したウィニ―が乗っ取られたホテルを救う話です。

ジュブナイルを意識したSFです。
それにしても最近の柴田作品は大メロドラマですね。


◆「顔のない男(北森鴻)文芸春秋

ややこしい設定ですが、面白かったです。連作短編集のような長編です。

空木精作という41歳の男が殺されて発見された。身元はすぐに判明したが、それ以上の詳しい情報は全く得られなかった。職業も交友関係も不明。社会との接触を一切立ち切って暮らしていた男、空木は捜査員から「顔のない男」と呼ばれるようになった。

しかし空木の部屋から雑誌の中に隠された1冊のノートが発見され、その中のメモから空木が密かに探偵業を行っていた事が判る。メモに残された1つ1つの事件を追っていくと、やがてすべての事件に共通する1人の男が浮かび上がってきた。空木はその男を追っていて殺されたのだろうか?

この中の一話一話が空木のメモの一つ一つの事件に当たります。
この一編一編も独立した事件として読んでも面白い話です。
それがつながって一つの事件になるのですが、さらにもう一つ裏があるのですね・・・。
読み終わった後にもう一度考えないと判らなかった(^^;)


◆「三毛猫ホームズの花嫁人形(赤川次郎)カッパノベルズ

すでに読んでる方も惰性かもしれない・・・(^^;) 
このシリーズの初期の作品はとっても面白いので、敬遠してる方も一度挑戦してみてください(^^)
この作家さんのホラーは本当に怖いですよ。スプラッタ系じゃなくて、ジワ〜っと恐い!

片山晴美は馴染みのケーキショップで1人の女性と相席した。
やがてその店に女性の上司が現れたが、待ち合わせの相手は女子高生だった。
その帰り道で女性は殺され、現場には折り紙の花嫁人形が残されていた。
彼女は結婚を2日後に控えていたのだった。
さらに結婚間近の女性が殺され、花嫁人形が置かれる事件が続けて起こる。

良く考えるととても陰湿な事件なのですが、さわやか(笑) 
登場人物も深くものを考えないし、悩まない。連続殺人なんだから、もう少し深刻に考えた方がいいと思うけど、このあっさり感が後を引かなくていいんですよね。


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