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最近読んだ本

2001年・
その1


壬生義士伝」      (浅田次郎) 
永遠の仔」      (天童荒太)
薬子の京」       (三枝京子)
太平記紀行」      (永井路子) 
陰陽師 九巻」(岡野玲子/夢枕獏)     
山河寂寥―ある女官の生涯」  (杉本苑子)
3000年の密室」          (柄刀 一)
平成お徒歩日記」         (宮部みゆき)
不知火海」              (内田康夫)

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壬生義士伝(浅田次郎)文芸春秋 

盛岡南部藩を脱藩して新撰組に入隊した隊士・吉村貫一郎。鳥羽伏見の戦いで死んだ吉村とその家族の生涯を通して、幕末から明治に移り変わる時代を描いています。

順を追った小説と言う形では無く、吉村貫一郎を知る人々が 明治になってから彼を語ると言う形を取っているところがミソ。 見る人によって変わる人間の複雑さがわかります。

最初は単純な人間に思われた人物が、語られるにつれて、肉を付け重い深い人物像に変わっていくところは、謎解きのようで興味深く読ませます。

また、吉村貫一郎を語る人物達は、彼を語ると同時に自分をも語ってしまうところが面白いのです。「人間は他人を自分の計りでしか計れない」
吉村貫一郎の「義」は、他の人間の「義」とは違っていた。
その「義」が見える人間と見えない人間の差も面白いところです。
生きる事や死ぬ事を真剣に考えない現代に、人の品格を考えさせる話でした。


永遠の仔(天童荒太)幻冬舎

虐待により精神に傷を受け児童精神科に入院していた3人の子供。20年後に3人が再会した時から始まった連続殺人は、かれらの復讐なのか?

あまりに暗くて飛ばし読みしてしまいました。この本は図書館で借りたんですが、上巻はかなり傷んでいました。なのに下巻は新品のようにきれい。
上巻を借りた人で下巻を借りる人は5分1くらいらしいです。

「壬生義士伝」と続けて読むとあまりに差が大きくて、唖然。
「壬生義士伝」の登場人物は、年齢は子供でも精神的には大人。
一方、「永遠の仔」は精神的には幼児しか出てこないのですから。

でもニュースを見ていると、この小説で語られている事件が
現実にあちこちで起こっている事件と重なるのですから恐ろしいですね。


薬子の京 上下(三枝京子) 講談社

 藤原薬子については、いままで様々な薬子像が描かれて来ましたけど、この中の薬子は藤原種継の娘として北家を守ろうとする政治家です。あの妖艶なイメージは無いけれど、その分、解りやすい人に描かれてます。

それにしても、入内した娘の方は結局どうなったのだろう?? 
この中では出家してますが、自殺説もありますよね。


太平記紀行(永井路子) 中公文庫

 単なる史跡ガイドではなく、縁の地を巡りながら「太平記」の時代の謎を解き明かそうとする内容。歴史ブームから取り残された南北朝時代、このややこしく判りにくい時代を、実際に現場に立つことにより少しでも解明しようとしています。

なかでも、寺社勢力の見直しと言う視点が新しかったです。
現代の日本では宗教勢力は過小評価されていますが、広大な荘園と強大な僧兵を持った大寺院は、権力と武力を備えた大勢力であったといえるでしょう。
歴史の視野から外れてしまった感じがありますね。


陰陽師 九巻(岡野玲子/夢枕獏) 白泉社

「瓜仙人」「源博雅 思わぬ露見のこと」「内裏炎上ス」の3篇です。
 管ギツネが可愛いな。


山河寂寥―ある女官の生涯(杉本苑子) 岩波書店

「壇林皇后私譜」の次の時代の話にあたる作品です。
伊勢物語の時代でもありますね。

主人公の女官とは正一位尚侍藤原淑子。藤原基経の異母妹です。
はじめ、文徳天皇の女御明子(染殿の后)のもとに出仕、後に清和、陽成、光孝、宇多の各天皇に仕える女官として正一位まで上り詰めた実力者です。

藤原氏の他氏排斥の仕上げに時代にあたるので、謎の事件の多い時代です。
この小説の中でも不可解な死が多く、天皇の殺人事件などもあり、その点ではミステリーのようでもあります。

事件としては承和の変、応天門の変、登場人物は在原業平、菅原道真など。
あまり小説になっていない時代なので面白く読めました。


3000年の密室(柄刀 一)原書房

中部山岳地帯の洞窟から発見されたミイラは、3000年前に殺された男のものだった。縄文、弥生文化を背景にした謎解きミステリーです。

殺人事件もありますが、付け足しのような感じです。
ただ縄文から弥生へ、狩猟文化から稲作文化への大きな変化と現代の比較は面白いかもしれません。


平成お徒歩日記(宮部みゆき)  新潮文庫

宮部氏と編集スタッフが歴史上有名なルートを実際に歩いたレポート。
徒歩こそが主要な移動手段であった歴史時代の距離感や時間の感覚を体験しようという試み。でもせめて、もう少し歩いて欲しい(笑)

歴史上の人物が実際に歩いたルートを歩いてみるのは楽しいですよね。
京都では随分歩きましたけど、昔の人は思った以上に健脚です。
藤原行成の日記では、御所と道長邸を何往復もしてるんですから、貴族といえど足は鍛えられてますよね。

そういえば以前、同じような試みをした本を読んだことがありました。
タイトルなどは覚えていないのですが、佐々成政の針の木峠越えや、河井継之助の八十八里越えなどを実際に歩いていて迫力のレポートでした。


不知火海(内田康夫)講談社

殺人事件ではありません。
アパートの隣の住人が、謎の荷物を預けたまま失踪。その住人の過去に関する謎解きです。それなりにまとまっているので、気軽に読める1冊です。


 

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