◆「邪馬台国はどこですか?」(鯨統一郎)創元推理文庫
一応「推理」です。連作集。
たしか「'99このミス」で8位か9位くらいにランクされてました。今回は再読。
舞台となるのはお客の少ないバー。登場人物は、史学専攻の大学教授とその助手、歴史マニア、バーテンの4人だけ。その4人が繰り広げられるめちゃくちゃ歴史談義。歴史書ではないのですが、学生時代を思い出す楽しい本。
でも、本物の邪馬台国論争は、もっと訳わからない気もします(笑)
学生時代、「隠された十字架」で歴史を能動的に楽しんで良いと知った私達は、とにかく定説を覆すことに情熱を燃やし、訳のわからない新説を思いついてはいい加減な検証を言い合って盛りあがっていました(笑)
◆「あやし〜怪〜」(宮部みゆき)
江戸のお店の奉公人達の身に起こった様々な奇怪な話を集めた短編集。
残酷で陰湿な現代のホラーと違って、人間の業や哀しさをテーマにしているので味わいがあります。
◆「殺される理由」(雨宮町子) 徳間書店
75歳の興信所所長・三歩一久夫と、三十路に入った下働きの亮介君の連作推理。
日常のちょっとした謎解きは面白かったですが、殺人事件の方はイマイチかも。
◆「密室は眠れないパズル」(氷川透)原書房
97年鮎川哲也賞の最終候補に残った「眠れない夜のために」を改稿改題したもの。作者はクイーンファンだそうで、「読者への挑戦」付き(^^)
場所は深夜の出版社ビル。
残業に残った次長が胸を刺されて発見された。次長は「常務に刺された」と言葉を残して絶命。だがその常務も殺されていた。裏口は閉ざされて外へは出られない。
ビル内にいた8人の中に犯人がいる・・・という「閉ざされた空間」もの。
1つとても弱い証言があって、しかもそれが犯人に直結してしまうので、
挑戦されなくても犯人はすぐ判ります(笑)
冒頭の伏線からして「この人物が犯人です」と名指ししているようなもの。
同人誌なら許せる範囲ですけど・・・ね。
◆「獅子の座ー足利義満伝」(平岩弓枝) 中央公論社
とても華やかな時代ですが、少し抑え目に描いている気がしました。
政治的なことが中心だからでしょうか・・・。
もう少し長めでも、細かく書き込んで欲しかったですね。
基本的には井沢元彦の「天皇になりたかった将軍」と同じ視点から見た作品です。
でも仮に義満の子が天皇位に上がったとしても、過去の歴史の例では、こういう場合は皇統に近い内親王が中宮に立つので、その子は、母方から見れば充分皇統を継いでいることになるんですよね。
娘を入れるか、息子をいれるかの差しか無いように思えてしまいます。権力の構造からしても、日本的にトップは祭り上げられて、No.2が実権を持つというパターンが新たに発祥するだけだから、結果は同じじゃないかと言う気がしますね。
◆「ひらがな日本美術史1〜3」(橋本治)新潮社
「芸術新潮」の連載をまとめたもの。
最初から最後まで「目からウロコ」状態になる1冊!!
日本美術だけでなく日本文化全体、日本人に対するイメージまで変わりました。
日本美術の中には意外に「動き」の要素が入っているんですよね。
極端に言ってしまえばアニメの要素。
特に絵巻や屏風絵というものは、「動いているように見える」「今にも動き出しそうに見える」という点を重視して作られている作品が多いように思われます。
あとは「色の華やかさ」にも驚きます。現在私達が見ることの出来る歴史的美術品の姿は、ほとんどが退色したり表面が剥離したりした後の姿です。
そこから、どうしても日本美術というと、地味で渋いイメージを持ってしまいます。でも実は、作られた当初の姿は極彩色の上に金箔などを多用した派手派手作品だったりするのですよね。
◆「最後のディナー」(島田荘司)原書房
横浜にいる石岡君が出会った謎をスウェーデンにいる御手洗が解くという、
一種のベッドディテクティブもの。
薩摩の飢饉と、老いた元ディレクターの人生の謎解きです。
連作集。
◆「トルコで私も考えた1〜2」(高橋由佳利)集英社
マンガエッセイです。著者の実録トルコ生活記。ご主人はトルコ人。
何から何まで日本と違う! 大らかで、のんびりしていて、暖かくて、美味しそう(^o^)価値観を変えたい人、ストレスのある人にお薦め!
でも、水が出ないのは大変そうです。
◆「東福門院和子の涙」(宮尾登美子)講談社
ちょうど大河ドラマで登場しています。将軍秀忠の娘で後水尾天皇の女御和子の話。
その和子が宮中に受け入れられるまでの様々な苦労(陰湿ないじめ等)を描いてます。これでもかというほどのいじめは凄まじいです。
まあ、今想像しても「このくらいはあったろう」と思いますが。
古い体質のところに新しい勢力が入り込めば、必ず起きる現象ですよね・・・とは言っても、矢面に立った本人にとっては、大変な苦労でしょうが。
でも、後水尾天皇との間には7人の子がいるわけですから、仲睦まじかったと言う説もあります。和子自身は、頭も性格も大変優れた人だったそうですから、天皇も次第にその魅力に惹かれて行ったのでしょうね。
幕府の莫大な経済力をバックにして、戦乱で荒廃した京都の町を立て直した人でもあります。
◆「九人と死で十人だ」(カーター・ディクスン)国書刊行会
カーが1940年に発表した作品の新訳。
ヘンリー・メリヴェール卿もの。航海中の商船の中での殺人という「閉ざされた空間」の設定が、なんと言っても良いのです!しかも乗客はたった9人。
そして殺人現場に残された指紋はその中の誰の物でもなかった…。
この設定だけで、ミステリーファンなら狂喜しますね〜^^
解決を読んでしまえば取りたててすごいトリックがあるわけでもないのですが、やはり引っ掛ってしまうのは、プロットの見事さと言うしかないです。久しぶりにワクワク読んだ一冊です。
カーにしてはストレートな謎解きものになってます。
◆「オルガニスト」(山之口洋)新潮社
98年第10回ファンタジー大賞受賞作。
将来を嘱望されていたオルガニストが交 通事故で半身不随の体になり行方不明に…。数年後、突然現れた謎の天才オルガニストの正体は彼なのか?
後半の謎解き部分はガラッっとイメージが変わります。
いかにも1960年生まれの発想かも…。有名アニメみたいなのです。
◆「ダスト」(チャールズ・ペレグリーノ)ソニーマガジンズ
地球上に生命が誕生して以来、約3300万年(一説には2600万年)毎に繰り返される生命の大量絶滅。その謎を解く。
発端は寄生性のダニの大量発生なんですが、このことは最近ニュースでも大きく取り上げられてましたね。この本を読んで、アメリカではかなり深刻な問題になっているんだと感じました。
◆「イントルゥーダー」(高嶋哲夫) 文芸春秋
「23年間会ったことのない息子が事故で意識不明の重体になった。息子の部屋に残されたフロッピ−の内容から、父は自分の作ったス−パ−コンピュ−タにウィルスを送り込んだのが息子だったと知る」、
って話だとあちこちの書評に書いてあったのに…、実際は原発の話だった…。
そのうえ息子の性格や考え方がイマイチ伝わってこないので、なんで突然原発の話になるのか納得しにくい。
要するに息子の話でなく、父親の話なんですね。
◆「柔らかな頬」(桐生夏生)
ラストについては、やはり不満ですね。
近頃このタイプの終わり方が流行ってるのかなあ?
それならきちんと読む前に判るように、明記してもらいたいです。判っていたら読まないのに…。
メインになっている事件に付いては、実際に似たような事件がありますが、あれも不思議です。
しかし、この本を読んで「この主人公は私に似ている」と言う人が多いのはなぜ…?
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