◆「本格ミステリ・ベスト1001975〜1994」
(探偵小説研究会)東京創元社
探偵小説研究会は、創元推理評論賞の選考委員および受賞者を軸として
1995年に結成されたもので、
今回ミステリベスト100を選定して公表しました。
さすがに対象年代で面白いと思ったミステリは、ほぼすべて選ばれていました。
そして、私は気にいっていたけれど
ミステリーファンの友人達にはあまり評価して貰えなかった作品が、
けっこう上位にランクされていたのが嬉しかったです。
本格ファンの好みはやっぱり変わっているのかな?
◆「狐罠 きつねわな」(北森 鴻)講談社
小説としては面白かったです。でも殺人事件は付け足しかな…。
(謎解きが無理矢理過ぎる〜)
骨董業界の裏側に絡んだ話で、鑑定や贋作作りに関する話は興味深いです。
骨董業界の事件の方がメインで面白かったです。
◆「竜馬伝説を追え」(中村彰彦)世界文化社
幕末は専門外(^^;)なので全くわからないのですが、
それでも竜馬の暗殺説には疑問がありました。
大岡昇平氏が「いてもいなくても構わぬようになった時、暗殺された」と言ったように、
あの時点では、竜馬が死んでもあまり変化が無いと思われるのですよね。
「暗殺ではない」と言う説を唱える人が多いことが判って面白かったです。
NHK「歴史発見」の盗作問題についても、語られています。
でも、幕末はまだまだ差し障りが多くて、
はっきり史料が残っていても公表できない
事が多くて、つまらないですよね。
◆「ペン」(引間 徹)集英社
ペンはペンギンのぬいぐるみ。
ぬいぐるみにはタマシイがあって、
そのタマシイと会話が出来る青年、その彼女の夢のようで残酷なおとぎ話です。
◆「OUT」(桐生夏生)講談社
前半は引きこまれましたけど、後半は胡散臭かった(笑)
「非日常なところが恐くなくていい」と言う方が多いようですが、
私は日常的でコワイ話が好きです(^^;)
◆「理由」(宮部みゆき)朝日新聞社
ひとつの事件から次々に新しい事実が掘り起こされていく過程は、
さすがに読ませます。
冒頭の事件場面は、明確で緊張感のある文章で迫力がありました。
◆「朝霧」(北村薫)創元クライムクラブ
<私>がついに出版社に就職しました。
「山眠る」は江戸俳諧が主な話。なかなか深くて難しい。
「走り来るもの」は、リドルストーリがメイン。
古典の解釈もけっこう視点が恐いかも・・・。
「朝霧」は、忠臣蔵と暗号解読のお話です。
この中に出てくる「屈辱ゲーム」
(当然読んでいそうで実は未読の本をあげていくゲーム)
読んだ後やってしまった人も多いかもけっこう面白いです(^^)
◆「バベルの謎」(長谷川三千子)中央公論社
第九回和辻哲郎文化賞受賞作。
旧約聖書から後世に書き加えられた部分を取り除き、原初の形に戻した上で、
それぞれのエピソードに隠された本来の意味を探り出そうとした内容です。
「ヤハヴェは天地創造をしていない」「神はカインにしか語りかけていない」など、
日本人にも有名なエピソードが中心なので判り易かったです。
◆「小早川隆景」(野村敏雄)PHP研究社
とても簡単な評伝です。年表代りに使えます。
◆「神無き月十番目の夜」(飯島和一)河出書房新社
宮部みゆき氏絶賛の一冊です。
慶長7年(関ヶ原の2年後)常陸の国北部の村が丸ごとひとつ滅びた。
その顛末を描いた作品。
戦国の世から、身分の固定した厳しい封建社会に変わる時代の
変革の軋みに押しつぶされた人々の記録です。
破局へとなだれ込んでいく過程が迫力あります。
◆「椅子が怖い 私の腰痛放浪記」(夏樹静子)文芸春秋
夏樹さんは1993年から3年間、
腰痛で座っている事も立っている事も寝ている事さえ辛い状態になり、
時には死さえ頭に浮かべるまでになってしまった。
ここまでなら普通の闘病記なのですが、この腰痛の原因が恐いのです!
本人は全く思っても見なかった原因、読んだ私たちも信じられない原因。
人間の潜在意識と言うものは本当に恐ろしいです。
本を読んだり、文章を書いたり、似たような生活をしている人は気を付けましょう!
◆「レディ・ジョーカー」(高村 薫)毎日新聞社
グリコ森永事件を思わせる、ビールメーカーが脅迫される事件。
3章から5章までは迫力があって面白かったです。
◆「イエスの遺伝子」(マイクル・コーディ)徳間書店
ノーベル賞を受賞した天才DNA学者の娘が、脳腫瘍で余命一年と診断された。
その娘を救う為、イエスキリストのDNAによる治療を行おうとする。
はたして二千年前のイエスの遺伝子を見つける事は出来るのか?
その遺伝子に隠された謎とは?
本物の面白さはないけど、
「謎の宗教集団」「キリストの聖遺物」なんて道具立てだけでも楽しい。
◆「グランドミステリー」(奥泉 光)角川書店
大雑把に括れば、「時間ミステリー」でしょうか…。
昭和9年の佐世保の水雷艇の爆発の謎と、
昭和16年の真珠湾爆撃中のパイロットの謎の死をつなぐものは何か?
という話なんですが、謎解きと言うより、
戦争、人間、殺人…生きる意味とは何かを問う作品ですね。
◆「敵対水域」
(ピーター・ハクソーゼン、イーゴリ・クルジン、R・アラン・ホワイト)文芸春秋
1986年バミューダ沖で起こったソビエト原子力潜水艦内での事故を描いた
ノンフィクション。
事故のきっかけ、経過、そして思わぬ結末まで
事実は小説家の想像を超えることの証明のようです。
◆「空へ エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」
(ジョン・クラカワ―)文芸春秋
1996年5月に起こったエヴェレスト遭難事故、
その登山隊に参加していて生還したレポーターが書いた事故の記録です。
日本人の難波康子さんを含む十数人の死者を出した事故はなぜ起こったのか?…
信じられない事ばかり書いてある本でした。
最初に驚くのがエヴェレストの登山ルートが渋滞して要ると言う事。
同じ時間帯に多くの登山隊が頂上を目指す為、狭いルートは順番待ちで渋滞する。
その為に貴重な時間と体力が無意味に失われて行く…、恐い話です。
また、エヴェレストの登山が営利企業化している事も驚いた事でした。
技術や経験に差のある、見ず知らずの人間がグループを作って登るというのですから、
世界中どこでも観光パック旅行なんですね…。
今回遭難した登山隊も営業公募隊だったそうでが、
でも高山に登るなら、どんな登り方でもそれなりの覚悟は必要な気がします。
8000mの高所ではそこにいるだけで極限状態でしょう…、「
誰かが助けてくれなかった」「誰が〜してくれなかった」というレベルの所じゃないと思いました。
自分で判断して決断する事が生死の分かれ目、
人に頼りたい人は登らない方が懸命ですよね。
◆「アニメ―ションの色職人」(柴田育子)徳間書店
宮崎アニメの色を作っている色職人さんたちの苦労話です。
この世には、信じられないようなプロの技を持った人たちがいるのですね。
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