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歴史小説
2004年



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◆ 「宮廷文学のひそかな楽しみ」 岩佐美代子 文春新書

昭和天皇の第一皇女・照宮様のご学友として宮中生活を体験した著者が、その経験と視点から宮廷文学の面白さを解説した本。目からウロコの指摘がいっぱいで、謎解きの楽しみもあります。

たとえば、枕草子の「五月の御精進のほど」の段は、清少納言はじめ女房達が春を迎えた郊外の風景と食べ物をレポートした「春の特番・NG集付き」という内容ですが(^^)、そのなかで女房達が食事をする姿勢を「はいぶし」という言葉で説明しています。
今までの解釈では「腹ばい」とされていたんですが、中宮付きの女房がそんな行儀悪い姿勢になるはずはない。とすれば、どういう姿勢のことなのか? これも言われてみれば納得の指摘なのですが、実際に宮廷生活をした人しか出来ない解釈なんですよね。

また、現在の京都御所の「萩の戸」と、古典文学に登場する「萩の戸」の違いから、本来の「萩の戸」を推定する分析も、言われてみれば「なんで今まで疑問に思わなかったんだろう?」と思う指摘。いろいろな発見がある楽しめる1冊です。




◆ どぶどろ  半村良 扶桑社文庫

収録作品は短編7作「いも虫」「あまったれ」「役たたず」「くろうと」「ぐず」「おこもさん」
「おまんま」と長編「どぶどろ」。

時代は寛政の改革のころ。
江戸の市井に生きる馬鹿っ正直な貧しい人々と、薄情な上つ方の、ちょっと怖い話。

何を書いてもネタバレになるから詳しいことは書けないのですが、見事な構成というよりない。トリックではなくて、人間を描いてミステリーになっているというところが素晴らしい。宮部さんの解説にもあるように、みんなが小悧巧になろうとしている現代にこそ、読むべき小説かもしれません。


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