シュバルツシルトの解(その3)光の曲がり
比較のための光の運動の(光速で運動する物体の)ニュートン力学
ニュートン力学であるから物体の速度は30万km/sを超える事に制約はない。星から十分離れた所で
30万km/sで運動している物体が星の近辺を通過する双曲線運動について考えて見よう。
星に近付くにつれて加速されるので星の周辺では30万km/sを超えて運動する。
(アインシュタインによれば本当は星に近い方が時間が縮み空間の半径方向が伸びるので光の速度は30万km/sより
小さくなるのだが。その代わり振動数は上がるので光のエネルギーは大きくなる)
半径方向加速度は引力引く遠心力でd^2r/dt^2=-GM/r^2+ r(dθ/dt)^2 (1A)
角速度の変化率はd^2θ/dt^2+2/r (dr/dt)(dθ/dt) =0 (2A)
(2A)よりd/dt (r^2 (dθ/dt))=0
Kを積分定数(角運動量)として積分するとr^2 (dθ/dt)=K; dθ/dt=K/r^2 (2B)
(1A)のdθ/dtに (2B)を代入するとd^2r/dt^2=-GM/r^2 +K^2/r^3
dr/dt=Pと略記 P(dP/dr)= -GM/r^2+K^2/r^3
両辺をrで積分しrが大のときdr/dt=cとなる事から積分定数を決めるとc^2/2
P^2/2= c^2/2+GM/r-K^2/(2r^2); P^2= c^2+2GM/r-K^2/r^2 ; P=√(c^2+2GM/r-K^2/r^2)
dr/√(c^2+2GM/r-K^2/r^2)=dt; dt= r dr/√(c^2 r^2+2GM r-K^2) (4)
dt=r dr/√(A) (c^2 r^2+2GM r-K^2=A と略記)
積分定数をt0として両辺を積分しc^2は+なので
t=√(A)/c^2-GM ln(2c^2 r+2GM+2c√(A))/c^3-t0 (5)
これでrの半径を通過する時間を計算できる
(2B)から dθ= K/r^2 dt= (K/r^2) r dr/√(A) (4)を代入すると
dθ=K dr/( r√(A))=K dr/(r√(c^2 r^2+2GM r-K^2))
両辺を積分し積分定数をθ=0の時近地点を通過するという条件で決めると
(E =√((GM)^2+c^2 K^2)と略記)
θ=(K/K) arccos((GM-K^2/r)/E); (GM-K^2/r)/E=-cosθ; K^2/r =GM+E cosθ
r =K^2/(GM+E cosθ) (6) これは双曲線である。
K^2の値を求めてみよう。
近地点距離= rnとすると近地点でdr/dθ=0となるのでc^2 (rn)^2+2GM rn-K^2=0
従って K^2= c^2 (rn)^2+2GM rn; K^2= c^2 (rn)^2 (1+2GM/(c^2 rn))
2GM/c^2はaと表せるので K^2= c^2 (rn)^2 (1+a/rn)
これを代入するとE=GM+c^2 rn
双曲線の-∞側の漸近線と+∞側の漸近線とのなす角度θkを求めてみよう
θk=2arccos(-GM/E)-π=2arcsin(GM/(GM+c^2 rn))=2arcsin(GM/(GM+c^2 rn) ≒2arcsin(GM/(c^2 rn))
GM/c^2はa/2と表せるのでθk=2arcsin(a/(2rn)) ≒a/rn
物体の速度はV=√((dr/dt)^2+(r dθ/dt)^2)=√(c^2+2GM/r-K^2/r^2+K^2/r^2)=√(c^2+2GM/r)
シュバルツシルトの解による光の運動
その1の(1c) (2c)を再記
d^2r/dt^2=-a(1-a/r)c^2/(2r^2)+3a/(2r^2 (1-a/r)) (dr/dt)^2+(1-a/r)^3 Kh^2/r^3 (1c)
dθ/dt= Kh(1-a/r)/r^2 (2c) (Khは角運動量)
光の時測地線の長さが0でds^2=-(1-a/r)c^2 dt^2+1/(1-a/r) dr^2+r^2 dθ^2=0が成立するので
1/(1-a/r) (dr/dt)^2=(1-a/r)c^2-r^2 (dθ/dt)^2 (2c)を代入すると
(dr/dt)^2=(1-a/r)^2 c^2-Kh^2 (1-a/r)^3/r^2 (11) これを(1c)に代入すると
d^2r/dt^2=-a(1-a/r)c^2/(2r^2)+3a(1-a/r)c^2/2r^2-3a Kh^2(1-a/r)^2/2r^4+(1-a/r)^3 Kh^2/r^3
=a(1-a/r)c^2/r^2+Kh^2(1-a/r)^2 (1-5a/r)/r^3
P(dP/dr)=a c^2/r^2-a^2c^2/r^3+Kh^2(1-a/r)^2 (1-5a/r)/r^3 両辺をrで積分し
rが大のときdr/dt=cとなる事から積分定数を決めると
P^2= c^2-2a c^2/r+a^2c^2/r^2-Kh^2 (1-a/r)^3/r^2 (11)式と同じものになる
(dr/dt)^2≒ c^2-2a c^2/r+(a^2c^2-Kh^2)/r^2 (12)
dt= r dr/√(c^2 r^2-2a c^2 r+a^2c^2-Kh^2)
両辺を積分しc^2は+であるので
t=√(Ap)/c^2-2a c^2ln(2c^2 r-2a c^2+2c √(Ap))/c^3
=√(Ap)/c^2-2aln(2c^2 r-2a c^2+2c √(Ap))/c (13)
(c^2 r^2-2a c^2 r+a^2c^2-Kh^2=Apと略記) これでrの半径を通過する時間を計算できる
(2c)より (dθ/dt)^2= Kh^2 (1-a/r)^2/r^4 (14)
(dr/dθ)^2=(dr/dt)^2/(dθ/dt)^2=c^2 r^4/Kh^2 -(1-a/r) r^2
dr/dθ= r√(c^2 r^2/Kh^2-1+a/r)
dθ= dr/(r√(c^2 r^2/Kh^2-1+a/r))= Kh dr/√(c^2 r^4-Kh^2 r^2+a Kh^2 r) (15)
根号の中の最後の項は他の項に比べて小さいので変数変換で消す r=u+a/2と変換すると
dθ= Kh du/√(c^2(u+a/2)^4-Kh^2(u+a/2)^2+a Kh^2(u+a/2))
≒Kh du/√(c^2(u^4+2a u^3)-Kh^2 u^2) = Kh du/(√(c^2 u^2+2a c^2 u-Kh^2)) (16)
両辺を積分し積分定数をθ=0の時近地点を通過するという条件で決めると
(Eh=√((a c^2)^2+c^2 Kh^2)= c √(a^2 c^2+Kh^2) と略記)
θ=-(Kh/Kh) arccos((a c^2-Kh^2/u)/Eh; u= Kh^2/(a c^2+Eh cosθ) (17)
変数を元に戻すと r= Kh^2/(a c^2+Eh cosθ)+a/2 (18)
Kh^2の値を求めてみよう。
近地点距離= rnとすると近地点でdr/dθ=0となるので
Kh^2= c^2(rn)^2/(1-a/rn)
これを代入するとEh= c √(a^2 c^2+c^2(rn)^2/(1-a/rn)) = c^2 √(a^2+(rn)^2/(1-a/rn))
なお積分を初等関数で表すため簡略化した(12) (16)式を作ったが(11) (15)式のまま楕円積分に変換し級数展開して
項別積分すればシュバルツシルト半径に近い領域でも使える解が得られると思う。
双曲線の-∞側の漸近線と+∞側の漸近線とのなす角度θhを求めてみよう
θh=2arccos(-a c^2/Eh)-π=2arcsin(a c^2/(c^2 √(a^2+rn^2/(1-a/rn))))≒2arcsin(a/rn)≒2a/rn
ニュートン力学の場合に比べて光は2倍曲がる事がわかる。ニュートン力学の場合は時間の縮みだけを
考えた場合に相当する
太陽の表面付近をかすめる光の曲がりを計算して見よう。
rn=7×10^8 m(太陽の半径); a=2950 m なので
θh=2×2950/(7×10^8)=8.4×10^-6 ラジアン
8.4×10^-6×180/π×3600=1.75 秒角
擬似無重力を体験できる綱の切れたエレベータの話から地表上で水平に発射された光は30万km走る間に4.9m落ちるのかと思っていましたが地球が球体である事の効果が加わり2倍の9.8m落ちるのだなと思っています。