{SBR大陸横断レースも7th.STAGEゴールまであと予定2〜3日の位置}
{サンディエゴでのスタート時、総数3852名いた参加選手も――『氷の海峡』は『アリゾナ砂漠』以上に過酷だった!}
{現在なんと61名まで激減!現在の総合獲得順位表は次のとおり……!}
場所はフィラデルフィア・シティ。熱狂する観客やカメラを構えた記者たち。多くの人が選手に敬意を払い、帽子を脱いで頭上で振っている。
{しかしこの表の意味する事はここまでこの大陸の自然と文化を越えて来た人間たちとその馬は…いずれも誰ひとりとして能力が劣る者のいない淘汰された実力者たちという事実!!}
{しかも7th.STAGEのゴールであるフィラデルフィアを迎えると残り『2つ』のSTAGE間の走行距離は短いショートルート!フィラデルフィアを制した王者がそのままニューヨーク・シティまで『3ゴール』独走する可能性が高いのです}
{3ゴールで300P!!}
{つまり!誰でも逆転優勝できるターゲット内に入るという重要な『7th.STAGE』なのです!!}
7th.STAGEは1200km、8th.STAGEは75km、9th.STAGEはわずか12km!!
{そしてそのせいかどうかはわかりませんが賭屋のオッズ表一番人気は…}
{何とここに来て『ジャイロ・ツェペリ』ィィィィィィィィ!!2番人気に『ジョニィ・ジョースター』ァァー――ッ!!}
{サンフランシスコからNY、ロンドン、パリから東京まで表や裏で大金が動いているッ!}
{世界中の人間が2人のどちらか優勝するだろうと大なり小なり期待に胸をふくらませているのですッ!!}
怒号渦巻くフィラデルフィア・シティ…しかしこの熱気は世界中を巻きこんでいたのだ。
カチリッ!
暗闇に灯をともす1人の男―ファニー・バレンタイン米国大統領。
『アリマタヤのヨセフの地図』を凝視する。
「あの『2人』…レースのコースを先頭集団のルートからわずかにはずれた…つまり…『見つけた』…という事だ」
「『胴体部』と『残り』の遺体を……」
「2人は『胴体部』を手に入れるためにこのゲティスバーグでコースをはずれた。全ては順調だ…いよいよ!」
「『総取り』の時が来た…」
「『頭部』を最後に残してこの我が国の『遺体総取り』の時がッ!!」
ついに大統領の全力宣言が出る!!
そしてそのころ……
「『敵』か…」「な…何だと!?…」
「こいつは『敵』かッ!!」
ジャイロの思い出のクマちゃんが、右腕に潜りこんで身体へ向かって上っていき体内へと消える。
「このクマはッ!オレのクマだッ!何だ!?何でここにある!?」
『沈んだ…!クマが!?…腕の中に…沈んでどこへ向かう?…今のは本物なのか!?オレは今、攻撃されている!?』
思考が混乱するジャイロ。
「人は何かを『捨て』なくては前へ進めない。それとも…」
「『拾って』帰るか…?ジャイロ・ツェペリ」
同じセリフを言うスタンド。
「オラァアッ!!」
スタンドに鉄球を放つジャイロ!
しかしスタンドは己の身体をバラバラにしてその攻撃をかわす。
「うりゃあッ!!」
鉄球の2投目を頭部に向かって投げる。
しかし、何枚もの円盤が重なったような形状のスタンドの頭部は、何枚もの円盤に解れてジャイロの鉄球を再びかわす。そしてパーツはガラクタの山の中に逃げ込んでしまう。
「『スタンド』!部品でバラバラになるようにして一瞬早くかわしやがった」
「見えているのか!!今のオレの2発の鉄球の軌跡が…」
『いる!『本体』が…近くに『本体』がいて…つまりどこからか肉眼でこのオレを見ている!』
地面で回転している鉄球に手を伸ばすジャイロ。しかし異変はすでに起きている。
数個の…2個ではない!3個以上…9個、いやまだ増える…鉄球が地面で回っている。
「何だ…?何だ…このゴミは……!?」
そして別行動をしているジョニィは…。
「この欠けた刃のナイフはッ!!鶏肉はッ!!」
「キャンプした場所で捨てたはずだッ!く…喰い込むッ!」
ジョニィの身にも思い出が侵入している。
「ジョニィ…早く…すぐここから逃げるのよ…」
「いいえ…わたしもジャイロも…助けようと思ってはいけない…」
「ジャイロを『助け』に行ってはいけない……必ず捨てなくてはならないハメに陥ってしまう…」
あの日―
どちらから行こうと誘ったのかは覚えていない
――灰色熊(グリズリー)に出くわした――
木の実を拾いに弟と山へ入ったら |
普段、熊はもっと山奥にいるはずなのに…
今まで足跡さえ見た事もなかったのに…… |
ここでガウチョガウチョと何かを食べている灰色熊の後姿が挿入されている。何を食べているのでしょうか?ヒントとして傍らに誰かの靴が落ちています。
弟をさし出してしまった
あたしのこの手で…
この手で弟の体を押した…押したのはあたし…
あたしの両親の大切な男の子を…… |
知ってるのはあたしだけ
村の人はみんな…事故に遭ったあたしと
あたしの両親を気の毒がってくれた…
でももう両親のいる家にいる事はできなかった |
あたしが行ける場所は修道院だけだった
神様の下僕になるしか…許して欲しかった…
あたしの罪を…弟に許してもらいたかった |
ホット・パンツの過去。罪の意識から修道院に入ったというホット・パンツ。
「そしてもし、あの方の『遺体』があるなら…もし『聖なる遺体』をそらえたなら……」
「許していただけると思った」「でもダメだった」
「ここに『くつ』が落ちていたから…」
「捨てて来たものからは絶対に逃れられない」
そしてホット・パンツの横にはあの靴が落ちている。
「あなたはまだ間に合う…ジョニィ!」
「今ならまだ清められるッ!清潔な水でそのナイフを洗い流してッ!」
「『心が折れて』しまう前にッ!」
そういうと、力尽きたようにグシャグシャと平らになってしまう。ソフト・マシーンに似た感じである。
「ホット・パンツッ!!」
「『敵』に『遺体』を奪われてしまったという事か!……持ってたもの『全部』」
「そして、ぼくとジャイロもここへおびき寄せるために敵はH・Pを泳がせて使った!!」
「この建物の奥に敵がいる…ジャイロ!!」
「このナイフは…!!間違いなくぼくのナイフッ!ぼくが『捨てた』ナイフ!!この攻撃はッ!!」
右手に喰い込んだナイフが肩口を滑るように上がってくる。
ジョニィが窓の外を見る。愛馬スローダンサーの姿を認める。
「『水』なんだな…!?『水筒』!!必ず助けてやる」「『H・P』…」
扉にむかって移動するジョニィ。その前を小さな生物が横切る。
「な…!?なに……!?」
小さな生物はガラクタの間を縫うように走る。ジョニィもタスクを構えるが…。
「い…今のはッ!!ウソだッ!!そんな事があるワケがないッ!こっちに向かって来たッ!」
「今のは『ダニー』!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「オレの『鉄球』だ!…これら…『全部』」
無数の鉄球が地表を回転している。
「誰か他人のものはこの中にひとつとしてない」「全てオレのだ…だが何か…」
「何か拾うのはヤバイ気がする……これは『敵』の攻撃」
『(今さっき投げた2個は除いて…)どれかにふれるのは…クソ!かなりヤバそうだ』
鉄球に触るのを躊躇(ちゅうちょ)しているジャイロの肩口で、先ほど喰いこんでいたクマちゃんが爆ぜて、薄布のようになりジャイロを覆う。
「ジョニィィ!!聞こえるかァー――ッ!敵だッ!近くに『本体』がいるぞォォォォォー――ッ!!」
一方的に押されていると言っていいだろう、ジャイロがジョニィに警告を発する。
「『公平(フェア)』に行こう」「スタンド戦は―――たとえば自らの弱点を相手に教えるような…―『公平』さが」
「精神の力(スタンド・パワー)として最大の威力を発揮する」
「『卑怯』さは『強さ』とはならないからな」
「わたしの弱点はジャイロ・ツェペリ――『水』で清める事だ」
同時に、顔まではわからないが本体がジャイロの視界に姿を晒す。
「信じなくとも自由だが――『罠』ではない。やってみるべきだ」
「『清潔』な水で洗い流せば…君が捨てて来た罪から…」「解放されるぞ」
「ちなみにジョニィは向こうの部屋でもう知っている」
スタンド同士の闘いに精通しているようだ。この時代、スタンド同士が出会うのも滅多にないであろう。それなのに精通しているということは、スタンド使いが集まっている大統領のもとに居たと考えるのが正道か?
「てめえ…ナメやがって…」
ガシィ 鉄球の1つをついに掴むジャイロ。しかし…それは本物ではなく「思い出」の鉄球であった。
掴んだジャイロの左腕を滑り上り、また肩口の所で爆ぜる!
「これはッ!この『鉄球』はッ!!」
「ジャイロ、何してるッ!」
「囚人の動きを止めろッ!!苦しがっているッ!!」
「鉄球をもう一撃だッ!!恐怖を止めてやるのだ!!」 |
「オレがッ!これはオレがッ!」
『父のもとで死刑囚処刑をミスった時の…この鉄球はッ!』
『…捨てたはずだッ!!』『確かに『捨てた』ッ!祖国で捨てたはずだッ!』
『何でここにあるんだ!』
ジャイロの上半身を例の薄布が完全に覆ってしまった。
「うおおっ!!ジョニイィィィィィィイイー――ッ」
「ジャイロ…!!」「今のはジャイロの叫び声ッ!!」
未だに白いネズミに翻弄されているジョニィ。
「くそっ!!またこっちへ近づいてくるッ!!」
『あれは『ダニー』じゃあないッ!『ダニー』であるわけがない。これは『幻覚』だ!』
『『幻覚』を観せられているんだ……!!』
『ぼくがいつも夢の中で見るやつと同じだ…そして『幻覚』だがあのネズミは止めなきゃあいけない』
『撃てる』
ドバッ ドバッ
2発撃つが偽ダニーはかわす。
ドバッ
3発目もかわす。3つの弾痕が偽ダニーを追ってブーツの中に追い込む。ジョニィが口をガッチリ掴む。
そして弾痕がブーツを貫く!こぼれ出る血。
「やっ、やった!命中したッ!」
「ジョォォオォォニィィイィィ〜〜〜〜ッ」
「ガボッガボッ」
ブーツの中から声が…そして顔がのぞく。都市伝説にノミネートされそうな状況。
「おまえがネズミを……!!」「森へ逃がしたせいだ…」
「父さんの言うとおりネズミを池に沈めていれば……あんな事にはならなかった」
「違うんならそう言ってくれ」
「兄さんはおまえのせいで落馬した」「おまえがぼくを!!」
「おまえがぼくを!!」
「殺したんだああぁぁぁー――ッ」
グワァアシィ
ついにブーツから飛び出してジョニィの首を締める。
「おうおぉぉぉおおぉおぉあぁぁあああぁぁ」
『このブーツはッ!!』
ドパアアンッ
ジョニィの身体も爆ぜて、上半身を薄布に包まれる。
しかしすでに建物の外にでることはできている。すぐそこに、愛馬そして水筒がある。
「み…『水』…『水』で…き…清めるのかッ!」
「あそこまで…『水筒』!なんとかして!あそこまで……!!」
這いずって近づこうとするジョニィ。しかしあの偽ダニーがスローダンサーの脚の間からチョロチョロでてくる。
「くそォォッ!!」
「この『敵』ッ!!絶対にブッ殺してやるぅぅぅぅゥゥー――ッ!!」
ドバッ ドバッ ドバッ
3発撃つが、偽ダニーは横っ飛びで全てかわす。
ドバッ
合計7発目のタスクを飛んでくる偽ダニーに撃つがそれもかわされる。
体当たりしてくる偽ダニーを右手で防御するジョニィ。
だが触れた瞬間、ジョニィの身体に喰い込み、そして爆ぜる。
「くそ……『白いネズミ』」
「だが今…爪弾で狙ったのはおまえじゃあない」「おまえは必ず仕留める」
「だがその前に撃ち抜いておくものがあった。それを撃った」
なんと7発目の弾爪は水筒を撃ち抜いており、水をこぼしながらジョニィの上に落ちる。
ナイフもニコラスも水によりジョニィの身体から流れて行く。しかし偽ダニー小賢しいことに流される前に脱出していた。
「『水筒』もだが…そして狙ったのは水筒だけじゃあない。この建物には『古井戸』がある」
「涸れてるかもしれないが『井戸』が…この敷地にな…つまり」
「地面の下のそんなに深くない所に『水脈』があるって事だ。10メートル下とかそんなところにな…」
「水が走ってるって事だ」「今撃った爪弾の射程で十分に届く距離!」
ゴボオオー ドクドクドク
ジョニィの読みどおり水があふれて来る。
「『清める水』は十分手に入るぞッ!ジャイロのところに行くぞッ!」
「この『敵』の持つ遺体は手に入れてやるッ!!」
「…………」
偽ダニーの顔があのスタンドのものに変化する。
「これでわかった…『両脚部』を体の内に持っているのは…」
「ジョニィの方だ」
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