「つかまれッ、ジョニィッ!!オレの馬にッ!!」
文字が貼り付いた不思議な形の生物が数匹J&Jに迫る。
そういえば、怪獣のカネゴンに頭部が似ている。チワワサイズのカネゴン!
バカラという文字がはり付いているのは、やはり正体不明の敵の能力ッ!!
「またとり囲まれるぞォー――ッ」「ズラかるんだァ!!」
ジャイロの愛馬ヴァルキリーに手を伸ばすジョニィ。しかしジャイロの放った言葉がジョニィの心を刺激する。
『とり…囲ま……れる…』『とり…』『…囲まれ…』『る』
ぼく…ジョニィこと……本名ジョナサン・ジョースターは
米ケンタッキー州ダンビルに生まれた
ジョースター家は没落した貴族の末裔だが
父は裕福な牧場主であり…三冠レース7連覇を誇る調教師―― |
父の仕事の関係でぼくは英・イングランドで
少年時代の数年をすごした事がある |
ジョースター家の食事風景に場面は移る。
幼き日のジョニィが小さく切った肉片をテーブルの下に隠す。
「ジョナサン、テーブルの下で何をやってる?左手を上にあげなさい」
厳格そうな父親。
「いいかジョナサン。食事中に限らず『マナー』というのは相手に対する『敬意』が含まれる」
「英国人は特に『テーブルマナー』を重んずる。おまえは我が家がアメリカの田舎者と軽くあつかわれてもいいのか!?」
オドオドと良い訳をするジョニィ。
「『出しなさい』と言ったのだ」
渋々と…ポケットから白いネズミを出すジョニィ。
するとガタッと凄い勢いで立ち上がる父。
「夕食はこれで終わりだ…ジョナサン、すぐに自分の部屋に行きなさい…。その前に…おまえがそれを庭の池に沈めてくるんだ。いいな…!」
「……え…。そ…んな…か、飼ってもいいって……約束してくれたのに…」
バンッ
「話をすり換えるな!正しく籠の中で飼うという約束を一方的に破ったのはおまえ自身なのにわたしをウソつき呼ばわりするのか!?」
「自分で始末するんだ…ジョナサンわかったな…行け」
泣いて外に飛び出していくジョニィ…。
全くもって酷い父親である。その家の教育方針に口を出す気はないが、可愛がっていたペットを自らの手で殺せとは、精神的な虐待であろう。
池の前で泣きじゃくるジョニィに近づくニコラス。
「どうする気だ?ジョニィ。それを沈めるのか?」
「全部…うぅ…ぼくのせいだッ!でも…できない!ダニーを池に沈めるなんて…うう、出来るわけがない」
「だけど…もう、そのネズミを家で飼うわけにはいかなくなったな」
「なあ、兄さんに考えがある。ダニーを森に逃がすってのはどうだ?それなら出来るか?ダニーなら森でもきっとたくましく生きていけるよ」
「だめだよ。父さんは絶対にダニーを池に沈めたって証拠を見せろって言うに決まっている。このダニー『死骸』を見せろって言うよ!」
「それなら簡単さ!!」
ジョニィが憂いる問題に答えるニコラス。
「学校の標本室にネズミのはく製があるの知ってるか?鳥とかキツネだってあるんだ…。明日オレが先生に言って『白ネズミ』のやつを借りて来てやる」
「ダニーだってかわりにはく製をチラッと見せれば父さんはきっと納得するさ」
お〜〜ッ!グッドアイディアだ!!
「まさか解剖とかして水死したかまでは調べないだろうからな…いや、父さんするかもな」「ブはっ」
「もし切ったら中からオガクズがごっそり出て来て父さんたまげるなッ!!はは!」
「兄さんッ!ありがとう!兄さんて頭いいな!先生も兄さんならきっとはく製貸してくれるな!」
仲良く肩を組む兄弟。
「それよりジョニィ…森へ逃がす勇気はあるか?」
「う、うん」
こうしてダニーは森へ走っていった。
それにしても良い話です。なんか久しぶりに純粋な、心を洗われる話でしたな。もう〜〜、ジョジョはひねくれた奴多すぎッ(笑)。
舞台は変わって競馬トラック。ニコラスが乗馬を行っている。
「スゲェー―ッ兄さんッ!自由自在だッ!」
「200メートルを17秒で走れと合図を送ったら兄さんは17」秒キッカリで走るッ!!」
「次の200メートルは23秒!!次は19秒!全て合図どおり走るッ!!0.0000001秒の狂いもないッ!どうやったらあんな事できるんだろう!?」
「いいなあぁ〜〜ボクにもできるかな?」
ジョニィのつぶやきに調教師の老人が答える。
「ンー――、まっ…努力と訓練次第でってとこだな。だが、あのニコラスは特別だ…ヤツの体の中には生まれた時からすでに『時計』がある…。おまえの父親はあの才能がないから調教師になったんだ…」
「あれは誰?」
「でかい馬だろ?」「名前はブラックローズ」
厩戸から黒い馬が引き出されてくる。
「多少神経質だが、今度おまえの兄さんはあれに騎乗して大会に出る…ニコラスならきっと優勝間違い間違いなしだな」
「そうじゃあなくて、父さんと一緒に馬を引っ張ってる子供の事だよ」
「ああ…ディエゴ…ブラ何だっけな……?Dioとかいうどっかのガキだよ。ちょっと見どころがあるから厩舎のホットウォーカーのバイトさせてる」
おや…。どうやらジョニィとDioには接点があったらしいが…あっただけなのだろうか?
そしてニコラスがブラックローズに乗換えて走り出す。
「兄さんはスゴイなあ…あんなでかい馬でもキッチリとねじ伏せて…さっきと同じ馬のように扱っている…」
兄に対する憧憬。弟に対する優しさ。仲の良い兄弟。
「兄さんは何をやっても上手だな。ぼく違う家の子かな?全然似てない」
「あのなジョニィ…おまえはまだ小さいだけなんだ。父さんが何と言おうともう少ししたらオレがちゃんと教えてやるよ…約束だ。そうしたら2人で助け合って世界中、色んな所で闘っていこう!」
スドドドオオ
いきなりトラック上に土煙があがる。そこから抜け出したブラックローズの背には…ニコラスの姿は無い。
「ニコラス!」「ニコラスゥゥゥー―――ッ」
「医者だッ!」「誰か医者を呼べェェェェ」
呆然とたたずむ幼きジョニィ。
「いったい何が!?あああ、何がッ!何が起こったんだー――ッ!?」
「ネズミが足元を走ったのが見えました!森へ消えたッ!」
「ブラックローズが『白いネズミ』に驚いたんだッ!」
白いネズミ……。
「呼吸をッ!神様…」「あああ…お願いだッ!息をしてくれェェェェ」
「ニコラスッ!」「ニコラスゥゥゥー――――ッ」
再び舞台と時間が替わる。
スクラップされた新聞記事。
全てジョニィのことについての記事。ニコラスの後を継ぐようにジョッキーの天才の道を歩むジョニィ。
そのスクラップを横に、ベッドに腰掛けブーツをいじっていたジョニィだが、靴の底が剥がれかけていることに気付く。
そこで、とある部屋へ行き換えのブーツを探す。その部屋はニコラスの写真と多くのトロフィーが置かれている。
ニコラスの部屋のようだ。
そこからジョニィはブーツを一足手に取る。
「ここで何をしている?ジョナサン」
ジョニィ父が部屋に入ってくる。
「いや…その、ぼくの乗馬ブーツの底が抜けちゃって……安物だったみたいで…。一足この古いヤツを借りようかなと思いまして」
「なるほど、だがそのブーツを戸棚に戻しなさい。……それはニコラスの乗馬ブーツだ」
しばし呆気にとられるジョニィ。
「ええ…もちろん知ってます。でもかわりのブーツがないんです。……これ一回だけです……。それに兄さんの足のサイズとぼくの足はピッタリになっちゃったんですよ」
「普段の手入れが悪いから底が抜けるのに気がつかなかったのではないかね?…それは自分の責任だろう」
絶句するジョニィ…。
「ええ…たしかに……」「でも、今日これから大切な大会があるんです…きっと優勝してみせます」
「優勝?」「それはおかしいな。優勝とはbPの事だぞ」
「今日のはDioが出場しないレースだ…そんなのが優勝といえるのかな?のぼせあがるな。おまえはDioに買った事さえないだろう。ニコラスなら…あんなヤツよりずっと上だった」
冷えた目をジョニィに向けるジョニィ父。いや、その目はジョニィを見ていないのかもしれない。
「お願いです。かわりを探す時間がない。このブーツを貸してください」
「だめだ!ニコラスの『形見』をおまえが使う資格はない」
「戻しなさい」
ジョニィの抱えていたブーツを引き剥がそうとするジョニィ父。ジョニィともみ合う。
「何なんだ……いったい何なんだ!!父さん」
「いつまでもニコラス…ニコラスって…」「兄さんはもう7年も前に死んだんですよ」
「今日レースに出るのはこのジョナサンです」
「お願いです」「これからぼくのレースを観に来てください…あなたのために勝ちます!」
哀願…と言っていいジョニィの言葉。しかし父には届かない。
「いいからニコラスのブーツを棚に戻すのだ、ジョナサン!」
「い…いやだッ!」「こんなのただの古いブーツだッ!ただの道具にすぎないッ!ぼくはこれをはいて今日のレースに出るッ!」
振り向いてくれない父親についにジョニィが爆発してしまう。
「おまえは自分の兄を侮辱するのかッ!よこせッ」
「く…くそっ!うぜえぞッ!離しやがれッ!!」
グワシャアァン
力が余り父親を突き飛ばしてしまう。しかしその拍子に棚のガラスに突っ込み、その割れたガラスが父親の首を切り裂いてしまう。
少なくは無い血が迸る。
「うああああああ」「神よ…あなたは…連れて行く子供を間違えた……」
……………。
「何だって?…父さん…今…何て……言ったんだ?」
「出て行け…もうおまえとは暮らせない…。この家から……」
決定的な亀裂。
いいよ…
そんな風に言うならいいとも父さん
もう僕は誰の世話も必要としない…
自分ひとりで立派にやってみせる |
白いネズミ。
『ブラックローズの足元を白いネズミが横切った』
あれはどこの白いネズミだったんだ?
本当にいたのか?そう…きっと本当に
兄さんの前を横切ったのだろう |
ぼくが池に沈めなかった……森に逃がした白ネズミ
間違いない あのダニーがやって来たんだ |
本当は兄さんの方じゃあなかった……
連れて行かれるのはぼくの方だったんだ…
ぼくが死ぬべきだったんだ…… |
だからきっと『借りは返せ』と
いつか『宿命』がかわりにぼくに追いついてくる |
少しづつ少しづつ
『宿命』がぼくを気づかないうちにとり囲んで…
ぐるぐると縛ってすぐに逃げられないように… |
最後の最後でぼくを見捨てるんだ…
誰も関心なんか払わない
みんな見捨てる
観にさえも来ない |
『ジョニィらしくない』だって?
ジャイロ……
きみはそう言った
……いいや
これがぼくさ
これがジョニィの進んでいる『道』
今は『白ネズミ』の時と同じ感覚なんだ |
見えない『何か』が静かにぼくをとり囲んで
追いついて来ている
こいつには『爪弾』なんかじゃあ勝てない |
ぼくのスタンド能力なんかじゃあ
こいつには手も足も出ない! |
ジョニィが振り返った自分の半生。思った以上にトラウマが山積である。
そして現在のジョニィ!奇怪な生物に追われている。ジャイロが駆けているヴァルキリーの横にぶら下がり追いかけてくる生物に弾爪を連射する。
生物の一匹に全弾命中、見事バラバラになる…が、後方の一匹がその残骸をジャイロ達に投げつける。
『な、投げた……!!『肉片』を……』
ドバッ
ヴァルキリーに触れたはずなのにジャイロの左足が爆ぜるッ!!
いや、ジョニィの脇腹にも穴がッ!
『あそこにいる!トウモロコシ畑の中を…!走って来ているぞ…!!本体が…!!』
『Dioは自分の『恐竜』を部下としてあいつに貸しているだけだ…この『能力』はあくまであの『謎の敵』のものだ』
『射程は数十メートル……か…』
わざわざ追い掛けて来ているのが射程の短い証拠。しかしSBRにおいては長い方の射程距離である。
『この『恐竜』が触れる部分ではなく物を伝わらせて…伝わり終わった最後の場所を衝撃で破壊する!』
『まるで『音』のように!『音』が伝わるように恐竜が触れた馬の体ではなく……ぼくらの肉体の所で!』
「いや!ヴァルキリーごとやられるぜッ!」
「くそ!ちくしょーヤバイッ!」「たしかその辺に『ホット・パンツ』がいたな!!!」
「『ホット・パンツ』を探してくれッ!ヤツの肉スプレーでこの脚を治さねーと出血がヤバイッ!」
あれ?ゾンビ馬の糸は使わないの(笑)。まぁC・スターターの方が無痛だしより早く治るし、良いことだらけです。
「だめだッ!そんなヒマはないッ!」
「モンスターの数が増えてるぞォォォォー――ッ」
ゾロゾロ沸いてくる恐竜。しかも…
「しかも何だ!?飛んで向かって来るヤツもいるッ!」
「それにまもなくミシシッピー川にぶつかるッ!」
続々とJ&Jを葬る作戦が繰り出される。
「く…くそ!ヤバイな……おい!つまり川の流れは行き止まりと同じって事か…」
『だ…だめだ、追いつかれる……』『追いついてくる…ジャイロにはもう一発も『鉄球』ない…』
『ぼくの『爪弾』はやつらには無力だ…』『囲まれて…とり囲まれて……追いつかれる』
「馬を捨てるぞッ!……馬はひとりで川を泳げるッ!!ここはヴァルキリーから離れるッ!」
ジョニィの無力感を破るジャイロの声。
「飛べッ!飛べッ!!飛び降りるんだジョニィッ!」
「飛べェェェェェェー――――ッ!!」
地面を転がる2人。
「潜れッ!潜れッ!ジョニィッ!泥の中だッ!!」
泥の中に潜んだJ&Jに、地上を走る頭が大判焼きのように平たいウサギ程の大きさの恐竜(以後「ラッシャー」と表記)が殺到する。ザグザグという切り裂く音がする。
続いて空を飛んでいた鳥というよりモモンガに似ている恐竜(以後「フライヤー」と表記)が降り立つ。フライヤーには「メラメラ」という文字が貼り付いている。
すると…
メラメラメラメラ 「つあああああああああああああ」
ジョニィの口の中、舌が燃え出す。のみならずジャイロの右人差し指も発火している。
「ジャ…ジャイロ……。泥の中に潜って『衝撃』を散らすって考えはいいが…様子が違うぞこいつは!!さっきのと違う…」
「今、ぼ…ぼくの『口の中』に…」
メラメラメラメラ 「うあああああああああああああ」
「目ぐぁ……!!」今度は左目に火がつく。「瞼の裏に火がついたッ!」
「こいつは『切る』とか『刺す』というだけじゃあない!『燃える』という衝撃まであるッ!泥の中にいたら!!ジャイロ」
「体の内部から火をつけられるぞッ!」
『これが…これが…あいつのやり方だったんだ……。ぼくらが泥の中に逃げ込むのを計算していたみたいだ…』
『他にも『能力』がさらにあるに違いない…。まるで『音』が…いろいろなものの『音』がすでにぼくらを追いつめている……』
「すでに…もう『すでに』だったんだッ!」
今月のジョニィはダウナーです。
「おいジョニィよォ…さっきからよォ〜〜〜〜てめー――ウザってェぞ………」
「口に出してナメた事をほざいてんじゃあねえぞ!」
咆えるジャイロ。
「オレの『鉄球』はもう一発もねえんだとか自分の『爪弾』じゃあ、こいつらに勝てねえとか『回転』を甘く見てんのかッ!」
「おめーの今までやってた事はまだ『入門編』にすぎねえ!!」
「敬意を払え」
「敬意を払って『回転』のさらなる段階へ進め…『LESSON3』だ(たしか…たぶん)」
そういえばスッカリご無沙汰でしたね、回転のレッスン。というか完全に忘れていたよ(笑)。
ジョニィもビックリのその内容は次回を待てッ!!
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