最後の言葉 3





オレは現在、ティント市まできていた。今まで重い任務についたことなかったので
今回の遠征はちょっと緊張気味だった。でもフッチも一緒なんだし、とにかく頑張る
しかないよな!
(女性は連れていかない、ということだったが、何故かナナミの姉ちゃんがいた。)


 今回はネクロードという女好きの吸血鬼にティント市が襲われて、同盟軍とティン
ト市で手を組んでこのバカ吸血鬼を倒そう、という目論見らしい。ビクトールさんは
特にこいつと因縁があるらしく、いつもと変わらないようにみえて、実は怒りのオー
ラが全身をつつんでいるようで・・。


 えらそうな態度のおっさん(グスタフ)との会見が済み、無事交渉が成立してしば
しこの場に滞在することになった。そして今日の朝、初めてゾンビというものをみ
た。うわ〜、あれって・・元は生きてたんだろ?いっちゃなんだが、気持ち悪い・・。
死んだ後にあんな風に扱われるなんて死んでも死にきれないなあ・・・。フッチも
同じ気持ちだったらしく、少し不快そうな表情だった。そして、エロ吸血鬼に宣戦布告
されて、その場は終わったようだった。






 その夜。オレとフッチは同室をあてがわれたのだが。いつまでたってもフッチが
帰ってこない。ちょっと心配になってきた時、ドアがノックされてすぐフッチがはいってきた。

「どうしたんだよ、フッチ。こんな時間にどこ行ってたんだ?」
「・・・・あのね・・・」

言おうか言わまいか悩んでいる顔つきだ。しかし決心がついたのか口を開く。

「・・・ナオさんとナナミさんが、逃げようとしているんだ・・・」
「・・は?・・・・・逃げる・・ってここから?やっぱゾンビが嫌なのか?」
気持ちはわかる、と思った。

「違う・・・。正確にいうと、この同盟軍から。リーダーという立場から去ろうとしているんだ。」
「・・・・!!」

オレが先日感じた、あの予感はやっぱりあたっていた。そうだよな、ナオだってオレより
年上だとはいってもやっぱまだ子供なんだし、現在ナオの立場はつらすぎる。
運命だとかなんだとか言われたって、やっぱやなもんはやだよなあ。


 さて、そうなると。オレはどうしよう?ナオ達の計画を知ってしまった以上、引き
止めるべきなのか?ロッカクの里から命をうけてこの同盟軍に参加している以上なあ・・・。
ナオに命を預けて戦っている者達が多数いるわけだし、今ナオにいなくなられたら
軍全体の士気が一気に盛り下がって、まあ負けは確実だろう・・・。人の命の為に
も・・ここはナオの感情を犠牲にして・・・引き止めた方がいいのかな・・・。
とりあえず、フッチの意見はどうなのだろう?


「・・・フッチはどうする気だ?」
「・・・僕は・・・二人に手を貸したい」
「・・!!」
「だって・・・僕はナオさんの人柄にひかれてこの同盟軍に参加したんだもの。ブライトと
出会えたのもあの人のおかげでもある。僕は同盟軍に手を貸すんじゃなくて、あくまでも
ナオさんの為に手を貸していたんだ・・。」
「・・・・」

・・・・オレはナオに少し嫉妬を覚えた、が。フッチの決意は堅いようだ。それなら・・・。

「わかった。オレも手を貸すよ。」
「・・!・・え!いいの!?だってサスケは色々と立場があるんじゃ・・」
「立場ってロッカクの里のことか?・・まあ別にいいんだよ。それにおまえだってオレが
手を貸すと思ってこの話したんだろ?」


 ま・・、ホントいうとちょっとやばいかもしんないけど。先のことはそんとき考えよう。
ナオも頑固な所あるから、一度決意したらもう何いってもきかないだろう。
・・それに、やっぱ親友とは戦いたくないよな・・ナナミの姉ちゃんもつらそうだったし。
なんて考えていた時。


フッチが最上の笑みを浮かべてオレに抱きついてきた!オレはその顔にすげえ見惚れ
てしまったわけで・・・。



「サスケ・・・・ありがとう・・・。サスケならわかってくれると思ったんだぁ・・。
たよりになるし、大好き・・。」





オレは一生、このフッチのセリフを忘れられないだろうと思った。



大好き。





 ずっと耳から離れなかった。いつのまにか、オレも手をまわして、フッチのことを
強く抱きしめていた。その時、オレは確信した。



オレはフッチが大好きだ。こいつの為なら、なんだってする。




しばらくオレたちはその体勢のままでいた。・・・・とても心地良かったから。
あの、よくわからなかった感情が、今、バラバラだったパズルが上手くはまっていくように
形になっていく。悔しいけど、シーナの指摘は当たっていたのだ。




・・・オレは、ちょっぴり遅めかもしれない、初恋ってヤツを自覚したのだった。





 ま、その後は二人の逃亡に手を貸すべく静かにここから離れようとしたのだが、
ゾンビに襲われたり、そのせいでナオは倒れちゃうし散々な結果になってしまった。

でもまあ、俺たちには特にお咎めもなかった。




そして。ナオは戻ってきた。もうあいつの瞳には迷いがなかった。

・・決意したんだな。

コイツは最後までここにいる、決着をつける為に。





 ・・・・少しづつ時が進み、ここにきてどれくらいたったのか、オレが一つ年をと
ろうとする頃、先のみえなかった戦いにも終わりがみえてきた・・。