最後の言葉 2
ある日、ナオのお供としてオレとフッチは森の村にきていた。 ナオは最近交易とやらにはまってるらしい。 (それ自体にはまっているのかどうかわからないが。 仲間にしたい交易商から、ある条件をだされたとか・・・) なんにせよ、オレには交易にまで首をつっこむつもりはねえ。 それはフッチも同じ事で、ナオの用事が済むまで、 建物の外の階段に座って待っていた。 「こうなると、当分ナオさんでてこないだろうねえ・・・」
「そうだな、いつものことだもんな・・」 待たされることになれた口調で、特に文句もなくナオの帰りを待っていた。 オレ達は最近こういった時にはよく連れ出される。 とくに命に危険はないというリーダーの判断で、 実践用修行がわりに、というヤツだろう。 ホントに重い任務の時は、さすがにオレ達は待機組だもんな。 何より、オレはこうしてフッチとのんびりしている時間は嫌いではなかった。
むしろ好きだった。(時々性悪魔法使いがいる時もあるが。) 適当な日常会話をかわしていた時。 フッチが大きいあくびをして、思いっきり伸びをした。 「ん〜!・・・僕、昨日あんまり眠れなかったんだよねえ・・・
ブライトが中々寝なくってさ・・寝かしつけるのにすごい苦労して、 気づいたら明け方だったんだ・・・」 なんだか、育児疲れの母親のようなセリフだ。実際彼は城において、
皆からお母さんみたいだねえ、といわれている。 フッチのブライトへの面倒見のよさは子育てを連想させられるのだ。 オレはそれを思い出して、つい微笑をうかべた。 しかしハンフリーさんがお父さんで、そうなるとフッチ君は幼な妻〜!と 騒いでた女の子達を思い出して、ちょっと気分が悪くなった。 なんでフッチがハンフリーさんの妻なんだよ・・・。 「・・?サスケ?どうしたの?」
「・・・え?い、いや、なんでもない!」 「そう?まあいいや。 それより、・・僕に肩かしてくれない?ちょっと寝かせてほしいんだ・・・」 「そんなに眠いのかよ。肩と言わず、膝でもいいぞ。」 オレ的に膝の方はどちらかというと冗談のつもりだったのだが。 「ん〜、だったら膝の方がいいや・・・。おやすみ〜。」 「え?あ・ああ・・・。おやすみ」 フッチはオレの膝を枕にして器用に体を曲げ、眠りについてしまった。
こういう時、こいつはどこまでも自然体なヤツだと思う。 普段は礼儀正しいヤツだけど、こいつの天然の部分は相当興味深い。 「ねえ、サスケ・・」
「お、まだ起きてたのか?」 「僕ね〜、・・サスケと一緒にいるのってすごい居心地いいんだ〜。 膝もちょっと固めだけど・・・気持ちいいよぉ・・」 「・・・それはどうも」 ホントこいつはどこまでも直球なヤツだ。思わず赤面してしまったじゃないか。
オレだったら恥ずかしくてこんなセリフいえねえよ・・・・。でも正直嬉しかった。 そして、オレも同じ気持ちだということをなんとか伝えたかったけど、 上手く口にだせないまま、フッチは本格的な眠りについてしまった・・・。 まあ、いいか・・。こいつだって、今のは寝ぼけていったのかもしれないし。
このまま、寝かしといてやろう。そしてフッチの寝顔を見やる。 幸せそうな顔をして寝ている。少しほっぺたをつついてみた・・。ぷにぷにしている。 コイツ、まつげ長いなあ。顔立ちもある意味女顔。綺麗な顔だと思う。 ・・ってオレ何観察してるんだよ!!どうもシーナにいわれてから、
フッチをヘンな目でみちまっていけねえ。 コイツはあくまでも仲がいいトモダチであって・・・ ・・そう、トモダチでもいい。なんだっていい。こうして、一緒にいれるなら。
この気持ちは嘘じゃない。・・・・・この戦いが終わるまでは、せめて、一緒に。 ・・今、悲しい事実に自分で気づかされてしまった。
そう、戦いが終わるまで・・か・・。 まあ、まだ先の話だもんな・・考えるのはよそう・・。 さすがにオレの足もしびれてきた頃、、やっとナオが戻ってきた。
「ごめーん、お待たせ新記録!!かなり待たせちゃったね〜! お詫びになんかおごるよ〜・・・ってあれ?フッチ寝てるの?」 「そうだよ、昨夜あんまし寝れなかったんだってさ」 「ふ〜ん、そりゃあこんなところまで連れてきちゃって悪いことしたなあ。 それにしてもかわいい寝顔だねえ。ちゅ〜して起こしちゃおうかな。」 ナオは冗談口調でこんなことをいいだした。 オレは思わず必死になってそれを阻んだ。 「ダメだ!そんな起こし方は許さん!!」 「え〜?じゃあサスケがやる? でも、フッチが朝起こしに来てくれるとき、僕いつもおねだりしているよ〜」 ・・・なんだってぇぇ!!!? 「おまえ、それで本当にしてもらってるのか!?」 「それは〜、ヒ・ミ・ツ」 ぶちっときれた音がした。(おれの頭の中で) 「てめえ〜!!!」 はげしい怒りのオーラがオレから立ち込めていたと思う。 その瞬間。ナオが大笑いを始めた。 「あははははははははは!!サスケ、君ってほんとおもしろい!! からかってごめんね!(でも実際ちゅ〜してもらってるけど)」 目に涙をためて笑っている。そんなにおかしいかよ。思わずふてくさってみる。 「ごめんごめん、・・・でも、君達はホントに仲いいよねえ。うらやましいくらい。 僕もまぜてほしいなあ。」 「なんだよ、おまえにだって・・」 といいかけてオレは口をつぐんだ。これは口にしてはいけない、言葉。 ナオの幼馴染に関しては触れてはいけない。 今、彼の親友こそが、この同盟軍の最大の敵なのだから。 ナオはオレの失言してしまったという心中を知ってか知らずか、
一瞬さびしそうな微笑をうかべて、 「・・・・・ほんと、うらやましいなあ・・・」 その一言だけをつぶやいた。 その声色は、オレの気持ちまでも切なくさせるのに十分だった。 ナオは・・・親友と戦うことを、望んでいない・・・。 「・・・あれ?ナオさん、戻ってきてたんですか?って、! あ!僕!ごめんなさい、眠ってしまって!!」 「別に謝んなくたっていいんだよ〜。 いつものお礼に今度は僕のちゅ〜で起こしてあげようと思ったのに。 でもね、そしたらサスケがオレがしたいっていうから、 ゆずってあげるところだったの。」 「え?そうなの?サスケ!」 「!!!!!っ、んなはずねえだろ!!」 フッチが起きたことで話題が転換され、一気に場がギャグモードに変わった。
でもオレはこの時にきいた、ナオの言葉が忘れられなかった。 オレとフッチが、もし敵対するようなことになったら・・・。
そんなの、絶対嫌だ。そして、ナオだって嫌なはずなんだ。 今現在、嫌でたまらないんじゃないのか?こんなことに何故耐えられる? 帰り道は、もうナオの雰囲気はいつも通りだった。しかし、ナオの心中は・・・?
・・・その数日後、まさにオレの予感的中!といった出来事が起きたのだった。
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