最後の言葉 1





・・・・初めの印象は、あいつにとってかなり最悪だったんじゃないかと思う。


「フッチ!!紹介するね〜。こちらが新しく仲間に加わってくれたサスケ君。君より
1歳年下なんだって。」

 同盟軍のリーダー、ナオの言葉にオレと同じくらいの背丈の少年がふりかえる。

彼のその瞳はとっても印象的だった。意思の強そうな、そしてどこか愁いをおびた寂
しげな瞳。そして、その容姿に心奪われた。・・・とてもひきつけられる、その、雰囲気。

 オレはロッカクの里頭領のハンゾウ様の命令により、王国軍に対立する組織、新同
盟軍に参加した。皆の手前、命令で仕方なくって感じをふるまってるけど、本当は外
の世界にでられてすげえ嬉しい。ロッカクの里にいる内は、外部の情報なんてほと
んど入ってこないからな。

 外の世界はとっても新鮮だった。ここは戦場であり、決して遊ぶ場ではないという
ことはもちろんわかっているが、何よりこの城には活気が溢れていて、この環境の変
化を密かに楽しむオレがいた。そんな頃に、自分の年と近いであろうリーダーのナオに、
「彼」を紹介されたのだった。

「これから君達には結構組んでもらう機会が増えると思うんだ〜よろしくやってね」
のんびりとした口調のナオの言葉にうなずいた後、その少年はオレの方をみた。
まっすぐみつめられてドキンとする。

「よろしく、サスケ君。僕、フッチっていいます。」
なんか心臓がばくばくいってるかも・・。なんでこんな緊張してるんだ、オレ?

「・・・・サスケでいいよ。・・・・・おまえ・・・

・・・・・男のクセにケツでかいな。」

一瞬まわりの時間が止まった。皆、無表情になっている。特にいわれた本人は硬直状
態だ。
・・・なんてこといっちまってるんだよ、オレ・・・。(でも実はホントに思ったことでもある)

「なっ・・・・・!!」
フッチが口を開いた。顔を赤くして、怒り気味の表情かも・・・。
「ぶははははは!!サスケもそう思った!!?・・・・って違う!!君はいきなり何
ケンカふっかけてるんだよ!!」
 笑いながらもナオがつっこみをいれる。

「フッチも成長したもんね・・・」
綺麗な顔立ちをした、彼もまた今後組まされるメンバーに入っているという、ルック
という少年が言葉をつなげる。(後にコイツの性格がかなりの曲者だとわかるのだが・・・)

「もう、なんだよ、みんなして!!
・・・・・・紹介は終わりですね?僕戻りますよ!!!」
 フッチはかなり不機嫌さが感じられる口調で叫んだ後、この場を走って去ってしまった。

・・・・・オレって最悪・・・・・。自分の安易な言葉の発言にちょっと自己嫌悪におちいる。

「もう、よろしくねって言った矢先にケンカしないでよ〜」
 ナオが口をとがらせる。
「追い討ちをかけたのは君だろ・・・。」
「だってかわいいんだもん!!それにルックだっていってたじゃないか」

 そして、その光景をみていたトラン解放軍の英雄、ヤヒロが見事に図星をついて
くれたのだった。

「・・・・・それにしても、サスケ君、今のってかなりかわいい照れ隠しだね。」
「そっ・・・そんなんじゃねえよ!!」

彼はニヤリと笑う。・・・・・だからこいつ苦手なんだ・・・。

「とにかく〜サスケはフッチに謝ってきてよ〜」
「・・・・わかったよ・・・」
さすがのオレも自分の非を素直に認めた。今のはオレが悪い・・・。

 ・・・こうしてかなり悪印象を与えた自己紹介は終わったのだった。


 それから一ヶ月。オレ達はかなり仲良くなれたんじゃないかと思う。実際、ナオが
言ったとおり組まされることが多く、ルックのオレ達をも巻き添えにする攻撃に一緒
に文句をいったり、フッチの相棒(になる予定の)ブライトにも無事懐かれ、フッチ
とハンフリーさん不在時には面倒をみたりもした。
 
 最初はかなり礼儀正しいヤツだと思ったけど、意外にやんちゃな部分もあって、
ヤヒロからちょこっとだけきいたことのある信じられなかった3年前のフッチの風貌が
今なら納得できた。

 そして、そんな彼を変えてしまった事件についてもほんのちょっときいたことがあ
る。でもオレはフッチの口から直接きく以外は、深く追求しない方がいい、と思った。

 ・・・・・フッチの傷はまだ癒えてない。結構深いままなのだと思う。フッチが、
それをオレにしゃべることによって却って思い出してしまうのなら、オレは知らなく
ていい。・・・自分を責めないでほしいんだ。

 こんな風にフッチのことを考えるようになっている自分を不思議に思った。ここま
で他人このことを思ったことなんか今までなかった。・・・友達としてこんなに心配
しているんだろうか?
・・・いや違う・・。この感情はもっと・・・。なんか言い表せないかんじだ。
上手く表現・・・・・できないというか。


「なあ〜サスケ〜、かわいい子、いない?」
「・・・あ?ほらあそこら辺にいるんじゃねーの?」
「・・・・色気ねえ返事だなあ、サスケ君は。」

 オレに悪の道(?)を教え込もうとする、悪友シーナとのいつもの会話。この後、
シーナは適当な子をみつけナンパにいくのか、いつもの定番なのだが・・・・今日は違った・・・。

「・・・・サスケは女の子よりもフッチと遊んでたほうがいいんだろ?」

・・・飲んでたジュースをはきそうになった。
「ほら〜図星だ〜」
コイツ、またオレをからかう気か?ったくこいつといい、ルックといい、ヤヒロといい・・。

「・・・とっととナンパにいけ」
「否定はしないんだな。そうだなあ、フッチほんとかわいくなったもんなあ。3年前
はガキってイメージ強かったけど、再会したらこりゃあビックリ!!色気をはなつ、
美少年に成長してましたとさ!!って感じだもんなあ。」

悪かったなあ、オレは3年前のフッチをみたことねえんだよ。

・・・ん?・・・・ちょっと待てよ?オレは今更ながら、シーナの発言につっこみをいれた。

「・・・オマエはオレがフッチのこと、女をみるように・・惚れてるみたいだっていいたいのか?」
「そうじゃないの?」

シーナの表情は何を今更といった感じのものだった。

・・・・・・その瞬間、オレはおもいっきりシーナをけとばした。
「いって〜!!!何するんだよ!確信つかれたからってやつあたりすんなよな!!」
「うっせえ!!とっととナンパでもいってこい!!」
「おまえなあ、年上にむかってそんな口調で・・・・、・・ま、いいか。悩め悩め、
少年よ。自覚してなかったんなら、今のがいい目覚めになっただろ」

しりもちをついて汚れた部分を手ではたきながら、ニヤリと笑って意味深なセリフを
はくと、人の気持ちをこんなにかきまぜておきながら無責任シーナはナンパしにいっ
てしまった。

・・・・・惚れてる?・・・オレがフッチ・・・・に・・・?
あの言い表すことのできなかった感情が、今形になって表れたような気がした。
でも・・・・・まさか・・な・・。

 その瞬間から何かが、こう、心のどこかが・・・変わったような気がした。なんか
あのわからなかった感情が、少しづつ形にになっていくような・・。