最後の言葉 0




「レオナさ〜ん、私すっごいのみてきちゃった。なんかとっても感動的だった わ。」

昼間でもレオナの酒場はかなり混雑していた。全てが終わり、戦いというしがらみか
ら解き放たれた者たちの笑顔でいっそう活気がみなぎっている。そこに、好奇心いっ
ぱいという年頃の元気な少女がかけこんできた。レオナがその声に、優しい微笑をう
かべて答える。

「あの子達のお別れシーンだろう?かなりの騒ぎになってたから、私も店から顔出し
てちょっと覗いたよ。なんとか収集ついたようだねえ。」

「うん、もうフッチ君行っちゃったわ。でもね、最初出て行った時よりも、かなりす
がすがしい顔してた。」

 興奮しながらも、うっとりとした眼差しをうかべ、少女は満足そうに答えた。

「あの年頃はほんと気難しいねえ。みんなニナちゃんくらい素直だったら、あんな遠
まわしになんないですんだろうに。」

 まあ、この子はストレートすぎるところがあるか、と内心苦笑した。

「・・・なんか良かったなあ。ああいうのって、なんていうかしら?友情っていうか
・・?もっとせつない感じだった。でも幸せそうだった。」

 少女は、自分の体験したことのない未知なる感情に胸をふくらませる。

「・・・そうだねえ、・・・・あれは愛っていうにはまだ幼いけど、・・恋っていう
にはちょっと深すぎる感情ってとこかねえ・・。」

人生経験の豊富そうな、彼女ならではの興味深い分析に、少女は少し考え込む。

「・・・・・なんか難しいなあ。私なら一発ストレート、あんなもどかしいことしな
くたって最初っから愛で責めるのに!!」

「あんたにはそれが似合ってるよ。でもねえ、みてて可愛かったよ、あの子達は。」

「ほんと。でもとってももどかしかったわ・・。

・・・・今度彼らが再会できるのはいつ頃になるんだろ・・・?私、影ながら応援し
ちゃう!!!」

 活気で溢れかえっている城内。そしてその皆の心を表すかのように、上空は晴々し
く澄んだ青空が広がっていた。そのさわやかな気候にあわせ、戦いが終わったこの城
内から次なる目的地を目指して旅立つ者たちが少しづつ現れ始めていた。その中の一
人として、元竜騎士の少年も本日旅立っていったという。派手なお別れシーンを皆に
披露して・・。