指導方法について

    4〜10歳の子供がフルートを学ぶ必要がどこにあるのか?というご意見もあります。
    確かに必要はありません。もう少し大きくなってから学びはじめてもすぐに追いつきます。
    しかし、本人が興味を持ち、楽器に触れることで楽しく音楽を学ぶのであれば、
    その楽器がフルートであってはいけない理由も無いはずです。
    子供の感性や体力でもフルートを通じて音を楽しむ方法は工夫できると思うのです。
    私なりのアイディアを記します。

    ふえあそび

    レッスン前の導入、集中力が切れたときなどにひょいと使うと効果的です。
    それぞれにねらいはありますが 気付かれない方が楽しいです。

    ♪ビンをならす
    *歌口を上に向けるイメージをつけてあげられる
    *フルートは小難しいものではなく あそべるものだと思わせてあげたい

    ♪ふくろうさん
    マウスピースのみで鳴らしながら 角度を上げ下げして音程を変える 「ほーほー」という感じ
    *最初全く音が出ないときなど、鳴り場所を探させるのに有効
    *吹き方次第で音色も音程も変わる楽器だというイメージづけができる

    ♪おばけやしき
    マウスピースのみで鳴らしながら 中に指をつっこんで揺らしながら出し入れする
    *すぐに息圧が下がって音が減衰してしまう場合に使う
     まっすぐのばす気になってもらうのがねらい

    ♪やまびこさん
    教師がマウスピースのみで適当なリズムをつけた簡単なフレーズを吹き 生徒にまねをさせる
    *タンギングとリズムの練習
    *マウスピースの出口を塞いだり、倍音を使ったりすると色々おもしろいことが出来る
    *楽器を使えば聞き取りが加わるのでより高度なことが色々出来る

    ♪アドリブごっこ
    やまびこさんと同じ要領で 反対に決して同じ事をしてはいけない
    *リズムボックスをつけるとなかなかかっこよいので楽しい♪

    ♪しんごう
    シッソ・・シッソ・・
    *スタッカートのイメージトレーニング
     「はねて」「みじかく」などと言葉で説明するよりイメージから入る方がうまくいく

    ♪もりのこやぎ
    ソーミ のスラー 「めぇ」と横で歌ってあげる
    *スラーのイメージづけ なぜスラーをするのか意味がわかれば やってみたいと思いやすい

    ♪ねえ・・・
    ソファー のスラー
    奏者にはソーとのばさせておき 指導者がFのキィをおさえる
    「ねえ」と一緒に言ってあげる
    *音の変わり目でどうしてもタンギングしてしまい スラーできない時の方法
    *上記の方法でうまくいったら 奏者の右手人差し指に 指導者の指を重ねて 同じように行う
    (ソーとのばさせておき 指導者がFのキィをおさえる)
    *もちろん他の音でもOK

    ♪きゅーきゅーしゃ
    シーソーシーソ のスラー
    *スラーの練習 できるだけ長くのばそうという気になってもらえる
    *ついでにだんだんかぶせるとドップラー効果が出せる(音程がだんだん下がる)のでウケる

    ♪あわおどり
    ラー♭シラーソ(プリチアルディキーをつかう) のスラー
    *きゅーきゅーしゃの上級編 かなりスラーが続けられないとむつかしい

    おすすめ教材

    お子さんに向く導入用教材を長年探し、工夫もしてきましたが、
    学校教育用のリコーダーの教材が大変適していると発見しました。
    ・単音の練習から始まり、少しずつ音が増えていきます。
    ・模範演奏と伴奏の収録されたCD(2500円程度)が販売されています。
    ・テキストは350円(税別)と安価です。
    ただし、リコーダーは実音よりオクターブ低く記譜しますので、
    中音域から学び始める場合は書き換えが必要です。
    リコーダーメーカーのアウロスの出版社 トヤマ出版から多数出版されています。
    特におすすめは以下です。

     ●どうぶつのもり(小3〜4年用)/トヤマ出版
      とても可愛い曲調で、挿し絵も入った微笑ましいテキストです。

    笛星人(小3〜4年用)/トヤマ出版
      ユーモアのある楽しい曲がいっぱいです。ハーモニー的にも美しく良く出来ています。

    導入に続いては以下の教則本が優れていると思います。
    小学生なら最初からこの教則本でも良いのですが、低音域から始まるため、うまく進められない例もあります。子供は息の絶対量が足りないので、低音域は弱々しい響きになってしまいます。
    コツさえつかめば中音域の方が楽な子供が多いようです。

    トレバー・ワイ著 初級用フルート教本/音楽之友社

    ゾルタン・イェーナイ著 フルート練習教本/アルソ出版

    その他おぼえがき

    ●私もU字管を吹いています

    私は頸椎を痛めた折りにU字管を購入しました。ちょうど良いのでU管の指導をする時は自分も
    U管を吹いています。支持のバランス等の微妙なちがいが理解できるので指導に生きます。

    ●必ず伴奏をつける

    フルートは単旋律楽器です。せっかく幼少から西洋音楽に触れるのに、基本要素であるハーモニーに親しめないのは大変残念ですから、必ず二重奏や伴奏付きで練習させてあげます。
    専用のMDにカラオケを録音して渡し、ご家庭での練習でも合わせていただきます。
    ご家族が楽器をなされば伴奏をお願いすることもできます。

     ●わかることばで 具体的に

    幼稚園児の場合まだ字が読めない場合もあるわけです。
    抽象概念は理解できませんから、例えば「背が高い」が理解できても「高い音」という言葉が分かりません。
    「ここを部分練習してきてね・・・」では通じませんから「ここは まいにち 5かいふこうか」 という風に 具体的に。
    それから「ゆっくり話す」「言葉数を少なく」も心がけています。

    ◎ 息のスピードを上げたいとき=あついスープを フーフー してさましてみて
    ◎ 息のスピードを下げたいとき=さむーいときに おててを ハーハー あっためるでしょ?
    ◎ アムブシュアに厚みを出したいとき=○○ちゃんのおくち ちっちゃくちっちゃくちぢめてみて
    ◎ 息に弾みをつけたいとき=ケーキのローソクを フッ!って消してみて(ほんとにやってみるのもいい。)

    ●短い課題を次々に

    幼稚園児なら、興味が5分持てば上等です。
    リトミック、音当て、等を混ぜて気分を変えながら興味を引き留めます。

    ●その子が興味を持てることを手がかりにする

    好きな遊びや他に習っているお稽古ごとなどは必ずチェックします。

    ◎「この紙飛行機が床に落ちるのと、××くんの音が消えるのと、早い方の負けやで。」
    ◎「レーシングゲームとおんなじやん。ヘアピンカーブに来てしもてからあわててハンドルきってもまにあわへんやろ。次に曲がどうなるのか考えて吹かんとあかんわ。」
    ◎「生クリーム、すーっときれいに出すのむつかしかったやろ。うっかりギュッてやったらボテッてなるし、でも、へにょってなったら切れちゃうし。音のばすんもいっしょやねん。口から出てくる息ですーっと線が書きたいねん。」
    ◎英語習ってるのかあ。ほなタンギングはTの発音と同じやんなあ。

    ●支持の仕方

    U字管の場合、支持のバランスがちがいます。
    とくに足部管のない幼児用モデルでは左手に重みがかかります。
    主に左手人差し指の付け根で下から上へ持ち上げる形で支えることになるので、
    その状態で、左手の運指が楽に出来る持ち方を工夫しないといけません。

    右手の親指と小指で梃子状に楽器を支えている子ってけっこういます。
    これ、痛いのよね。長く持てない原因の筆頭ではないかしら。
    急いで直したいときは、ちょっと乱暴ですが足管部をはずして持たせます。

    ●タンギング

    専門用語を使うときは必ずわかることばで解説して使っうようにしています。
    ◎牛タン食べたことある?タンてべろのことなん知ってた?だからタンギングは「べろ動かし」やけど、ちょっとかっこわるいやろ。タンギングって言うしおぼえてな。

    タンギングがあやふやになってしまう時のネタです。
    まず、有り無しを聞き分けてもらいます。私が吹いて聴かせてあてっこするのです。
    始めはわざと分かりやすく吹き分けて、当てやすくします。
    徐々にきれいなタンギングにしますが、結構ちゃんと当てられる子が多いです。
    うまく当てられるようなら、今度は生徒に吹かせて私が当てます。
    なぜタンギングするのか、音の違いを感じてもらうと身に付きやすいと思うのです。

    ●楽譜の読み方

    大人でもありますが、子供はたいてい楽譜が進むに従って顔が下に向きます。
    目だけを別に動かすと言うことにまだ慣れていないようです。
    おめめの体操ゲームと称して「お顔を動かしたら負けやで」とお顔の前で指をあちこちに動かして「こっち見て!こんどはこっち!」とテストしてみるとどれくらいのことが出来るか分かります。
    楽譜立ての高さ、楽譜1ページの縦の長さに注意して、後は根気よく指摘してあげます。

    ●体調に気を配る

    練習していてどこか特に疲れるところ、痛いところ等がないか、常にチェックしています。
    常に成長していますから、楽譜立ての高さや、楽器の支持の仕方、などもまめにチェックしてあげないとずれてしまいます。

    ●鑑賞をさせてあげる

    フルートのCDを貸して、感想を宿題にします。
    漠然とした感想ではなく、例えば「はじめてのかなしみ」と「やさしい花」の録音を渡して
    どちらがどの名前か当てさせるなどの遊びにします。
    同じ曲を色々な演奏家が演奏しているものを聴き比べさせたら、
    結構ぴたりと演奏者をあてる子がいたりして子供の力には驚かされます。

    ●お行儀のこと

    私が子供の頃はピアノの先生にいろんな礼儀作法を習った気がします。
    くつは揃えて脱ぐこと。レッスンの最初と最後のご挨拶の仕方。
    順番を待っているときの座る姿勢。言葉使い。手を洗ってからお稽古に来ること。
    月謝袋は先生の方に向けて両手で差し出す。お札は新券できっちり入れておく・・・etc
    時代も違うのかも知れませんが、友人のピアノ教師は生徒の礼儀には責任を感じると言います。
    よそでその子が不作法な振る舞いをしたら、ピアノ教師も笑われるのだと。
    私は礼儀についてそこまで責任を持って指導できる自信はありませんが、
    ゆずれない最低限は持っています。

    ◎楽器を椅子に置かない。床に置かない、またぐなんてもってのほか!
    ◎物を食べた後の汚れが口の回りに着いたままで吹かない

<はじめにもどる   次へすすむ>