|
ヒロイン
方やデスクワークが大キライな体育系。方やお嬢様なんだけど好奇心旺盛な
考古学オタク。どちらも宮殿で少しもじっとしていない‘戦うお姫様’&ゴキブリ
並みの生命力を持つ女神様達である。
ユーリは自ら剣を取り、馬を駆り、戦場に赴いてカイルの軍事上のパートナー
となる。いずれ日本に還る自分が、カイルのために出来る事は‘戦いの女神
イシュタル’であり続ける事と、決意したためである。おかげでユーリは後に、
ベットから政治,戦場に至るまで、あらゆる場面のパートナーとなるのだ。(身が
もたんぞ〜。)結ばれてから後の正妃&側室候補事件で、カイルに必要な‘やす
らぎ’を自分だけが与えられるのだ、と確信、それが高貴な身分ではない自分
が皇帝の側にいる気持ちのよりどころとなる。
とにかく彼女はモテる。
カイルをはじめ、弟皇子のザナンザ、ミタンニ国王太子マッティワザ(これはちょ
っと違うか)、ラムセス、そして無償の愛を捧げる部下ルサファ。オプションで
(?)アルザワ王女アレクサンドラ。カイルと結ばれる以前にアブなかった事3回
(実は4回・・カイルも未遂)!キャロルにはちっとも負けてはいない。
ユーリは15歳でヒッタイトに連れ込まれ(なんかヘンな言い方!)、現在18歳
か。第一子を流産しているが、この先4人(以上?)の子持ちになる事がわかっ
ている。歳はとっても容姿が変わらないとか・・・秘訣はなんだろ?
‘流産’のエピソードで、どうしても「王家」のお話とかぶってしまうのだが・・・物
語の成り行き上、不可欠だったのか。どっちにしてもヒーローのライバル達が、
これでオトコを上げている事だし。(イズミル君はこれしかないじゃんか。)
キャロルは・・・永遠の16歳というウワサが。第一子を流産して以来、まだ妊娠
の気配は無い。キャロルは自らが戦いの原因になってしまうが、知恵で運を切
り開いて行く。環境・物の考え方に順応していくユーリに対し、キャロルは信念を
曲げない。キャロルの方が‘甘い’という見方もある。それはキャロルが育った宗
教環境のせいであり、クリスマスでさわぎ初詣も行っちゃう日本人に、どうのこう
の言えないだろう。
日本にいっさい帰れないユーリと違い、キャロルは何度も現在と行き来をし、
兄ライアンともテレパシーでつながっている模様。現代も含めて、また次はどこ
を放浪するのだろう、それよかはやく子供を産んだほうが・・と、つくづく読者に余
計な心配をさせるヒロインだ。
|
|
|
ヒーロー
「いずれわたしは帝位に就く
だからわたしはわたしの正妃になる者にきびしい要求をするだろう
人の上に立つ器量 自戒心 自制心 その他にも多くのことを・・・
そのかわりわたしは側室は持たぬ 生涯その正妃ひとりを愛しぬこう」
これはカイル・ムルシリの‘皇妃(タワナアンナ)’に対する理想。
カイルは自分が愛した少女の中に、その資質がある事を見いだしてゆく。が、
その理想以前に相当な身分が無いユーリは、「自分には資格が無い。自分が
カイルの側に居続けるためには、‘戦いの女神’である事しかないのだ」と思い
詰めてしまう。カイルはカイルで、ユーリに「還らないでずっと側にいてほしい」と
言えない。相手を思いやりすぎて煮え切らないカイルのために、物語の前半は
読者はイライラの連続なのである。
カイルの理想は、この時代の為政者として(現代でも)、やはり無理がないか。
そんな条件を満たす女性なんて・・・・男性だってそういるものじゃない。その
唯一無二のユーリが行方不明になった事が原因で、カイルは一時壊れてしま
うのだ。ある意味、カイルはユーリに甘えていたのだろう。
方やメンフィスは正妃に対するこだわりは無く、早いうちからキャロルを正妃にす
ると決心する。キャロル以外娶らないのは、キャロルが自分のために命を懸けた
事&また浮気を誤解されて現代に還られると困るからと言えよう。
私が一番かっこいいと思うメンフィスは、バビロニア編の後、キャロルが現代に
還ってしまったあたりからである。キャロルと出会って、自分の弱さ 、嫉妬心な
どを知ったメンフィスは、人間として急成長をとげる。そして、キャロルの不在に
起こった戦いをみごとに切り抜けてゆく。流産したキャロルに対する態度、もう
かっこよすぎ!!!なのだ。
|
|
|
敵役
ユーリはカイルの義母であるナキア皇后によって、ヒッタイトに連れてこられた。
‘水を操る神官’で、魔力で人心を操り、人を殺める力を持つ。彼女により死に
追いやられた者は大勢。目的はひとつ、バビロニアの王女である自分の血を
皇統に残す、第5皇子ジュダを皇位に就ける事。ユーリの命を執拗にねらい、
しまいには、国家秘密をエジプトに流す売国行為までする。売られるようにヒッ
タイト皇帝の側室になったという屈辱が、これほど大きなエネルギーとなるもの
だろうか。
彼女を補佐し、手を血で汚していくのが神官ウルヒ・シャルマ。ナキアが唯一人
心を許した相手であり、ウルヒもナキアの為に死をいとわない。ひょっとして皇子
ジュダは彼らの間の子か、とも思われたが、どうやら彼らは完全なプラトニック
な間柄のようだ。彼らの絆がどのようなものかは、これから証されていくらしい。
方やアイシスお姉さま。彼女がキャロルに対し魔術を使えたのは、古代エジプト
のキャロルを引きずりこんだ事だけ。(もっともその時はアイシスは‘魔物’だっ
たワケで。)思えば「王家」の方が完全フイクションなのに、‘魔術’のたぐいは
あまり出てこない。怪奇現象もキャロルが解き明かしてしまう。キルケーの魔法
も幻覚剤頼りだし、カプター大神官の祈りのききめもなさそうだし・・。あまりにも
多用されるナキアの魔術には、「またかよ〜」という印象がついてくる。
メンフィスを愛するあまりのアイシスの行動に同情する読者は多いが、ナキア
に感情移入する人は少ないようだ。みごとな悪女っぷり、という事になるのだろ
うが、ナキアが人気を得る可能性は、今後まだチャンスはありそう。
(26巻で、バビロニアから‘売られてきた妃’ナキアと、北から売られてきた
‘宦官’ウルヒの絆が語られる。ウルヒの死後、ナキアはひとりで暴れまくるも、
27巻で自爆。幽閉となる。2002 5.6加筆)
|
|
|
ヒーローのライバル
オッドアイでキンパツ、ちょいとイカれた男、ウセル・ラムセス。今は将軍職だ
が、彼は将来エジプト新王国時代第19王朝の祖、ラムセス一世となる。(大
王ラムセス二世は彼の孫にあたる。)ザナンザ皇子暗殺事件の折に、ユーリを
助けたのが出会い。ザナンザを殺したのはヒッタイト兵だと知らせる事で開戦
を防いだユーリを見て、「夜の伽をするための女ではなく、王の隣に立つ女」と
直感。以来ユーリを奪取するための機会をねらう。イタす直前までいって果た
せなかった事二回だが、ユーリのヌードはしっかと鑑賞している。
流産したユーリをエジプトに連れて行ったあたりから、彼の行動はかっこよすぎ
て、カイルもかすませるほど。ユーリを流産のショックから立ち直らせるわ、スパ
イ事件を一緒に調査してくれるわ、あげくのはては、売国行為をしているナキア・
ネフェルティティ両皇太后の追い落としのために、カイルと手を組む事を約束して
くれるわ・・・。ラムセスの気持ちを十分知っているユーリは、彼女が原因で皇太
后に捕らえられたラムセスを助けるために、エジプト国内で内乱まで引き起こす
のだ。(おかげで皇太后同士が通じている物証をつかめたのだけど。)
そんなワケで、カイルとラムセス二人の相手に対する敵愾心は並大抵でない。
ユーリ帰国後のヒッタイト対エジプトの決戦のさなか、「あのオトコにだけは負け
たくない!」と、自分の立場を放り投げて二人で決闘しちゃうのだ。しかも真っ裸
になって!!・・結果は仲良く痛み分けでだったけどね。
そんなこんなで彼らの別れは、実にすがすがしい、まるで青春ドラマなのだ。
「王家」ファンに‘メンフィス派’と‘イズミル派’があるように、こちらにも‘カイル
派’と‘ラムセス’派がある。じゃ、私はどちらかと言われれば、迷わず‘ラムセ
ス派’と答えよう。
対するイズミル君、まじめすぎるのかも知れないが、やっぱりイタい気がする。
「天にも地にも愛するのは・・・」のセリフはかっこいいが、カイルのセリフとは、
重みが違いすぎないか。(相手がどう思っているか意に介さない点では同じか)
自国のためにするべき事がナイルの姫の奪取とは・・・。せめて側室を取って子
供を作る安全策を取った方がいいのでは、と、余計な心配をしてしまう。
一番悲しいのは、キャロルに気持ちが通じていない事。次点は、メンフィスにお
そらく‘ライバル’と認めてもらっていない事ではないか。為政者としての資質が
彼にあるかも未知数だ。(少なくともメンフィスやラムセスにはある。)
イズミル君よ、今からだって遅くはない!(まだ完結していない!)母上のアドバ
イスをよく聞いて、‘オトコらしく(あまり好きな言葉ではないが)’行動してくれ。
|
|
|
「人は石垣」の宰相
イル・バーニはカイル・ムルシリの乳兄弟であり、幼少から一緒に育ってきた気
心知れた仲である。当然カイルの理想、夢は自分の理想であり、夢なのだ。常
に冷静に的確に判断し、カイルを補佐する。現在はまだ書記官だが、将来の元
老院議長候補である。
最初カイルがユーリを側室にした事は反対だったが、ユーリの資質を見抜くや、
ユーリの帰還を阻止したり、なかなかユーリに手を付けないカイルをけしかけた
りもする。カイルのユーリに対する恋心を本人よりも先に見抜いたのもこの人。
理想の実現のための、現実的な判断ができるすぐれた政治家である。イルの、
しれっとしたしゃべくりがなかなか読んでいて楽しい。彼のベスト・オブ・セリフは
「剣を持つだけが戦いではない 私たちには私たちの戦場があるのです」だな。
イル・バーニとイムホテップの共通点はもとは外国人だろうという事(確証は無い
がたぶん)。イル・バーニはアッシリアからの移民の子孫。イムホテップのモデ
ル(ハムナプトラじゃありません)古王国時代の最初のピラミッドを設計した宰相
イムホテップはメソポタミアからの移民だし。
日本では考えられないが、外国ではよくあるようだ。外国人の政治家の方が、
かえって冷静に、客観的に政治的判断ができるのだろう。
イムホテップは、まだ十代で即位した少年王メンフィスにとって、いくら彼が為政
者として天才的だとて、欠かす事のできない人物である。イル・バーニも歳を取
れば、デイル・ムルシリ(カイルとユーリの間の第一皇子)に対してイムホテップ
のような存在となるだろう。(「詮議せねば」と言ってすぐ忘れてしまう、なんて事
は無いように。)
|
|
|
「人は石垣」の家臣’S
ハディ・リュイ・シャラの三姉妹は、ウルヒの策謀でユーリの殺害を謀ったのだ
が、処罰としてユーリの女官となる。ユーリに惚れ込み、彼女のためならたとえ
火の中水の中、ボディガードとしても最強の女官である。カイルの従者キックリ
3隊長のミッタンナムア,カッシュ,ルサファたちもしかり。彼らの恋愛模様も、な
かなか楽しませて、&泣かせてくれる。特にユーリを助けるために、皇帝暗殺
の無実の罪で処刑されたウルスラ(カッシュの婚約者)の悲劇は涙なくしては
語れない。
(ユーリへの許されざる恋心を抱いたルサファは、27巻で彼女をかばい、
‘望み通り’殉職。2002 5.6加筆)
ミヌーエ、ウナスもメンフィスへの忠誠は負けてはいない。しかし、キャロルが
誤解から現代の戻ってしまったところで、ウナスがメンフィスにお手討ち覚悟で
意見したのはすごいかも。
ミヌーエの母ナフテラ女官長は、キャロルにとって‘ママ’。キャロルが古代に
留まる決心をするのに、彼女の存在も大きかったと思う。
ティティは近頃はじけすぎで読者の不興を買っているが、彼女のミノア編での
働き、すごかった。ティティがいなければ、キャロルはとっくにイズミルのものに
なっていた。(それで彼女はイズミルファンの恨みを買っているのだ・・・^^;)
|
|
|
ラブシーン
ひょっとしてこれを一番書きたかったのか?(おいおい)
何も知らずに読んだら、「天河」はレディースコミックかと思うかもしれない。だが
この作品は少女コミック連載、れっきとした少女マンガだ。もう、彼らの夫婦生活
(いや、まだ正式ではないけど)つつみ隠さず描かれている。ユーリが「この地に
残る」と決心するまでの二年間、寝所を共にしているのにずう〜っと我慢してき
たカイルは、‘初めて’というのに、寝所に四日間引きこもりっぱなしをやっての
けたのである。カイルのベスト・オブ・スケベセリフは、ユーリがエジプトのラム
セスのもとから帰還した時の「おまえの身体にはわたしの知らないクセはつい
ていない わたしが教えたとおりに反応する」で決まりでしょう。
(私にはこのセリフの裏の、「ユーリがラムセスに抱かれていても仕方ない。何
より無事で帰ってほしい。」と願っていた事の方が、私の中のカイルの点数UP
になっています。)
エジプト夫婦はなかなかお行儀のよい夫婦生活を送っているらしい。朝は必ず
服を着たままお目覚めになっている。暗殺者が頻繁に入り込む開けっぴろげな
宮殿にお住まいなので、イザという時のために、‘そのあと’は服を着込んでいる
というウワサも。しょっちゅう不在の奥様、はたして結婚して以来、一緒にベット
を共にしたのは何回なんだろ?
|
|
|
おまけ動物対決
「戦うお姫様」の必須アイテムとして、軍馬と鷹がいる。軍馬アスランは敵に追
われて偶然飛び乗ったのが縁で献上された。じゃじゃ馬と暴れ馬同士で気が
合うのだろう。頼りになる馬だが、なかなか表情豊かだったりする。鷹のシム
シェックはヒナからユーリが育て、訓練したものだ。ウガリット開城の際、毒ヘビ
狩りでお手柄を立てている。
キャロルの猫は婚儀を前にしてメンフィスがキャロルのためにつかまえてきたも
の。しかし、猫ちゃんの出番は二回で終わり。(この後すぐ飼い主が行方不明に
なっちゃうし。)名前も付けられずに消えてしまった。
鴨狩りの際メンフィスがキャロルに与えたヒナも、それきり出てこない。
最近、傷ついていてキャロルに助けられたフェネック(砂漠キツネ)が登場。これ
までの動物が描かれた記録を塗り替えている。流産で無くした子供の代わりに
なっているのだろうか。それにしてもひょっとしてこの子ギツネちゃん、キャロル
にとって重要な働きをするんだろうか。キツネの恩返しってあるかな?
|
|