無責任
「王家の紋章」の結末はこうなる?!



ネバメン騒動は名奉行・・じゃなかった、宰相イムヘホップの‘大岡裁き’にて一件落着。
3つどもえ4つどもえの諸国の不穏な動きも一時休止。
王妃キャロルがめでたく男子を出産したところから始まって・・・すぐ終わる?!



アイシス
メンフィス
アイシス
キャロル
メンフィス
愛するメンフィス、そなたは私のもの・・・
わあー!姉上、何を・・・す・・る・・おのれえ・・・
これでメンフィスは永遠に私の・・も・の・・・誰にも・わたさ・・ない・・
キャー!!何と言う事!!メンフィス、しっかりして、死なないで、私を一人にしないで!
キャロル・・我らの子を・・エジプトをた・の・・む・・



王子の誕生に沸くテーベの宮殿に、嫉妬に狂って乗り込んで来たアイシスによって、メンフィスは愛妻と嫡男を残して死ぬ。
狂ったアイシスもメンフィスの剣によって命を落とす。
幸福の絶頂から突き落とされ、呆然とするキャロル。メンフィスを守る事が出来なかったと、自分を責め、泣く事もできないでいる。
夫の葬儀のすべての儀式が終わろうとしている。


キャロル
イズミル
カプター

ああ、棺に花を捧げたのは、この私だったのだ。あなたを守りたかったのに・・。
ナイルの姫よ・・(何でお前がここにいる!!講和状態で葬儀に列席している、て事で。)
アイシス様はあのような亡くなり方をなさいましたので、死後の王の世界を乱すやも
しれませぬ。アイシス様の魂から王を守るために、この呪術版を置きまする。



メンフィスの墓は封印され、すべての儀式は終わる。まわりに指示されるままに、葬儀のためのむなしい日々を過ごして来た
キャロルは、ふと大切な事を思い出す。
20世紀にアイシスがよみがえった事を。
あの女はメンフィスを求めている!そして父を、多くの人を殺したのは!!


キャロル




なぜアイシスがよみがえったの?!
あ、呪術版!!あの時私が割ってしまった呪術版のせい?
彼女の魂は、20世紀にまださまよっているのかしら・・・・ライアン兄さん!!
もしメンフィスの遺体が見つかったとしたら・・・今度は兄さんがねらわれるかもしれない。
20世紀に戻らなくては!・・・でも、どうやって?!



その時、キャロルはライアンの叫びを聴く。はじかれたように神殿の中に走っていくキャロル。後を追うイズミル,ルカ,ウナス
(ワラワラ)
キャロルは神殿の奥にある神剣(どんなモノだ?!)をつかむ。と同時に4人は闇に呑み込まれる。


**********


ここは20世紀、ブラウン教授の研究室。盗まれたミイラが戻ってきたという知らせにやって来たライアン,ブラウン教授,ジミー。
その目の前に、無惨な助手の死体がころがっている。そして血に汚れた手でアイシスが立っている。





ライアン
アイシス

ライアン

アイシス
キャロル
イズミル
ウナス
ルカ
キャロル




アイシス
キャロル
イズミル
アイシス



ア、アイシス、これはお前が・・・なぜだ!!
ホホホ・・・私の愛するメンフィス・・誰にも渡さぬ!!
お前達はすべて私の呪いを受けて死ぬのだ!!
くっ!お前こそ!(銃を取り、アイシスを撃つが、アイシスは倒れない。不敵に笑うのみ。)
何!どういう事だ?!
ホホホ・・・呪術版が割れたのだ!!誰にもじゃまされぬわ!
お待ちなさい!!(セラムンうさぎちゃん風に)ほろびるのはあなたよ!
なんだ、ここは!!いったいどうしたというんだ?!
ア、アイシス様、なぜ亡くなったアイシス様がここにおられるのだ?!
気を付けろ!あれはこの世のものではない!!
な・なんであなた達までいるのよ?!まあどうでもいいわ。
あれはアイシスの盲執が生み出した化け物よ!!
アイシス!!我が夫メンフィスを殺し、ミタムン王女を殺し・・私のパパを殺したのもあなたね。
かわいそうな人とも思ったけど、許さない!!
あなたには多くの人の命を奪った罪、つぐなってもらうわ!!
目障りな女、お前さえいなければメンフィスと幸せになれたのに・・・
違うわ!あなたのように自分勝手な人に、メンフィスを幸せにする事は出来ない!!
やはりミタムンを殺したのはお前か、それでは私にとっても敵と言う事だな!
メンフィスを私から奪う者はすべて死ぬのだあ!                                                                                                                                                                         


キャロルは剣を構えるが、アイシスにはね返される。イズミル,ルカ,ウナスがキャロルを取り囲む。
アイシスがおおいかぶさって来るが、イズミル、キャロルの剣を持つ手を握り、体を支える。二人が持つ剣はアイシスを貫く。


アイシス

ぎゃー!わ、私がほろびるというのか、私の美しい体が・・・メンフィスといたいだけなのに・・・
アムドゥアトの神よ、力を・・・いや・・じゃ・・・



アイシスの体はもとのミイラと化す。キャロル、ライアンのライターで火をつける。たちまち燃え上がり、
やがて灰となって散る。(>おい、火事になるじゃないか!)
キャロル、力が抜けたように座り込んでいたが、やがて静かに立ち上がろうとする。イズミル、手を貸す。
メンフィスの棺に歩み寄り、横たわるミイラをいとしそうにふれる。
そばにあったハサミを手に取り、自分の髪の一房を切り取り、ミイラのそばに置く。
沈黙を破るように、ライアンが言葉を絞り出す。


ライアン
ジミー
キャロル

ブラウン
ジミー
キャロル

ライアン
ブラウン
ジミー
キャロル

ライアン

キャロル
ブラウン
イズミル
キャロル


キャロル、キャロルなのか・・・
キャロル、今までいったいどこにいたんだ!その格好は?その人たちは誰?!
(ライアン,ジミー,ブラウン教授を静かに見渡して)ライアン兄さん、ジミー、教授、
心配かけました。私は3000年前の古代エジプトにいたのです。
なんと!!
どういう事だい?タイムスリップしていたとでも言うのかい?!
そうです。彼らは・・・・ヒッタイトの王子イズミル、そしてルカとウナス・・・
そして、このミイラは私の夫だった人、エジプト王メンフィス。
キャロル、とっても信じられない・・・・
キャロル、古代エジプトはどうだったい?我々の研究の通りか?(>おいおい)
夫って・・・!キャロル、きれいすぎて、大人っぽくて、別の人みたいだよ・・・
(かすかにほほえんで)兄さん、お願いがあります。どうか、メンフィスを・・・私の夫の遺体を
王家の谷に戻して。誰も入れぬよう、もう一度封印して。
どうして・・・(まっすぐに自分をみつめるキャロルを見て)ああ、何だかよくわからないが、
いいだろう・・・・そうだ、キャロル、お母さんを呼ぶ。すっかり弱って病気がちなんだ。
ああ、ママ!・・・(キャロルの目からひとすじの涙)
そこのお方!(イズミルをつかまえて)ヒッタイトの王子と申されたな、ちょっと話を聞かせて・・・
・・・(白目)
・・・ブラウン教授ったら・・・あ、兄さん、もうひとつお願い、お医者様を呼んで!
この人の肩の銃弾を摘出してあげてほしいの。時を越えて兄さんが撃った弾を・・。
これは、私と会いさえしなければ負わなかった傷だから。



医師達が駆けつけ、 たちまち研究室は臨時の手術室と化す。
そうこうしているうちに、連絡を受けたキャロルの母,ロディ,そしてジェットヘリでアブドラがやって来る。




キャロル

ウナス

ルカ


キャロル



キャロル





アブドラ
キャロル


イズミル
ライアン
キャロル

ライアン
アブドラ
キャロル
イズミル

ウナス
キャロル
イズミル
キャロル




ブラウン
ジミー
アブドラ
ウナス
ルカ
イズミル


ロディ


イズミル
キャロル


キャロル

キャロル

キャロル、キャロルなの?!おお、神様、感謝します!
ママ、ママ、会いたかった、ずっと・・・(キャロル、泣き出す。母に抱きしめられ、だんだんと声を
上げて号泣しはじめる。)
キャロル様が泣いておられる・・。メンフィス様が崩御されてから、ずっとこらえて
いらっしゃったのに・・。
あれがナイルの姫の母上、同じ髪、同じ目の色をなさっている・・・。
(髪をなでながら)キャロル、つらい事があったのね。もういいのよ、ママがついている。
あ、赤ちゃんは無事に産まれたの?
(だんだんと落ち着きを取り戻して)いいえ、・・・ヒック・・・あの子を守れなかったの・・
あの女、アイシスに・・ヒック・・・死海に突き落とされて・・・。
でもママ、私にはあの後生まれたぼうやがいるの。私、ママになったのよ。
まあ、なんて事でしょ!あのおてんばなキャロルが・・・会わせてちょうだい、おばあちゃまに!
・・・ごめんなさい、ダメなの・・・だって3000年前の古代エジプトにおいてきちゃったから。
(母、目を丸くしている。キャロル、涙をふき、アブドラの方を向き)
アブドラ・・・あなたに言わねばならない事が・・・。
あの時、わたしのおなかにいたのは、夫メンフィスの子。
あなたは、記憶の無い私の名誉を守ってくれたのね。ありがとう。
(一同、はっとしてアブドラを見る)
いや、キャロル・・・やっぱり君は王家の呪いなんかじゃなく、王の愛を受けたんだな。
(治療が始まったのに、まだブラウン教授の質問責めにあっているイズミルをはっと見て)
もしかして・・イズミル王子、あの時私をわざと逃がしてくれたの?
王に捕まって殺されるのを恐れて・・・・ありがとう・・・。
ナイルの姫、そなたの口からそのような言葉を聞けるとは・・・
キャロルに恩がある方だったのか?申し訳ない事を・・・
いいえ、謝る事ないの。私、この人に何度も拉致されて、ムチで打たれて、肩を刀で刺して、
縛られたまんま海に落ちて・・・それからそれから・・・
何!私の大事な妹に!!キャロル、今度何かされたらまた私を呼べ!!今度は・・
バズーカでも用意しておきますか?
フフフ、アブドラ、あなたが言ったらしゃれにならないわ。
▲〇☆◆♀◎・・(何だかわからんがコワそうだ・・。)
ナイルの姫の兄上は、なんだかメンフィスと似ておるな。
あ、私もそのように!
え〜!私、ブラザーコンプレックスなんてなかったわよう!
(医者の様子を見ながら)なるほど、このような道具を使うのか・・・イタ!・・くない?ナゼだ!
動かないで、局所麻酔よ。あなたが見ていたいだろうと思ったから・・。
私も、お医者様に治してもらった。ライオンの噛み傷もこんな風に治療を受けたの。
不思議でも何でもないの。・・・・私は、神の娘、ナイルの娘なんかじゃない・・・・
未来を見通せるわけじゃない・・・ただ知っていただけ。私はただのキャロル・リードなの・・。
わかってもらえなくて、辛かった・・・。(一同沈黙)
いや、勉強熱心な良い生徒じゃったぞ、わしの自慢の愛弟子じゃ。
そうだよ、キャロルはいつも歴史、考古学はトップだった。
相手が誰であろうとものおじしない姿は、誇り高く、魅力的だった。
キャロル様はわれら家臣の命までも大切にしてくださいました。
そのおやさしい姿に、我らは命にかけてもキャロル様を守ろうと心に誓いました。
人の心に灯をともすような微笑みをメンフィスは愛した。私はそれを渇望した・・。
(キャロル、真っ赤になる)
あ、あたりまえです、キャロルはリード家の・・・、私の自慢の娘です!!
そうだ、僕たちのかわいい妹だ!(>ごめんよ、これだけしかせりふなくって・・・)
(キャロル、母と目を合わせ、そしてゆっくりそれぞれの顔をみわたしながら、微笑む。
その目から、涙がぽとぽと落ちる。)
ようやく感情が出せるようになったようだな。
(泣き笑いしながら)みんなに会えてよかった・・・。メンフィスが死んで、もうなにもかも
終わった、って、思ってた・・・・もう大丈夫、元気になれた。
キャロル、あなた、またどこかに行ってしまうの?
(凛とした表情で)ええ、約束したから。エジプトと私たちの子を守っていくって。
そんな・・・私のもとにせっかく帰って来たのに・・・・いやよ、みんな止めて・・・!
ママ、ごめんなさい。でも、私はどこにいたって、大好きなママの娘だって事、忘れない。
すてきな兄さん達の妹だって事を誇りに思ってる。



イズミルの肩から無事弾が摘出され、治療が終わる。イズミルは弾を手に取り、しげしげと見つめている。
「お薬は一日三回食後に」と、医師から薬と抜糸の注意を聞いていると、遠くからキャロル、イズミルらを呼ぶ声が聞こえてくる。



キャロル
イズミル
ジミー
キャロル
ジミー

キャロル


イズミル
ライアン
キャロル
行かなくっちゃ。
ああ、我らを呼んでいる。
キャロル、これ・・・・(欠けた粘土板を持ってきて)これは君が?
まあ・・・ちゃんと届いていたのね・・ふふ、欠けちゃってるけど・・
キャロル、ずっとこんな風に僕たちにメッセージを届けてくれないか?
そしたら僕は君の足跡をたどれるから・・。
ええ、わかったわ。あなたなら読んでくれる。
ちょっと、あなた、(立ち上がったイズミルをつかまえて)あの子の事が好きなんでしょう?
あの子の事をお願い!あの歳で子持ちの未亡人だなんて・・・・キャロルと結婚してあげて!
●◎☆▽♂(なんだぁ?!そりゃ願ってもないが・・・)
お母さん!また始まった!!いいかげんにして下さい。
(真っ赤になって)ママ、ちょっと、か・・勝手に決めつけないでようー!



彼らを呼ぶ声が強くなる。古代エジプトの兵士の幻がキャロル達を取り囲んでゆく。
キャロル、万感の思いを込めて家族を、一同を見渡す。



キャロル

一同
ライアン
ママ・・・みんな・・・どこにいても私はみんなの事を愛しているわ。
どうか元気で!!
(口々に)キャロル!!
・・・イズミル、妹を・・キャロルを頼む・・



瞬間、キャロル,イズミル達の目には、ライアンに重なってメンフィスの姿が見えた。
キャロルが手を伸ばそうとしたその時、四人は暗闇につつまれた・・・・。


**********


一年後、キャロルは幼いメンフィス二世の共同統治者として、イムホテップと共にエジプトを統治している。
王が崩御し、ヒッタイト王に即位したイズミルより、キャロルとの結婚の申し込みがある。
アッシリアの不穏な動きをヒッタイトが牽制しくれている事情もあり、
メンフィス二世が15歳(成年と認められる)で独り立ちするまでエジプトに留まるという条件で、家臣一同賛成する。
ためらうキャロルに、「それとも、私と結婚しますか?」、と言ってイムホテップが後押しをする。
そして婚儀のため、ヒッタイトより、イズミル一行が到着する。


キャロル
イズミル
キャロル
イズミル
キャロル
イズミル
キャロル
イズミル
本当にエジプトを離れなくてもいいのですか?
ああ、かまわぬ。気が向いた時にでも、来ればよい。
私は・・・メンフィスの事を決して忘れられないと思います。
かまわぬ。彼の事は私も忘れない。良き好敵手だった。
あなたは・・・私を・・・愛しているのですか?
ああ、天にも地にも、私が愛するのは、あなただけだ。
!!・・・杏の花が咲く頃に、行ってみたいわ・・・。
・・・私の好きな花だ・・・・歓迎するよ。



イズミルとキャロルの間には、一人の王女と、二人の王子が生まれる。
王女はメンフィス二世と結婚し、息子が15歳になったのを機に、キャロルは政治より身を引き、ヒッタイトの首都ハットウシャに移る。
そして、歳月は流れる・・・。


イズミル
キャロル
イズミル
キャロル


イズミル


やはり・・・・行くのか?
・・・ええ・・・行かせてください・・・帰りたいの、ナイルへ・・・。
あれほどの医者がいて、そなたを癒せないとは!!
・・・私は精一杯・・・生きました・・・
命の終わりに・・・・ナイルへ・・・どうか、帰らせて・・・。
・・・今まで・・ありがとう・・・幸せでした・・・・。
キャロル・・・・・そなたを得て、私も幸せだった・・・・・。
王子よ、私に代わり、母をエジプトへ。
兄弟たちと共に、母をナイルに帰してやってくれ・・・。



200X年、ナイル川に古代エジプトの格好をした中年女性が沈んでいる、という情報を得たライアン・リードは、
それが妹と確信し、現場に急行する。
微笑むような死に顔に、「キャロル、精一杯生きたんだな。幸せだったか?」と問う。

                                          








つけたしのつけたし

おばかなお話に最後までつきあってくださって、ありがとうございます。
いまいちまじめ路線にもお笑い路線にもいけない、中途半端な文になってしまいました。(まあ、自分らしいか・・・。)

メンフィスには悪いが、運命通り、姉もろとも死んでもらいました。
アイシスは同情する点はあっても、やっぱり罪はきっちり償ってもらいました。
キャロルには、一番彼女にとって辛かったまわりからの「誤解」からの解放、
「神の娘」でなくっても、みんなは自分の事を愛してくれているのだ、と、わからせてあげたかったのです。


今回の参考文献(・・・て、ほどでもないですが。)
先日図書館へ行って、児童書コ−ナーでなつかしい本に再会しました。
たかし・よいち(高士 与市)氏の児童向け考古学本、‘発掘シリーズ’です。
「インカ帝国のなぞ」「ツタンカーメンの呪い」「トロイの木馬」・・・・。
小学校時代に読んでいた本です。
他にも「埋もれた日本」「象の来た道」など、けっこう読みました。
私が「王家の紋章」にはまったのは、きっとこの本たちの思い出のためでしょう。
たかし・よいち氏も少年時代に読んだ‘ツタンカーメンの呪い’についての文が忘れられなくて、
(他にもきっかけはあったと思うが)考古学に進まれた方です。
たかし・よいち氏の本を読んでその道に進んだ人も、きっといるでしょう。
「王家の紋章」を読んで考古学に進んだ方もいるくらいだし。

今回子供の時に読んだ本ではなく、1986年出版の「少年王ツタンカーメン」(大日本図書出版)
を読みました。(大人向けを読む根性も時間もないので・・・なさけな〜。)
ツタンカーメン(18王朝在位)の時代は、政治も宗教もとんでもない様相を呈していました。
その政治のゴタゴタで彼は暗殺されたとも言われています。
残された王妃のアンケセナーメンは、運命に弄ばれた女性です。
彼女はもともとツタンカーメンの兄にあたるアケナトン(宗教改革王)の第3王女でしかも王妃です。
弟セメンカクラの妃にも後ほどなったようですが、二人が亡くなって、わずか9歳のツタンカーメンが即位すると、
12歳で彼の王妃になりました。

たとえまわりに決められた結婚であっても、わずかな年月であっても、
ツタンカーメンとアンケセナーメンは、愛情にみちた生活を送ったようです。
その様子は彫刻や絵として残っていますが、
何よりツタンカーメンの棺に捧げられた花束が、彼らの愛を物語っています。
(「王家の紋章」の冒頭にこのエピソードは使われていますよね。)

ツタンカーメンが18歳で亡くなると、彼の小さい時に政治の実権を握っていた大臣アイが
彼女に結婚をせまります。(イムヘホップが求婚するようなものですな。)
当時彼女は21歳、ツタンカーメンとの間の王女二人も相継いで亡くしています。
40歳も年上の人との結婚を嫌い、彼女はヒッタイトの王子を婿に迎えようとします。
が、アイの妨害に合い、泣く泣くアイと結婚する事となり、アイが王位につきました。
ただし、それも5年で亡くなり、また25歳で未亡人になります。
その後は軍司令官のホレンヘブ(ミヌーエだなっ)が別の王女と結婚し、王位につきます。
彼女のその後はわかっていませんし、墓もミイラもみつかっていません。

キャロルは王家の血をひきませんから、ホントは王位継承権は無いと思うのですが、
それだとお話が続かないので、仮に王位継承権があったら、メンフィス・アイシス亡き後、
アンケセナーメンのようになる可能性はあるでしょう。
イムヘホップとミユーエがホントにに忠臣なので、それはなさそうですが、(あ、カプターがいた!)
念のためにキャロルに王子を産んでもらいました。(笑)



ラストは大好きな塩野 七生の本からヒントを得ました。
「王家の紋章」をざーっと読んでまず思い出したのが、塩野氏のエッセイ集
「イタリア遺聞」から、「ハレムのフランス女」(新潮文庫)です。
フランス貴族の娘で、ナポレオン妃ジョセフィーヌの従姉妹にあたるエメ・ドュブク・ド・リビュリ。
海賊に捕らえられ、スルタン・アブドゥール・ハーミッド一世のハレムに献上された実在の人物のお話です。
金髪で快活な性格の美少女を59歳(!!)のスルタンは、ことのほか可愛がり、
翌年彼女は男子を出産します。
スルタンの亡くなった後、トルコの近代化を図ったスルタン・セリムの‘友人’として、
その死後(暗殺された)、セリムの仕事を引き継いだ「改革者」スルタン・モハメッド二世の生母として、
奴隷としては(ハレムの女は奴隷)、大変恵まれた生涯をすごしました。
(何もヨーロッパ人がハレムに入る事はめずらしくなく、軍人などはすべてキリスト教徒の子弟だった。)
彼女がトルコの近代化のひとつの原動力になったのは、間違いないでしょう。
彼女の死に際し、子であるスルタンは母の最後の望みをかなえるべく、
嵐の夜、金角湾対岸にあるキリスト教の修道院に、ひそかに使いを出します。
連れてこられた修道院長は、彼女の最後の懺悔を聞きます。
これはイスラム教国の皇帝であるスルタンにとって、非常に勇気ある行動なのです。
彼は彼で母の臨終の苦しみを少しでもやわらげようと、アラーの神に祈ります。
(エエ話やぁ〜涙)
つまり、彼女はもとの世界(キリスト教)に還っていったわけですよね。
それで、キャロルもメンフィスがいない今、もとの世界に返してあげたい、と思ったのです。
「私はエジプトの土になる」なんて言っていたじゃない、と突っ込まれそうですが、
それはメンフィスあっての事だし、どうせ時代が違うだけだし・・(いいかげん)。
彼女の子供達は、断腸の思いで愛する母キャロルをナイルに流したんですよ、きっと。


ここまで読んで下さった方、ヘンなもの読ませてしまって、ど−もすみませんでした。
これを書くにあたって、某巨大掲示板意外、関連HPは閲覧しませんでした。
他の方の文を読んだら、ぜえったい書けなくなると思ったので。
ま、これからヒマを見て関連HPの波乗りでもしよっかな、と思っています。
最後に、私にどんっ、とコミックス44巻お貸し下さったSさま、ありがとうございましたあ!!