はまりすぎるとコワイぞ!!

                        王家の紋章
  


第一章 「ほそかわちえこ」?「細川千栄子」!「細川智栄子」?!

ちょっと年上のいとこの部屋だった。
おしいれの下段に、きれいに二段に分けて「少女フレンド」がみごとに並んでいる。
お祝い事で親戚の家に詰めていて、ヒマ(じゃま)なワタシはいとこの部屋でひたすらマンガを読んでいた。
それが「細川千栄子」との出会い。
「愛と夢とあこがれ」だった。
後年(つーか、ず〜っと後)、堀ちえみの主演でドラマになっていた。
デザイナーを目指していなかから上京した女の子の山あり谷あり(海もあった!)の物語。
主人公はこれでもかこれでもかとイジめられ、障害が発生し・・・結末は覚えていない(笑)。
それ以降、細川千栄子の作品にはあまり縁がなかった。
ドラマ化された「アテンションプリーズ(元祖スチュワーデス物語)」は、友達が好きだったので、ちらっと見た。
いかにも‘少女マンガ’風の絵柄が苦手だったのだと思う。
「ガラスの仮面」と同じ昭和51年(1976)に始まる「王家の紋章」の存在は、
いくらかアタマの片隅にあったが、読んでみたいなどとは、ぜーんぜん思わなかった。
それが、縁あってコミックス44巻すべて、一度に読む機会が出来た。
「う、この絵、この落ち着かない雰囲気、変わってない・・・」と、読んでいるうちに、
44巻すべてざ〜、と目を通してしまった。
ま、まずい、からめとられてしまったではないか!!
(なお、先生の名は34巻からは、「智栄子」と改名しています。)


第二章 人生を変えちゃうマンガがあるって・・・ 

現代(って、もはや前世紀か)のアメリカ娘キャロル・リードが、
ミイラの呪いで3000年前のエジプトにタイムスリップする話。
金髪で青い瞳の美少女(16歳!しかも未来の出来事を知っている!!って、あたりまえ)
キャロルは、「黄金の乙女」「ナイルの娘」とあがめられ、メンフィス王(ファラオ)の愛を受け、正妃となる。
その間その後も、メンフィスの姉アイシスの嫉妬から来るイジメ・妨害・暗殺未遂に苦しめられ、
「未来を予言するナイルの娘」を奪おうとする諸国の為政者につけねらわれ、
横恋慕するヒッタイトの王子イズミルに何度も拉致される。
実に「ザ・細川ワールド」だった。
世界史の授業の始めの頃に聞きかじった国の名が、総動員。
ヒッタイト、アッシリア、バビロニア、ミノア、ミケーネ・・・。
作者はこの作品を描くに当たって、実に多くの資料を集め、勉強した事がうかがえる。
「いったいどこまでが史実で、どこからが虚構なのか・・・」と誰でも興味を持つことだろう。
私なんかは、さっそく本屋に並んでいた
Newton5月号「ラムセス2世特集(監修 吉村作治!!)」
を買ってしまった。
この本を貸してくださった方は、エジプトへ旅行に行かれたと言う。
(私は実は手塚治虫の「海のトリトン」にからめとられ、ギリシア旅行に行ったヤツである。)
某巨大掲示板では、この本がキッカケで早稲田の考古学専攻に進んだ、なんて方がカキコしていた。
(おお〜!吉村教授の弟子!!)
そうなると、このマンガはその方の完全に人生決めちゃった事になるではないか!
恐るべし、「王家の紋章」!!



第3章  濃〜い登場人物達

主人公  キャロル

  エジプト王妃















 

16歳、エジプト考古学オタク。
かなりの勉強熱心、オマケに記憶力バツグンと見る。
(エライ!だが、その分人の気持ちに、状況判断に鈍感だったりする。)
彼女は歴史に名残すモノに遭遇すると、「あれは確かBC1200頃に・・」
と独り言をつぶやき、即座に自分の世界にはいりこむ。
おつきの家来の苦労や、夫の心配は入り込むスキが無い。
連載は20年以上になるというのに、永遠の16歳。
人生に対する学習能力ゼロ。
エジプト王メンフィスと結婚し、現代と過去を行き来し、諸国を放浪し、
妊娠と流産を経験し・・・、ま、まだ16歳なのか?!
(少なくとも精神年齢は16歳だが)
20世紀に婚約者が2人、古代には夫が2人、(しかもイイ男ばっかり)
本人に自覚はないが、かなりの魔性の女らしい。
腕を骨折するは、ライオンに噛まれるは、アイシスに死海に突き落とされて
流産するは・・・常に満身創痍だが、すぐ元気になる不死身の体をもって
いる・・・・かも。

キャロルの夫 メンフィス

 エジプト王







 

何とミイラで登場。「18歳くらいで亡くなったらしい」といわれたが、
古代に生きている彼はそれ以上の成長がみられる。
激情家でワガママだった青年王が、彼女を巡っての数々の戦闘を
勝ち抜き、大エジプトをなかなかの手腕で統治し、落ち着きのない
妻の面倒を見ている間に、やさしさ、貫禄が出てきている。
歴史が変わってしまったのか、
いや、お約束通り愛妻を残して若死にするのか
(いったいどのように?)、
彼の20世紀で盗まれた遺体はどうなってしまったのか。
今後の興味のひとつ。

メンフィスの姉  アイシス

  バビロニア王妃












彼女もミイラで登場。そのミイラが呪術版が割れた事でよみがえる。
彼女の呪いでキャロルは古代エジプトに一度連れ去られるのだが・・。
その行った先には生きているアイシスが??
ミイラのアイシスはどうなったんだ?これがこの作品の最大の謎である。
その後、キャロルを殺そうとして、また彼女を過去に送ってしまった。
いった先のアイシスにはキャロルの事がわかっている???
ホントのところ、作者はこの最初の設定を悔やんでいるのではないか
と思う。ワタシ的にはユーレイは許せても(?)死んだものは
よみがえるべきでない、と思う。たとえメルヘンでも。
古代エジプトの王族は、純血を守るため、兄弟姉妹で結婚するのが
あたりまえ。それを破って、弟がキャロルと結婚したものだから、
彼女は悪鬼と化す。
実に悲しい女性なのである。

メンフィスの敵 イズミル

 ヒッタイト王子













どうも王家の紋章のファンには、メンフィスよりも彼とキャロルの
カップリングを支持する人の方が多いらしい。
諸国の事情を探るという名目で、
その実キャロルを追い回すのにかまけている。
「怜悧な王子」と言われているが、実はとっても純情家さん。
キャロルに恋し、何度も彼女を拉致しては、
手も出せずに逃げられている。
一度などは妊娠中のキャロルをわざと逃がす思いやりを
見せているが、魔女キルケーの助けでキャロルが人事不省のうちに
婚礼の儀をあげてしまう、という卑怯なワザを使ってしまった。
その直後にアマゾネス軍団に捕らえられ、
自分が人事不省に陥ってしまう。(そこから話は動いていない。)
彼もキャロルが為に常に満身創痍。
彼女に噛まれた指はいとおしいが、時空を越えてライアンに銃で
撃たれた肩のキズは、かなり辛いモノが・・・。
彼女に手当してもらいたくって仕方ないのだが、
その願いだけは叶っている。

アイシスの夫   ラガシュ

バビロニア王



狡猾な王で、エジプトと「ナイルの姫」ことキャロルをつけねらう。
そのためにアイシスと政略結婚をするのだが、
実は妻の事を愛している。
それなのに、アイシスはますますメンフィスに執着してしていく・・・。
キャロルの為に建設中の塔(のちのバベルの塔らしい)
を破壊される、ふんだりけったりの方。

キャロルの兄  ライアン

石油会社社長



20世紀に生きるキャロルの長兄。アイシスに殺された父の跡を継ぐ。
妹をかわいがり、様々な知識を与えているが、それが妹の身を
助けるのに役立っている。
キャロルには彼の他に
母と次兄のロディがいるが、
時空を越えてなぜかライアンとだけ接触できるようである。
ひょっとして、兄である、という他にキャロルとの絆があるのだろうか。


キャロルをねらう為政者達










   



アッシリア王アルゴン(いつも舌を出している。キャロルに城を
破壊され、メンフィスに腕を切り落とされる。)、
ヒッタイト王(女好き。ホントにイズミルの父か?)、
アビシニアの青の王子(マシャリキ、キャロルは正体を知らない。)
ミノア王ミノス(かなりのマザコン、過保護に育つ)
&その兄
アトラス(ミノタウロス?)、
立場は違うが、
アマゾネスの女王
話が長くなればなるほど、登場人物が多くなるのはいたしかたない。
作者もついつい欲が出て「あの国も出したい、この国も出したい」
と思ってしまうのだろう

だが、これらをクライマックスに向けて全部からめていくとなると、
とんでもなく収拾がつかなくなるのは明らか。
このうち誰も舞台から降りてはいないのだ。どーなるんだ?!

キャロルの召使い  ルカ

実はヒッタイトの間者







イズミル王子に命ぜられ、キャロルに身辺にもぐりこみ、
警護にあたっている。
メンフィスの従者であった
ウナスと共に、
キャロルの危機を常に助ける。
心ならずもエジプトに有利に動かざるを得ない事も。
イズミル王子に対し忠誠を誓う彼は、しょっちゅう「王子よ・・・」と
独り言をつぶやく。
その姿はまるで古代の「明子ねえちゃん」である。

ライバルの女達








ライバル」とは銘打ったものの、キャロルのライバルと
言えるような魅力的な女性は、アイシス以外出てこない。
リビアのカーフラ王女など、「もうどーにかしてえ」状態だし、
アテネの貴族の娘モリオネーは、ただのカン違い女だし、
メクメクに至っては何ともメンフィスはカプター大神官
みくびられたものだ。
やはりライバルは相当に美しくなくては、
読者もハラハラしないだろうに。

まだまだたくさん登場人物はいるが、書いている自分がギブアップ・・・・(すんません)。



第四章  いったいいつの時代だ?

「3000年の時の流れを越えて・・」と、何度もマンガで描かれていますが、
正確にはどうなんだろう、と考えると、ズブズブと深みにはまっていく〜。


メンフィスの墓は王家の谷から発見されたらしいので、彼は新王国時代(BC.1565〜1070)の王らしい。
Newton誌によれば、エジプトで最大の王ラムセス2世は、第19王朝の3人目の王で
(在位BC.1279ごろからBC.1213ごろまで)、メンフィスはそれよりずっと以前の
第18王朝の王、
約3500年前、と言うことでどんなもんでしょう。。
なぜにラムセス2世より前かと言うと、モーゼのエジプト脱出は彼の在位期間、
またそれより古い時代BC.1360ないしBC.1350ごろではないか、といわれているから。
そして、モーゼが紅海を割ったのは、サントリーニ島の爆発による津波のせいだ、
とNewton竹内 功編集長はいっとります。(せ、説得力!!)
それだと紅海ではなく、地中海沿岸のシルボニス湖だと言うことです。
サントリーニ島が爆発し、陥没した地点での波の高さは200メートル(!!)、地中海沿岸部では
最初の引き潮で海底が現れる事は、十分可能。
ヘブライ人が海底を歩いて渡り、数十分後にエジプト兵が渡ろうとして津波が押し寄せる・・・。
こりゃエジプト兵がおぼれるどころでなく、未曾有の大災害だったに違いない。
細川先生が5月号のNewton誌を読んで、
サントリーニ島を爆発させる事だけはがまんするのを願うばかりであります。
13巻に出てくるルクソール神殿は、第18王朝で大部分が作られたそうですが、マンガに出てくる門は、
ラムセス2世が増築し、BC.1277ごろに完了しているらしいです。

そして、「王家の紋章」には数々の列強国が。
私が高校時代に中日新聞社の主催で、「チグリス・ユーフラテス展」が石川県美術館で開催されたのですが、
その時のパンフレットを捨てずに嫁入り道具と一緒に持ってきてありました。
巻末にある年表を見ると、アッシリア、バビロニアの名が同時にあるのは、
BC.1950から1600くらいのバビロン第一王朝時代、
BC.1200くらいから800くらいのバビロン第4〜10王朝時代。
間が抜けているのは、どちらも他の国に征服されていた時代。
そうなると、新王国時代の始め頃と、アッシリア、バビロニアはうまくかみあわない。
ただ、国の名前、と見ると苦しいが、
「アッシリアはメソポタミアの北部、バビロニアはメソポタミアの南部をさす言葉」
と考えれば(実際そうなので)、うまくいきそうだ。
アルゴンはアッシリアあたりの王、ラガシュはバビロニアあたりの王、と言うことでどんなものでしょう。
コミックス26巻の表紙に、イラク北部ニネヴェ出土の「貴人像頭部」が描かれていますが、
これはず〜っと古いBC.2400頃のアッカド王朝時代のものです。ちゃんと実物を見ました。

たびたびイズミル王子の口から出てくる
「愛の女神イシュタルよ・・」ですが、
イシュタルはメソポタミアで広く信仰された、愛と戦いの大女神(金星)だそうです。
ギリシア神話の乙女座デメテールの神話のお話の原型のような伝説が残っているようで、
繁殖、繁栄の神でもあるみたいです。
でも、小アジアのヒッタイトでもイシュタルという名では信仰されたのか、わかりません。
それに当たる女神はいたと思いますが、イシュタルとは言わず、違う名で呼ばれていたかも、と言うことで。

ヒッタイトはたびたびエジプトと衝突しているようですが、ラムセス2世の治世に大規模な戦いがありました。
その時の和平条約が、文章に残る人類最古の和平条約だとか。
小さい戦いはいくらでもあったことでしょう。
ガンバレ!メンフィス、ラーの子!!


第五章  結末はこうなる?!

心ある方は決して読まないでください。




                              参考資料で〜す。

                          今回の参考資料で〜す。