小野不由美原作「悪霊シリーズ」より  いなだ詩穂作画 なかよしKC

ゴーストハント


左から綾子,麻衣,真砂子,リン,ジョン,ナル,ぼーさん,安原少年
主要登場人物一覧ってとこで


   私は‘幽霊が見える人’では無い。断じて無い。
   幽霊は存在するのか、Yes,ともNo,とも言えない。
   存在するのかもしれないが、自分は見たことないし。

   でも、見える方はいるらしい。いや、知った方にいる。

   大学の先輩は、おじいさんが無くなって7日目に、お母さんと一緒に、
   自分を呼ぶ亡きひとの声を聞いたそうだし。
   かつての同僚は、おばさんの死に関する‘虫の知らせ’をハッキリ受けたそうだし。
   ネットのお友達にも、よく遭遇する方がいらっしゃる。

   ‘超能力’も持つ人もいたりする。

   仕事でかかわったお子様に、‘癒しの力’を持つ男の子がいた。
   他の人の傷や痛いところにさわると、それを癒やすかわりに、自分が痛い目に合う
   のだそうだ。
   同僚がかつて職場でご一緒した方に、目の前でスプーンを曲げちゃう人がいたとか。

   ‘超能力’や‘異界のものを見る力’が無い者にとって、ちょっとあこがれたりもするが、
   実にやっかいな力のようであり、やっぱり無くってもいいや、と思える。
   ・・・そのひとつに、どれほどの方がまともに受け取るのだろう、という点について。

   ずいぶん前に受けた講習会の講師が、開口一番
   「昨夜泊まったホテルの部屋に‘よくないもの’がいまして。塩で清めてきましたが、
   ○○ホテルの***号室、気をつけて!覚えておいて下さいよ!」ときた日にゃ、正直
   ゲンナリしてしまった。
   せっかく‘見える力’があっても、話すタイミングによっては、とっても人格を疑われたり
   もするのだ。


   小野不由美vsいなだ詩穂の「ゴーストハント」は、そんないるともいないともわから
   ない‘幽霊’を徹底的に科学的調査をして狩りだそうとするヒーローと、彼を取り巻く
   霊能者達のお話である。

   (上記のようなお話は、最新刊‘悪夢の棲む家’で語られていたりする。)



隻眼な皆様
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   漫画版「ゴーストハント」・・なかよし連載(6巻以降はコミックスのみ)

  私が初めてゴーストハントを読んだのは娘の読んでいる‘なかよし’誌。
  コミックス2巻「人形の家」(原作では「悪霊がホントにいっぱい!」)に当たる部分からだ。

  わずか16歳で超心理学者であり、渋谷サイキックリサーチ(SPR)所長である渋谷一也は、
  幽霊の存在を科学的に立証すべく、メカを駆使し、徹底的に科学的調査をしている。
  そして、調査の‘お返し’として、霊現象に悩む人たちのために、除霊(霊を消し去る)及び
  浄霊(霊を‘あちら側’に送る・・成仏やね)を行っている。

  決して力まかせに悪霊退治をするのではなく、なぜに‘悪霊’になったのかまで調べ上げ、
  彼ら(?)の気持ちにそって‘あちら側’に行ってもらう・・。
  ・・・その設定がなかなか新鮮で、毎月娘とともに読むのが楽しみになったのだ。
  (美内すずえホラー3部作のお部屋で既に語りました。)

  が、私の解釈はか〜な〜り〜勘違いだった事が読み進めるウチにわかってきた。
  通称ナルこと渋谷一也は、決して霊に対してやさしいわけじゃない、
  霊現象が治まるためのベストな方法を取ろうとしているだけなのであり、非情な手段を取る事も
  やぶさかでないのだ。
  そのためにまわりの連中と軋轢が生じる事など、彼にとってはどうでもいい事だったりする。

  この頭脳明晰,眉目秀麗,きわめて性格悪しのヒーロー,渋谷一也(ナルシストのナルちゃん)
  をはじめとする個性ゆたかすぎる登場人物達のからみは、とっても楽しませてくれる。

   谷山 麻衣・・・・・天涯孤独だが元気いっぱいの女子高生,SPRアルバイト事務員(後に調査員)

   林 興徐・・・・・・・寡黙なナルの部下,メカニック兼中国巫蠱(ふこ)道道士,通称リン
 
   滝川 法生・・・・・歌って踊れる真言僧,徐霊士,通称ぼーさん

   松崎 綾子・・・・・自称巫女(コミックス版ではまだ役立たず),ケバくてウルサイ

   原 真砂子・・・・・お茶の間霊媒師,勤労女子高生,気位は富士山のごとし

   ジョン・ブラウン・・ベネディクト派司祭,エクソシスト,京都弁のおちゃめなオーストラリア人

   安原 修・・・・・・・元依頼人,少年探偵団(団員一名),後にアルバイト事務員,‘若年寄,越後屋’


  ヒロイン谷山 麻衣は、フツーの女子高生だったが、彼らと調査に参加するうちに超能力に目覚め、
  ‘幽霊が視えて、しかも会話が出来る人’となる。
  普段決して感情を表に表わさないナルが、彼女の夢の中では優しく微笑い、事件解決へのヒントを
  指し示す。その‘夢のなかの笑顔’に引かれ、傍若無人のナルに恋している。
  だが、すぐ相手に(もちろん幽霊も含めて)感情移入する麻衣は、非情なナルとぶつかり、しょっちゅう
  ケンカをくり返す。
  (特に5巻「禁じられた遊び」、原作「悪霊はひとりぼっち」後半部分は読むのが辛くなる。)
  読者は麻衣に感情移入しながら、ナゾだらけのナルの人物像を推理していくのだ。

  2004年二月現在、コミックスは8巻「呪いの家」(原作「悪霊とよばないで」の途中)まで出版、
  悪霊に憑依されたナルは封じられたまま,麻衣は九字を撃とうとかまえたままになっている。
  半年に一巻ペースで来た出版が遅れ、一体9巻が出るのはいつの日か。
  コミックス派読者はイライラしながら待っているのだ。(いなださん、どうしたのかな〜?)

  (ちなみに8巻で調査に来たのは能登、9巻で再登場する予定の安原少年が調査に訪れる金沢の
  図書館は、金沢駅に最寄りで近世資料館がある玉川図書館、と私は推理する・・・・ってだから何?)
      


我が家に来た‘悪霊’たち
講談社X文庫ティーンズハート「悪霊シリーズ」
(1989 1巻初版 〜 1992 8巻初版)
・・・・つい、やってしもうた。
ヤフーオークション初体験で、15500円でゲット。

   原作 講談社ティーンズハート「悪霊シリーズ」

  
ネタバレにつき、コミックス派を通そうとする方はこれ以上読まないで下さい。
  (一度書きたかった・・・爆)


  小野不由美「悪霊シリーズ」は、ティーンズハートの名の通り、ティーンズ向け小説であり、
  ジョシコーセー麻衣の一人称で書かれている。(おばさんにはとっても読みにくい)
  残念ながら現在廃刊になっており、復刊のきざしもない。
  書店や中古書店を何軒も探し回ったが、一冊だって残っていない。
  ゆえに、コミックスの続きを待てない読者は、とんでもなく高額とも知りながら、ネットオークションに
  時折出てくるのを狙う事になる。
  そして、8巻全部読み終えると、衝撃の事実を知る事となるのだ。

  霊能者達の会話にしばしば登場したイギリス気鋭の超心理学者であり、PK能力者,サイコメトラー
  であるオリヴァー・デイヴィス博士が、実は渋谷一也その人である事を。
  麻衣の夢に現れたナルは、実はオリヴァー・デイヴィスの既に死んだ双子の兄で、優秀な霊媒師の
  ユージン・デイヴィス(通称ジーン)である事を。

  (‘Oliver’だから、頭の母音の前にNをくっつけて、愛称が‘Noll’、になるそうで)

  これはホントにヤラレました・・・と言いたいところだが、次のシリーズの「悪夢の棲む家」から読ん
  でしまった後で衝撃度は1/3以下だったかも・・・(涙)。

  ナルはサイコメトリで渡日した兄の不慮の死(交通事故死)を知り、加害者によって捨てられた遺体
  を探すために来日し、素性を隠して渋谷にオフィスを構えたのだった。
  自分が恋していた相手が、もう既に亡くなっていたジーンであった事を知った麻衣は、
  「ひとりでも恋は出来る」と、何とも少女らしい悲しい決意をしてこのシリーズは終わる。
  (そ、そんなのアリか〜〜〜!)

     *********

  原作本でも希少価値十二分なのだが、さらに原作者が関わった同人誌「中庭同盟」という本がある
  そうで、これはもう‘幻の本’と言われるくらい手に入りにくいらしい。
  これには、もともと日系アメリカ人だった双子がイギリスの養父母に引き取られた経緯や、
  他の登場人物たちの本編に描ききれない日常等が書かれていて、これを読まなきゃマニアで無い、
  と言われそうな本なのだ。
  後発のファンの私には、ネットでいくらか内容を知る事しか出来ない。

  それによると、日系人の母とアイルランド系の父は、普通でない能力を持って産まれた子供たちを
  愛し守り抜く強さを持ち合わせておらず、精神を病んだ母は子供たちをネグレクトし、母が病死した
  後、父は子供たちを捨てて行方不明になってしまった、との事。

  サイコメトリの能力やポルターガイストを起こすほどのPKの能力を持つオリヴァー、そして
  目に見えない霊を視るユージン。
  何の力もない我々にとって、彼らはカッコイイか、それとも不気味か。
  少なくとも、その力はナルの心の成長に大きく影を落としてしまった事だけは確かなのだ。


なるべくこっちは後に読む方がいいんですがね。
講談社ホワイトハート「ゴーストハントシリーズ」
(1994初版)
現在、この2冊のみ出版されている。



   原作 講談社ホワイトハート‘ゴーストハントシリーズ’「悪夢の棲む家」


  兄の遺体を探すという目的は達成されたが、ナルは心霊現象が多く起きる日本にオフィスを維持。
  ジーンの葬儀を終えて、自らの研究のために再来日、いきなり依頼された調査に取りかかる。

  このシリーズから三人称の描写になり、ティーンでない読者にも男性にも読みやすくなる。
  ナルが‘博士様’してて、読んでいるうちに心霊現象の豆知識が得られる事、間違いなし!(いらんわ)
  が、内容は甘くない。
  コワイ。
  シリーズの中で一番コワイと思う。
  曰く因縁のありそうな幽霊屋敷でなく、日常起こりうる事件(一家惨殺)をベースにしているので。
  しばらく暗がりで鏡を見るのがコワくなるかも、で要注意。(鏡の向こうに‘コソリ’が覗く〜〜!)

  このシリーズで登場する広田 正義は、この後レギュラーになるのでは、と思われる。
  彼は東京地検の検察官であり、ナルをこともあろうかユージン・デイヴィスの殺人死体遺棄容疑
  で内偵しているのだ。
  霊現象も超能力も信じない彼は、この調査でナルにいいようにこき使われてしまう。
  名の通り正義感は強いが悪く言えば単細胞、この後もいつのまにやら利用されるのでは、と。

  そしてもうひとり(?)、ジーンの再登場
  葬儀を終えて‘あちら側’に行ったハズのジーンは、いまだ中有(三途の川付近?)に留まったまま。
  (弟より麻衣の方が波長が近く、たびたび情報を送っていたらしい。)
  ジーンはナルとも意識が繋がり、鏡越しにコンタクト出来るようになる。
  そして、麻衣とは初めて、夢の中とは言え名前で呼びあえる事が出来たのだ。
  だ、だが!
  これでいいのか?!
  17歳の少女が、死者との出会いを楽しみにしてていいのか?!
  (これで少女向け小説と言えるか・・・原作者はもう思ってなかったりして)
  ま、フランスでは死者との婚姻が許可されているそうだし(by 朝日新聞)・・・でもここは日本だ。
  この恋の行方はいかに?!
  それとも多くのファンサイトの二次小説のように、ナルとくっつくのか?
  (私もそれを願ってるぞ!!)

  もう伏線張りまくりなのだが、1994年に出版されて以来、新作が出ない!
  他のお話の方(「十二国記」とか)にかかりきりらしいが、ネットによるとこのシリーズがあまり人気
  がなかったので、ヤル気を無くしているらしい、とも。
  そんな事言わないで、おばさんはこっちのシリーズの方が絶対好きだから、続きプリーズ!

    *******

  ファンサイトはびっくりするほどあります。
  ほのぼのからアダルト路線(もちろん地下)まで、みごとな調査物も。
  ブックマークを付けていったら、30を軽く越してしまいました。
  おかげでしばらく寝不足に・・・おばか。

  ちなみに、中庭同盟については、こちらがくわしいです。




ツインズな皆様方
さらにヘタレてますけど(涙)