美内作品における
真澄度およびマヤ度の研究
ホラー・オカルト3部作 |
各作品における真澄度 評価基準 |
イイ男であるが、顔が長い。 金持ち、又は身分が高い。 主人公を陰から見守る、又はプロデュースする立場にある。 そう簡単には主人公と結ばれないようなワケがある。 とにかく何かしら苦悩している。または白目になる。 |
各作品におけるマヤ度 評価基準 |
一見平凡ではあるが、そこそこかわいい。 ドジである。またはおてんば。 明るい性格で、苦難を乗り越える強さがある。 何かしら才能がある。 時々神がかる事がある。またはトリップする。 |
黒百合の系図 |
田代源太郎 北条安希子 聖?キャラ 秋月志郎 |
1977 ララ(3話完結) 傑作選8より |
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「わたしは知りたい・・たとえそれが呪われたものであろうとも・・・」 母の突然の死には、何か重大な謎がかくされているのではないか・・。 安希子の体に流れる半分の血脈、母の ルーツを探る旅に出る。 旅行家田代源太郎に紹介され、向かった鬼姫谷で安希子が見たのは、彼女の祖先 飛竜一族の 非業の死をとげた者たちのおびただしい墓。 飛竜家の者に殺された鬼姫の怨霊の呪いを受けたた めであり、 一族の最後の一人の安希子にも呪いが降りかかる。飛竜家の財産を横領した秋月家の人々もからみ、 鬼姫こと「千也姫」と、安希子,源太郎たちとの闘いが始まる・・。 文庫で初めて読んで、真っ先に浮かんだのは、手塚治虫の名作「どろろ」だ。 百鬼丸は、父が悪鬼に権力を望 んだ代償として、目や耳、あらゆる器官を奪われ、 ただの器として生まれてくる。 彼が妖怪を退治するたび、彼は 失われたもの(人間性)を取り戻していく。 すべてを取り戻した時、百鬼丸は(積極的ではないが)父を許す・・。 千也姫もまた、父の野望の犠牲にされたのだが、こちらはホントに‘鬼’になって生まれてくる。 アタマに角はあるわ、やたら動物虐待をするわ、人を殺めるわ・・。 父を慕うも拒絶され、ますます人格をゆがめ ていく。このへんの所が、私にはわからない。 彼女はホントに‘鬼’なのか、‘人心の鬼’が表面化しただけなのか。 彼女が犠牲者ならば、彼女の魂は救われないのか。 たくさん人をとり殺しているから、滅ぼされるしかないのか。 「どろろ」の最終回がなんだかなつかしいぞ。(すんません、手塚作品を語ると熱くなるんです。) とにかく‘鬼姫’は、時を隔てて二度も滅ぼされてしまうのだ・・。 蛇足だが、黒百合は石川県の県花だ。名峰白山には、海抜2000メートルを超したあたりから、1本・2本という のでなく、ぶわーっと群生して咲いている。 チングルマやハクサンフウロに並び、白山の高山植物のホープ。 (しかし、あんまりイイ香りで無い・・・・自然観察員が登山者ににおいを嗅がせてはよろこんでる 笑) してみると、黒姫谷は、よほど標高が高い所にあったと思われる。(高山病になりそう・・・爆)。 |
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歳の差カップルである。源太郎の著書のプロフィールには、S26生まれとあるからして、S52当時26歳。 安希子 の方ははっきり書かれていないが、高一くらいだろうか。 ラストで安希子に「アニキになって」と言われて真っ赤に なっているので、彼女の事は憎からず 想っている様子。安希子にとってはまだ‘アニキ’以上ではないのだが。 秋月志郎は物語の中では中途半端はキャラである。 自分の母が安希子を毒殺しようとするのを阻止しているが、親子であるが故、それ以上疑いきれない。 一件落着後、去りゆく彼らをさわやかに見送るのみ。 もうちとばかし 怪しい(妖しい)キャラになるか、源太郎と立場を争うかしてほしいところ。 |
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真澄度 | どちらかと言うと 優キャラですね(汗)。 |
だけど・・本当の兄妹でなくてよかった・・ |
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マヤ度 | 不死身の体を 持っているかも・・・?! |
安希子、ひとりっ子だから源太郎さんみたいな アニキほしかったの |
魔女メディア |
ライアン・クローリー リリー・ミューラー ?キャラ ピエール・プラマー |
1975 別冊マーガレット 2話完結 傑作選7より |
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孤児リリーは小さい時から、ぶきみな夢を見た。自分を招く、古い塔の大きな扉の前に立つ人影・・。 養父母達とともに向かった300年間うち捨てられていた古城には、夢と同じ塔が!!。 最後の城主メディアは、悪魔 信仰にふけり「魔女」と呼ばれ、多くの人々を殺した罪で塔に監禁されたまま 生死不明らしい。そして、リリーは メディア・バトリーの血を継ぐ最後の一人だと判明する。 そのリリーは塔に一晩閉じこめられて以来、不可解な 行動を取るようになる。 いつもリリーをいじめていた従姉妹のキャロラインは、ひどいケガをし、 城の改修工事の 現場では次々と事故がおこる。 城のオーナーの息子ピエール・プラマーは、体調を崩して以来、リリーの意のまま になってしまう。 伝説におびえる人々に捕らえられたリリーは、魔女裁判にかけられる・・。 リリーは両親を亡くして伯父夫婦に引き取られて以来、孤独で不自由な生活を送って来た。 積み重なった鬱憤が 爆発し、メディアの魂を自らに引き寄せてしまったのか。 使い魔の役割を果たすジゴは、知恵遅れであるため、 村の子ども達からいたぶられている。 唯一心を許したのは、そんな彼をかばってチョコレートをくれたリリーだった。 魔女裁判で追いつめられたリリー(メディア)は、ついに正体を現し、悪魔との契約書を焼かれる事で滅びる。 しかし、しかしだ〜!!それで終わっていいのか?! リリーを虐げていた者たちには、ジゴをいたぶっていた者達 には反省があるのか?! (はっきり言って無い!) メディアの魂は滅びたとは言え、リリーやジゴは、今まで以上に偏見の目にさらされて生きなければならなくなる。 よほどまわりの人間の方が、「人心の悪魔」をかかえているでは ないか。 (美内センセ、「後は読者の想像で・・」って、あまりにほったらかしすぎる!!) リリーをずっといじめてきたキャロラインなんぞは、「なんで生かしといたんだ!」 なんて思う読者もいるかもしれない・・・。 ないぞ? |
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ライアンは列車で偶然ミューラー一家と出会い、アルバイトとして雇われた学生。 心ならずも、憎からず想っていた リリーを追いつめる役割をはたしてしまう事になる。 リリ−はメディアから解放されても、彼女をとりまくきびしい状況 は 全然解決されていない。 その彼女をささえていけるのは、彼しかいないのだが・・・。 「内気だけどやさしくていい子だった、おれの好き だった あの時のリリーをかえしてくれ!」 と言ったからには、アンタ、リリーを引き取る覚悟はあるかい? いつも美内作品で思うのだけれど、ピエール、君って何人? かの地は「ローゼンハイツ」と言うからには、ドイツ あたりなのだろうと思うが。 「ペーター・プライ」だったらドイツ系の名前だし。(よけいなお世話か) とにかく彼は呪いの蝋人形によって、リリーに思うがままに操られ、裁判ではリリーを弁護する 立場になってしまう。金持ちなんだが、真澄キャラからはほど遠い。 |
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真澄度 | これも優キャラ・・・ ですね(涙)。 |
お姫さま、ぼくではいかがです? |
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マヤ度 | 神・・じゃなくて‘悪魔’ がかっている? |
私はいつもひとりぼっちで心細かったから、味方がほしい。 ・・・ぜったい私を裏切らない・・何があっても味方なの・・ |
白い影法師 |
丹波照子 長谷部涼子 (はせべすずこ) |
1975 月刊ミミ 一話完結 傑作選1より |
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ある女子高に転入して来た長谷部涼子は、5年前から空いたままだという窓際の前から4列目の席に座った時 から、怪しい気配に襲われるようになる。 クラスメートの紹介で出会った丹波照子とともに行ったコックリさんで、‘コモリサヨコ’と名乗った霊は、 「涼子がほしい」と訴える。 涼子にとりついた霊は、5年前に窓際の、まさにその席で死んだ小森小夜子のものであり、その孤独な魂は 地 縛霊となって、席に座るものを自分のもとへと引き寄せよう(殺そう)とするのだ。 照子は心霊写真を撮り、学校側に除霊を訴えようとするが、火事で負傷し、ネガも失う。 涼子はただひとり、恐怖 のただなかに置かれてしまう。 照子は霊能力者のもとに涼子をつれていくが、彼は、小森小夜子が死んだ同じ日、同じ時間帯にその席に すわり、‘生きたいという意志の力’で地縛霊と闘え、と指示する。 そして、運命の6時間目が来る・・。 文句無く、美内ホラー作品の中の最高傑作でしょう。 小森小夜子のユーレイ顔、夢に出てきて、うなされた方もきっといるのではなかろうか。 (画像貼り付けるだけでもビビってしまいました。) 小森小夜子は、今風に言えばストーカーである。 家庭的にも、健康にも恵まれず、孤独だった彼女は、たまたま転入してきた少女と友達になるが、 元々社交的だった友人に距離を置かれるようになる。 病気で入院した小夜子は、その間に友達を取られる事を恐れてムリを押して登校、 6時間目が終わるのを待たず、‘その席’で死んでしまう。 そして彼女の思いは死んだ後、より増幅されていく・・・「いや・・・ひとりぼっちはいや・・・」と。 そして、彼女の孤独感は、誰も同情する者も無く、永遠に癒される事は無いのか?。 今、改めて読んでみて、地縛霊になっちまった小夜子のいきさつは丁寧に描かれているものの、美内すずえは その霊に対し、非情なまでに冷淡であるように思う。 (そりゃ、悪霊は退散されるに越した事はないが・・・。) ワタシが小夜子の霊だったら、あれしきの事で除霊されたかないわい! ・・・・・なんて思ってしまう後味の悪いラストだ。 いぞ? |
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「丹波照子」の名を読んだとたんにひっくりかえった・・・かも? あの当時から「霊能者 丹波哲郎」は有名だったっけか・・・と、懐かしい思いにとらわれたワタシ。 しかし・・・彼女はオンナである。この企画からは完全にズレているんですがね・・・(汗)。 したがって以下の覧は削除です・・・。 涼子は5年前と同じシュチュエーションで転入してきて、小夜子の霊に取り憑かれるのだが、 小夜子の孤独に対し、思いやる言葉をいっさい吐いていない。 照子にしても、‘小夜子除霊計画’を楽しんでいるようにも見える。 (そりゃ小夜子の霊もハラを立てるか?) コワイだろう・・・とは思うが、小夜子サンのオバケに対して、同年代の少女として、 少しは同情してやってほしい登場人物たちである。 (でも、実際小夜子が生きて身近にいたら、けっこうウザイ相手かも・・・・・う〜ん。) |
ホラー3部作に思うこと |
ワタシには霊感は全くないらしい。 幽霊はいるのか?と言われれば、「さあ〜?いてもいなくてもどーでもイイけどぉ〜」のタイプである。 (ついでに、占いもほとんど信じない・・・古代じゃ生きられないかも?) そんなワタシがホラーを読むと、ちょっと視点がヘンな読み方をしているかもしれない。 ワタシ的にお気に入りのホラー作品は、最近では「ゴーストハント」だ。 *「なかよし」連載 いなだ詩穂/小野不由美(悪霊シリーズ) ヒロインの女の子は、ゴーストハント達のバイトなのだが、霊の気持ちを理解する能力があるらしい。 霊が なんで‘悪霊’になったのか、そのホントのところを理解してあげれるのだ。 ゆえに、ゴーストハント達は、除霊でなく、霊に語りかけて説得する‘浄霊’をする。 例えばコミック2巻の「人形の家」は、幽霊登場場面なんか、ホントにこわいんだが、 読者は、ほかほかした気持ちで物語を読み終える事が出来る。 ‘癒し’がある・・ というのか。 いかにも少女マンガらしいラストだ。 (妖怪物だったら、「どろろ」は聖典でしょう。「犬夜叉」も好きです〜。) 美内作品のホラー物は、初期作品と今回取り上げた3作とは、明らかに性格が違うと思う。 (初期作品・・ex.「人形の墓」「13月の悲劇」「ビクトリアの遺書」「金色の闇が見ている」・・・) 初期には‘人心の悪魔’を描いているのに、「魔女メディア」では、ホンモノを出しちゃったと言うこと。 幽霊ものにしても、初期作品にはあった霊に対するやさしい気持ちが、‘癒し’が無い。 「白い影法師」は、読者に‘こわい’という気持ちしか残さない。 ホラーなんだからそれでいいと言う方もいるだろうが、あくまで美内すずえには少女マンガ家であってほしい。 (宗教広告マンガ家にはなってほしくない!) また、ホントに悪魔や幽霊がいるのかいないのか、百歩譲っていてもいいんだが、 悪魔や妖怪のたぐいを出したなら、対抗する立場のものを、神サマでも妖怪退治屋でも何でも 登場させるのが、少年少女向けマンガの方法だと思うのだが。 (固い考えかな?) ホンモノと中途半端な人間を対決させないでほしいな・・と。 「ガラスの仮面」の結末はどうなるのか・・・。 他の作品を通して類推できないか?なんて気持ちでやってみた 企画なのだが、なあんとなく、最近「これでは期待しない方が・・・」なんて気持ちになってきた。 美内すずえセンセに望みたい事! 少女マンガ家のスタンスを失わないで欲しい。 いくつかの作品で感じるツメの甘さを何とかしてほしい。 以上、かわいさあまって憎さ・・・の1ファンのたわごとでした!!! |