Interview Part1

●舞台俳優、津嘉山正種


NHK教育テレビ『ステージドア』より書き起こし
出演:津嘉山正種さん(俳優)、妹尾河童さん(舞台美術家)
1997年6月8日放送
中日劇場にて収録




妹尾河童さん(以下と略):いいねえ、いい。

津嘉山正種さん(以下と略):(笑)

:すごくね芸域が広いよ。

:芸域が広いですか。ありがとうございます。

:コメディはやるでしょ。このあいだみたいに『シャドー・ランズ』みたいの、イギリス人の大真面目もやるでしょ。

:ええ。

:今日の日本人の医者もすごくよかった。

:ああそうですか。もうそう言っていただくと。

:あのね、今日のこの劇場の支配人がね、「津嘉山さんとどうして親しいんですか? どういうことなんですか?」って言うからさ、古いのよ古いのよって言ったの。だから・・・

:『欲望』ですよね。

:欲望、欲望。『欲望という名の電車』、テネシー・ウィリアムズ。あれが最初だったのかな。

:そうですね、30代の後半、中盤ぐらいでしょうかね。ですからもうかれこれ20年ぐらい。

:そう。もっとない?

:もっとなりますかね。ああ、初演と再演とありますからね。

:初演のときあなたミッチーだったろう?

:ミッチーでした。

:ミッチーってのはさ、好きで好きでしょうがない女性は、実はかなり裏がある女性で、

:ええ、ええ。

:悩んで、思い切らなくちゃならなくて。

:そうですね。

:うん。それでいてはっきりも言えないし。自分の気持ちで荒れるわけにもいかないし。

:いかないし。僕は荒れてましたけど。

:うん。だからあれはあなたには合わなかったな。

:それで演出家からもね、ずいぶん、「それはね、スタンレー的な演技だから、ちょっとミッチーにはならないです。抑えて抑えて」 でも、いろいろ抑えられなくて、

:(笑)

:いろいろやってました(笑)。

:その後にスタンレーやれたんだ。

:そうです。

:やっと、何年か後だ。

:ですからあの作品の中で、両方の役やってるってのは僕とね北村さん、文学座の。2人しかいないんです。北村さんもずーっとスタンレーでいらして、このあいだ江守徹さんですか、ミッチーやって、なんかのあれで酒飲んだときに、「これ君と僕と2人だけだよ」って言われて、ああそうですかねって話したんですけど。

:あのねそのときの写真をね、探したらあったんだよ。

:最初のときのですか?

:最初の、初演の。君がミッチーやってるときの。これが舞台写真でしょう。

:(写真を見て)ううん、なつかしいですね。

:で、ここにですね、ミッチーを演じている君がいるよ。

2人:(笑)

(註:写真には1979年に紀伊國屋ホールで行われた『欲望という名の電車』の舞台の様子が写っている。スタンリー役の西田敏行さん、ミッチェル役の津嘉山さん、その他出演者がいる)

:西さんが腹へこまして(笑)。

:そうなんだ(笑)。西田君がね、スタンレーやったんだ。ブランチが東さん。

:このセットのね、鉄階段が・・・

:この鉄の階段をさ、ステラが下でけんかをして、2階へ逃げる、駆け上がるときにね、カンカンカンカン!と音を立てて上がりたいと、そのためにどうしても鉄の階段がほしいと、僕がプロデューサーに駄々をこねて。こんな鉄の階段を作るってのは今までないしね。「木じゃどうだ?」って言われたんだけども。でもよかったね。

:僕はね、ステラが上へバーって上がって行った後「ステラー!!」って呼ぶんですが、鉄階段を思いっきりバーン!!ってたたいておりましたよ。これたたいてもね、壊れないっていう(笑)。

:あなたはね、あなたはスタンリーやってるときのほうがあなたの性格にぴったしだったんだろう?

:ええ、まあ自分ではそう思って。

:思ったことバッとやっちゃうんだね。芝居の道具なんだから直接体当たりするなっていうのに(笑)。

:そうですよね(笑)。

:結構ガンガンやったからね。

:もうそうゆう話は劇団行くとたくさんなんかありましてね。モノを壊すというともうすぐ筆頭に僕の名前が出るようですけど。ほんとはそうじゃないんですよ、ほんとうは。やっぱりちゃんと加減はしてるんです。最近はね(笑)。

:最近はね。最近は加減できるようになった。今日の医者だってさ、手をしっかり握ったり。

:ええ。あのね、脈取ったりするんでも、布団の中ですから、この辺捕まえて手が入ってりゃ平気なんですよね、普通は。でも僕はちゃんと取らないと、布団の中まさぐって腕を取って「うん、ちょっとあれかな」ってやらないと、どうもだめなんですよ。そういうのが、

:今でもやってる。

:今でもやってますね。



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