邦題「グラディエーター」

原題「GLADIATOR」


評者   

評価  

ひとこと

ほーく

むさくるしい男のむさくるしさ一杯の大河ドラマ(笑)

マキトモ

総じて映像面は古代ローマの雰囲気が出ている。ベンハーほど説教臭くはない。ムードは良く演技も上手いが、シナリオとしては並。

<コメント>

 大金をかけた時代劇ならではの、考証面からも美味しい映像が多々あった本作。また主人公が困難に打ち克つ姿は多くの観客を魅了したはず。ラッセル・クロウの演技は、信念、清廉さ、汗臭さと暖かみを兼ね備えた秀逸なものだった。なにせ復讐と人間的な暖かみを両立させたのだから…。

だが見終わった後に、今一つすっきりしないのは何故かと考えてみるに、本作の癌は仇役の若い皇帝だろう。特に後半は、ぐずぐず言い訳するばかりで、ラッセル・クロウが全てを賭けて戦うに値しない男に仕上がってしまった。これでは主人公の復讐が(「復讐は虚しい」と最後に主人公の台詞があったが)、観客にとっても虚しくなってしまう。皇帝の劣等感や嫉妬といったネガティブな内面を中途半端に持ち出した脚本が疑問だ。劣等感を吐き出させて人物像に陰影を持たせるという常套的手法が、裏目に出た。

皇帝と奴隷が剣を交える大円団は、本作では、やや強引に感じたが、もし皇帝が上手く描けていれば、クリアできたはずだ。愚痴を削り、演技も無表情に撤してダースベーダー化して手堅くまとめるか、あるいは準主人公格として起こし直し、傑作の域に持ってゆくべだったと考える。基本構造は復讐劇なのだから、仇役が主役を食うくらいで、ちょうどバランスが取れるはず。ホアキン・フェニックスの貴族的な風貌は、役柄によくマッチしており、決して人選ミスや演技力不足ではないと思う。

照明の基調は、蝋燭、夕日、砂の反射光と、やわらかい茶色を、うまく顔の横に当てたもので、月並みな手法だが好感を持った。わざとらしく飛び立つ鳩以外はCG臭くない建物群や、冒頭の戦闘シーンなど、総じて大作にふさわしい大画面向きの映像。冒頭のゲルマン人との激戦シーンは戦場の泥沼感が出て良かった(このシーンは劇場での音響も良かったのでDVD+マルチチャンネルアンプで見ることを勧める)が、コロシアムでの闘剣シーンはちょっとアップとショートシーンのつなぎ回しで殺陣を誤魔化したかな。シナリオ方面の考証無視は意図的なもので、許されるだろう。

主人公の家族をイメージ映像にとどめ、詳細を描かなかったのは賢明だった。

(マキトモ)


主演 ラッセル・クロウ@マキシマス
共演              ホアキン・フェニックス@コモドゥス、コニー・ニールセン@ルッシラ、オリバー・リード@プロキシモ、ジャイモン・ハンスウ@ジュバ、リチャード・ハリス@マルクス・アウレリウス、デレク・ジャコビ@グラックス
監督 リドリー・スコット
原案 デヴィッド・フランゾーニ
脚本 デヴィッド・フランゾーニ、ジョン・ローガン、ウィリアム・ニコルソン
衣装 ジャンティ・イェーツ
視覚効果スーパーバイザー ジョン・ネルソン
撮影 ジョン・マシソン
音楽 ハンス・ジマー、リサ・ジェラード
編集 ピエトロ・スカリア
OST 未購入。
2000年作品 2時間35分

参考

http://www.uipjapan.com/gladiator/

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/movie/archive/glad.htm

http://moving-movie.hoops.ne.jp/movie000736.htm

http://www.sankei.co.jp/mov/review/2000/gladiator/index.html

http://www.elife.co.jp/community/en_milk/c_gladiator.phtml


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