この小説は、八犬伝の主人公のひとりである犬塚信乃の父、大塚番作の物語です。八犬士の物語が始まる前の話ですから『前八犬伝』です。馬琴の原作では第十五回から第十九回にあたる部分を、自分なりあるいは現代的な解釈を加えて、再編成するものです。
以前『真説・犬塚番作伝』という小説を、このサイトで公開していましたが、基本的なことはそれとほとんど変わっていません。ただ前作は原作に沿うことにこだわりすぎたきらいがあり、なんとも窮屈な感じがしたので、番作の心情を中心に、もっと憶測なり想像なりを加えて、話を組み立て直すつもりです。
話は室町時代中期ですが、あんまり正確な考証は行ってません。とくに会話文などは不正確で、当時の人間がそんな現代的な言葉遣いをし、そんな現代的な考え方をしたとは到底思えませんが、これは馬琴の原作も同じことで、多分に化政期の文化や風習が入っていて、だからこそ八犬伝が人気作品であったのだろうと思います。ですからこの辺りは、それこそ窮屈にならないように、自由にやっていきたいと思います。