展覧会の紹介

     this is gallery(中央区南3東1)

 よくいわれることだけど、いま平面は、そうとうむずかしいところにきているようだ。
 絵を書くということ自体に対してべつだん何も疑問を抱かない人はべつにいいんだけど、現代美術とよばれる業界では、インスタレーションやパフォーマンス、ビデオといった表現手段が主流になってきていて、単なる絵画が活躍できる余地は相当狭まってきているのが現状なのだ。筆者も
「なんでかなー、べつにタブローだっていーじゃん」
と思うのだけど、筆者が思ったところで状況は変わらないんだよな。すくなくても
「どうして、絵をかくのか」
という自問のない絵画が、現代美術として認められるのは、むずかしいんじゃないかと思う。

 で、今回の境さん。
 学生なのに、ただの絵画ではないぞー、という試行錯誤を全面的に展開している。
 そこにすごく好感を持った。

 いちばん面白かったのは「main street portrait」という平面作品。
 自分の似顔絵を持った子供などを写真に撮り、それをパソコンプリンター出力して支持体(キャンバスもしくは板)に張り、その上からアクリル絵の具か何かで絵をかいている。
 登場しているのは50人弱。これだけの似顔絵をかくだけでも大変だったと思うけど、それをわざわざ本人に持たせて写真に撮って並べる…っていうあたりに、ひねりを感じさせますねー。
 ただ気になるのは、上からかいた絵が、階段のある室内風景なんだけど、七月展かどっかで見たような憶えがあるんだよなー。気のせいかな。

 「旅」と題した作品。札幌で一番人通りが多い(といわれる)4丁目交叉点を、写真に撮り、そのイメージを板に焼き付けている。
 その手法自体は、この春札教大を卒業した出田郷がかつてやったものではあるが、モティーフの方向性が全く異なる。

 あるいは「ウラヒカリ」という3つの連作は、カラー写真の上からニスを塗った作品。それだけの操作で、画面は写真とも絵ともつかない輝きを帯び始める。アプローチとしては、リヒターをどこか思わせるのだ。

 似顔絵を見る限り、筆力はありそうです。
 これからどんな試みをしてくれるのか、楽しみな若手です。



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