展覧会の紹介

神谷ふじ子金属造形展         2002年4月4日(木)〜10日(水)
                 丸井今井札幌本店(中央区南1西2)大通館8階ギャラリー

 ぼやぼやしているうちに展覧会が終わってしまって、どうもすいません。
 長く書こうとすると、かえって遅くなっていけません。取り急ぎ、神谷さんの魅力を、つたない言葉で短めにまとめてみようと思います。
神谷ふじ子さんの新作 神谷さんは札幌在住の七宝・金属造形作家です。二紀の彫刻部に出品しています。また、北海道抽象派作家協会の同人でもあります。
 七宝、というと、お稽古事のイメージでとらえる人もあるかもしれません。ですが、神谷さんの仕事はスケールが大きいです。見ていると、七宝が金属造形の一種であることを、あらためて思い出さずにはいられません。
 右の写真は、神谷さんの新作です。
 蛍光灯がガラスに反射して映り込んでしまい、見づらいのはご容赦ください。
 これらの壁掛けオブジェは、これまでの作品と同じように「刻」と題されています。
 錆びた鉄の板の上に、緑青のかかった薄い板を何枚も重ねています。
 まるで、折りたたんだ本のページのようにも見えます。長い時の流れがそこから読み取れるようです。表面に深くきざまれたしわのような模様が、その思いを強めます。
 なかには、七宝の深い色彩が表面に見えるものもあります。
神谷ふじ子金属造形展の会場 左の写真は「廻」と題されています。傾きが、動感を強調しています。
 このオブジェも、ページを重ねたような構造がうつくしく、そこには何の文字も書かれていないにもかかわらず、わたしたちはつい顔を近づけて、なにかの物語を読み取ろうとしてしまうのです。七宝の色合いにうっとりしながら、です。
 奥には「遥」という平面作品も見えます。ルーチョ・フォンタナのように、表面にS字型の切れ込みを入れています。
 比較的安い値段で販売していたものに、薄い鉄や銅の板を何枚も重ね、斜めに傾けて透明なアクリルの筐の中に収めたものがありました。これも、重層的な構造をパッケージしたようで、いつまでも見飽きません。ほかに、首飾り、灯りなどが展示されていました。
 神谷さんは、丘珠(札幌郊外)の鉄工所などに出入りして、制作に打ち込んでいるそうです。
 二紀などに出している作品はこれまで、鉄の重量感を全面に打ち出したものが多かったですが、これからは七宝の色彩を取り入れていくそうです。「そういう仕事をしている人はほかにいないと思うんです」という神谷さんは話していました。
 この丸井での個展が終わると、こんどは東京で二紀の選抜展です。重労働が続きますが、健康に留意され、良い仕事を続けていってほしいと願っています。

 なお、2001年11月のつれづれ日録にも、神谷さんの作品の写真があります。
 栗沢町美流都での野外展の模様です。
 また、昨年の抽象派作家展の評もあわせてごらんください。

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