札幌市中央区北2東4

つれづれ日録の


2002年1月


表紙に戻る   次のページ(1月後半)へ   12月の日録へ

 1月15日(火)
 午後8時近くまで会社。

 西村計雄記念美術館(後志管内共和町)のホームページは、道内の美術館では最も盛んに更新されていますが、さいきん学芸員のNさんによるニューヨーク滞在つれづれ日記が随時掲載されていて、面白いです。
 筆者はまだニューヨーク、行ったことないんだよなあ。行きたいなあ。佐藤雅英さんも
「美術好きなら、ニューヨークは最高だよ」
って言ってたし。


 1月14日(月)
 休み。ひねもす寝ていました。

 最近、ドイツロマン派の理論的支柱だったシュレーゲル兄弟の兄の断章を読んでいます(もちろん日本語)。
 そのなかで、気に入った言葉。
 「歴史家とは後向きの予言者である。」(アテネーウム断片 80)


 1月13日(日)
 佐藤雅英写真展の会場佐藤雅英写真展 NEW YORK NEW YORK PEACE and LOVEを見てきました(コンチネンタルギャラリー=中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)。
 佐藤さんは、北海道ゆかりの画家や芸術家の肖像を撮った写真集「北の貌」などで知られます。ニューヨークは、22年前から何度も訪れていたそうです。
 「韓国でお年寄りから重たい話を聞いたあとは、ソウルからニューヨークへ直行したこともありました。2日間いて、ジャズを聴いて、美術館を見て元気になったり。17ドルくらいで、ジャズの生演奏が聴けるんだから、ニューヨークはほんとにいいよ」
 そういう短い旅のついでで撮った写真もあれば、しばらく滞在して、腰を据えて写したものもあります。
 印象に残ったのは、国際貿易センタービルはもちろんですが、80年に暗殺されたジョン・レノンを記念してセントラルパーク内の地面に設置された、「IMAGINE」と書かれた石のモニュメントでした。彼が住んでいたアパート「ダコタ・ハウス」は、セントラルパークのすぐ前にあったのです。
 佐藤さんの撮ったニューヨークは、朝が多く、あまり人はうつりこんでいないのですが、それでも、ひしめくビルに、活力や息吹のようなものが感じられます。
 写真は額付き1万円から8万円で、収益は、同時テロで被災した写真家の家族と、アフガニスタンの難民におくられます。
 20日まで。14日は休み。
 
 続いて、15日までの展覧会。
 アートスペース201(南2西1、山口中央ビル5、6階)。
 6階は、北海高校の先生による冬休み恒例の「書と絵の五人展」。
 3室あるうち、A室は、川本ヤスヒロさん(全道展会員)の個展になっています。
 川本さんの絵って、よくしゃれこうべが暗い色彩で描かれていて、見る人に、生命の重みや死を直視させます。といって、ただ重いだけではなく、その横に猫のチャメが並んでたりして、どこかユーモアも漂っています。
 今回は「生命」「コ」が、その手の重い絵。一方で、「9の数字のある自画像」(2001年、変形30)など、9の字が自画像の横にあったりして、風変わりです。
 出品作は、陶板「顔A」「顔B」のほか、油彩の「ズリ山の見える風景」(1964年 F3)「グラジョーラス」(69年、F8)「マドリード(マヨール通りにて)」(76年、F10)「コペンハーゲン(チボリ)公園にて」(99年、F8)「初夏の道庁」(同、SM)「腐った林檎」(2000年、F4)「夢(む)」(同、135×135)「チャメの空間」(同、F20)「カラマツ太郎の肖像」(同、SM)「チャメの肖像」(同、F10)「生命」(01年、F100)「顔C」(同、F8)「コ」(同、F30)「二人」(同、F8)「作品A」(同、S100)「1月4日の自画像」(同、SM)「二つの顔」(同、変形30)「2002年1月1日の自画像」(2002年、P8)。
 ほかに、松竹谷智、保原旦舟、佐藤辰舟、堤〓(くさかんむりに九)野の4氏。佐藤さんの「若鮎の二手に分かれ上りけり」、リズムがあっていいと思いました。

 5階の、札幌市書写書道教育研究会小学校部会教員展は、清兼孝生さんの「いろはにほへと」などが凝集力を感じさせました。見付天堂さん「回」も、余裕の感じられる筆遣いがいいですね。 

 あとは、きょうで終わりの展覧会を駆け足で。
 ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)のタニグチススム展が良かったです。
 谷口さんは札幌在住の陶芸家。器は、自然釉によるざっくりとした感触が特徴です。
 今回の個展では「SIGHT」「颯颯の野」といった連作が、あたかも風景のような、素焼きのオブジェで、異彩を放っていました。
 スカイホール(大丸藤井セントラル7階)は、第8回みなもの会新春日本画展
 おとなりのさいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)でも、同じく中野邦昭さんの教室の展覧会が開かれています。すごい生徒数ですけど、みなさんなかなか上手です。
 さいとうギャラリーで見た、加藤蓉子さん「夏の頃」に心惹かれました。前景にタチアオイの花と猫。その奥に畑と家、遠景に空気遠近法で青い山が描かれています。いっけん、写実的な風景画のようですが、好きなモティーフを組み合わせた絵のようです。
 市資料館(大通西13)では、SHIROTEN油彩六人展。加藤早苗さんは、おつゆがきを覚えたので使いたくて仕方ないような感じを受けました。

 以前、丸善の札幌南一条店に行ったとき、現代陶芸の評論が平積みになっていましたが、5000円以上もするので「今度買おう」と思って、きょう買いに行ったら、1冊もありませんでした。平積みになっていたからなくなると思っていなかったので、書名をメモすらしてません。参ったなー。陶芸の本っていっぱい出ているけど、大半は入門書と、骨董の見方などで、現代陶芸を論じてる本ってほとんどないんだよなあ。
 洋書のバーゲンをやっていたので、The Essential Jackson PollockとTHE PENGUIN BOOK OF ENGLISH VERSEを買いました。後者はなんと500円。ぱらぱらとめくっていたら、ブレイクの「THE NEW JERUSALEM」が載っていました。
 これに、ロックトリオのエマーソン・レイク&パーマーが曲をつけたものが、彼らの最高傑作のアルバム「恐怖の頭脳改革」に収録されています。
 ブレイクといえば、いま道立近代美術館(北1西17)でやっている「風に聴く」に版画が出品されていますね。


 1月12日(土)
 きょうも仕事。なんだかんだと忙しい週でした。
 やっとのことで札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)へ。
 第二十五回日本画美萼会展は、札幌の森山季紫鳥さんが代表のグループ。ほとんどが植物画のような作品でしたが、雪や雨などの瞬間的な表情をとらえようとしている作品があり、好感が持てました。
 湊修展。抽象画。フォルムのないマーク・ロスコ。
 にかわ絵展。道教大で日本画を習う生徒たちのグループ展。ちょっとはちゃめちゃさが足りないかな。谷地元麗子さんは、あいかわらず男くさいモデルの人物画です。
 野口裕司さんは毎年同ギャラリーの一発目を現代美術で飾ります。しかし、年初でこちらの受け入れ態勢ができていないうえ、毎年がらりと作風が変わるので、こちらとしてもどう評価していいか戸惑うひとりです。今年は「雲」などの平面インスタレーションが、桃山期や狩野派の日本美術を思わせました。

 また訃報です。なんか最近、訃報ばっかりだな。
 国際的なグラフィックデザイナーの田中一光さんが亡くなりました。「無印良品」も彼のデザインだったとは知りませんでした。


 1月10日(木)
 月刊ギャラリーが「9・11 同時多発テロとニューヨークのアート」を特集していたので買ってきた。といっても、テキストが二つ載っているだけだったけど。
 この特集では、国際貿易センタービルの近くにあった流政之さんの彫刻は爆風をものともせず助かったことになっているが、年明けの某新聞では、けっきょく救助活動のため壊されてしまったらしいと書いてあった。どっちが正しいんだろう。
 たくさんのオフィスが入居していたビルだけに、失われた版画などの作品が相当あったらしいのは知っていたが、すぐ近くにあったカルダーの作品などは木っ端微塵になってしまったらしい。イサム・ノグチの赤いキューブは助かった、とあった。


 1月9日(水)
 毎日仕事の終わるのが7時過ぎなので、どこにもいけない。
 また訃報です。
 けさの北海道新聞によると、造形作家の竹中敏洋さん(恵庭市)が亡くなりました。70歳でした。
 日高管内静内町の「英傑シャクシャイン像」のほか、札幌・月寒公園の群像「永遠の像」などがあります。これらはわりと‘濃い目’の具象彫刻ですが、冬になると恵庭のサッポロビール工場の庭で、水を噴き出させて氷の立体をつくるなどの活動もしていました。 

 アートな本棚、美術書のリストに7冊追加しました。「モンマルトルの枯葉」についても書きました。
 きょうも雪かきしました。


 1月8日(火)
 訃報。
 朝日・読売夕刊によると、美術史家の千野香織さんが昨年12月31日になくなっていたことが分かりました。49歳。

 アートな本棚を一部更新しました。


 1月7日(月)
 仕事始め。
 今年はたまたま遅くなりました。もちろん就職以来、最も遅い記録。


 1月6日(日
 きょうは街へは出かけませんでした。

 すごい本を読み終わりました。柄谷行人著「トランスクリティーク」です。批評空間という出版社から昨年10月に出ています。
 カントとマルクスの思想を読み直し、資本と国家に対抗しうる運動の理論を模索した思想書です。これは、思想史の金字塔といっていいのではないでしょうか。
 目からウロコ落ちまくりでした。たとえば、剰余価値とは流通過程から生まれる、とか、カントの「物自体」は「他者」のことであるとか…
 ただ、カントやマルクスを全然知らない人が読むにはちょっと難しいかもしれません。もっとも、「純粋理性批判」や「資本論」を読むよりは易しいと思います。挑戦しがいのある本です。

 むちゃくちゃ遅れてしまいましたが、昨年の「朝鮮王朝の美」について、ずっと気になっていたことがあったので駄文を草しました。まあ、読まなくてもいいです。


 1月5日(土)
 午後、道立近代美術館(中央区北1西17)にこれくしょん・ぎゃらりいを見に行きました。
 これがなかなかよいので、みなさん、A★MUSE★LANDを見た際はぜひこちらもどうぞ。
 1階は「風を聴く」という題で絵画、版画、ガラス工芸など48点を展示。風は目に見えず、そのまま画面に表すことはできないので、いろんな作家が画面に定着させようと工夫をしているのが分かります。
 また、直接風をかき表そうとした作品でなくても、風が感じられるものも数多くあります。
 風とはなかなか、応用力の広いテーマですね。
 また、同美術館は今年で開館25年にあたるだけに、すでにかなりのコレクションを持っています。何度か常設展は見ていますが、そのたびに「へー、こんなのも所蔵してるんだ」というのがあります(今回なら、例えばシケイロスの版画)。そういう作品に出あうのも常設展の醍醐味なのではないでしょうか。
 2階は、同美術館の収集の柱の一つになっている、ガラス作品を集めた「ガラスの詩」と「北海道美術・60年代の動向V」です。後者のテーマは、版画です。
 展覧会の紹介コーナーに、駄文を書きましたので、併せてお読みいただけると幸いです。

 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)で、異形小空間20人展
 出品者は、
青木崇 市川義一  M・ババッチ 川村雅之 古賀和子 西城民治 鈴木功一 瀬野雅寛 高坂史彦 竹田博 D・ヒサコ 林教司 林玲二 兵藤いずみ 平松和芳 藤川弘毅 毛内康二 丸勢文現 山岸誠二 吉住ヒロユキ
です。
 なにせ、たぴおの空間に20人ですから、いきおい小品ばかりになります。
 みなさん、自分の路線を追求しています。その中で、瀬野さんの平面3点は、カリグラフィー的な勢いがあっておもしろく感じられました。廃品アーティストのババッチさんは珍しい5弦の楽器のようなオブジェを出品しています。
 19日まで。

 それから、狸小路1丁目の帝国座で遅ればせながらアニメ映画「千と千尋の神隠し」を見ました。
 いや、とにかくスゴイっす。宮崎駿監督のイマジネーション大爆発ですね。
 彼と同時代に生きて、新作を見られることの幸福さを思います。


 1月4日(金)
 美術に触れられる場所がまだ「年明け」になってないので、家具屋さんのセーヌインテリア(白石区本通18北)に行ってきました。チラシに、6日までの初売りセールで、絵画を安く売っていると書いてあったのです。
 店内の一角に、額縁店よりもびっしりと、分野も作者もごちゃまぜに、びっしりと売り絵が並んでいました。シャガールのポスター、片岡球子や上村松園のリトグラフ、中村善策の色紙、よく知らない「画伯」の花の小品などです。どの札にも名前の後に「画伯」ってついてました。
 上野山清貢「魚」(6号)が48万円でした。悪い絵ではありませんから、高くはないと思いますが、「美術年鑑」のたぐいだと200万だか300万円というのはほんまかいな、という気もします。
 川村正男さんの「メキシコ風景」(4号)がありました。やさしくほんわかしたタッチは川村さんらしいです。でも、いつごろのだろう。
 平日とあって、客より店員のほうが多く、絵だけを見てさっさと帰るのはちょっと勇気がいりました。

 帰途、白石古書で米坂ヒデノリ著「間道を行け」を購入。この店にあるのは文庫と漫画がほとんど。古い「AERA」や「財界さっぽろ」まであります。だれが買うんだ。
 それから、岩本珈琲(栄通18の4の1)で珈琲を飲みました。絶品。
 じつは筆者は、水筒持参で出勤しているカフェイン中毒者なのです。

 リンク集のレイアウトを大々的に変更しました。
 古いブラウザソフトを使っている人のためにフレームは使わない主義なので、けっこう大変でした。
 読者の方でおすすめのリンク先があれば推薦してください。今後も充実を図りたく思っています。


 1月3日(木)
 本がごちゃごちゃと積みあがった本棚の再配置に着手したが、いっかな事態は好転しない。根本的な問題はやはり本の数が多すぎることなんだろう。

 ことしは道立近代美術館芸術の森も5日から、ギャラリーの大半は7日以降からとあって、あまり行くところがない。

 「アートな本棚」の、昨年の美術書のリストを追加しました。


 1月2日(水)
 さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)、年末年始恒例の小品展「2001→2002展」(ほんとは矢印じゃなくて右向きの三角なんだけど、JISにない)。毎年増えている参加者ですが、さらに8人増えて76人になりました。(昨年はこちら)ただし、昨年に比べ、ふだんと違う作風のものを出してきている人は少ないようです。
 手堅くまとめながらもオヤッと思わせたのが櫻井マチ子さん「白い訪問者」。イコンが描かれた中央の扉を開くと、羽やポプリなどをあしらったコラージュが花のように配置されています。若手彫刻家の加藤宏子さんが「ImprovisationV」と題した抽象の平面を出しています。銀と黒による画面が、お城の石垣のようです。
 絵画では、全道展のベテラン竹内豊さんが「インドネシア、バリ島の棚田」という、これまでにない題材。八木保次さん、中田やよひさん、折戸朱実さん、白鳥洋一さんら、ふだんモノクローム的な画面をつくっている人たちが、カラフルな表現をしているのも目立ちました。関川敦子さん、渡邊慶子さん、内藤克人さんら版画勢はいつもどおりの作品。
 6日まで。

 以前の職場の同僚およびその家族と、キリンビール園で新年会。

 新年にあたり、ホームページを若干イメージチェンジしています。
 表紙のデザインを一部変更しました。「仕掛け」も何カ所かつくりました。
 i-modeでも「つれづれ日録」が一部読めるようにしました。
 また、新コーナー「アートな本棚」をつくりました。美術関連書にしぼって、紹介、感想などを書いていくコーナーです。例によってみなさんのメールをお待ちしています。


 1月1日(火)
 あけましておめでとうございます。
 新千歳空港からバスで帰ってきたら、市内の路線バスは早々と運行を切り上げてるし、家の前はすごい雪で、雪かきに2時間以上かかるしで、どうにもさえない年明けであります。
 何はともあれ、今年もよろしくお願いいたします。

12月のつれづれ日録へ