展覧会の紹介

     ギャラリーどらーる(札幌市中央区北4西17、HOTEL DORAL)
9月1日(土)〜30日(日)

 画面をアルファベットなどの記号で覆いつくす抽象画をかいている作家。以前に比べると、遊び心が出てきたというか、画風に変化が見られる。

 筆者が見た範囲でいうと、1997、98年の札幌時計台ギャラリーでの個展や、98年に芸術の森美術館で企画、開催された『北の創造者たち」展などでは、ひたすら同じような筆勢で短い線を丹念に引く繰り返しの行為が、機織、あるいは日記のようだった。禁欲的な仕草のなかに、日々のささやかな息遣いや、暮らしの実感のようなものが、そっとこめられているように思えたのだ。
 その丹精さと、目がちかちかするほどのまばゆい色彩の対比も、面白かった。

 ところが、昨年の札幌時計台ギャラリーの個展あたりから、ミニマルアート的な反復が次第に崩れ始めている。
 今回は、大きな作品は、昨年の個展でも見た(と思う)「白」「真紅」などと、今年の作品「イニシャル」の連作。題名の通り、小さなYとTが繰り返し登場して画面を埋め尽くしている。
 でも、よく見ると、それ以外の数字やアルファベットもあちこちに描かれており、これまで規則正しかった並び方も、かなりくずれてきているのだ。「イニシャル(U)」なんて、真ん中へんに YASUKO って書かれてるし。
 もっとラフな感じが出てきているのが「雑記帖より」の15点。小品で、グワッシュで描かれている。
 こちらは文字もピンクなど明るい色で、筆遣いもうきうきと躍っている感じがする。「白」「真紅」などが、同じ日誌でも作業日誌なら、こちらはほんとうに、気のむいたときにつける「雑記帖」だなあと思う。

 これからストロークはより自由になっていくのだろうか。興味深く見守りたい。
 帯広市出身、江別在住。自由美術協会、全道展の会員。