暴力対暴力。

物語が進むにつれ、敵の凶悪化、強化は著しく、苦戦が続く。

ベルト「アークル」に収められた霊石「アマダム」から伸びた神経組織により変身する雄介はいずれそれが脳まで達し、破壊衝動に支配された生物兵器になるかもしれないと言う設定がある。

敵を倒すには強くなるしかないが憎悪を燃やしていくと伝説で言う「凄まじき戦士」となって取り返しの付かないことになりかねないのだ。

47話「決意」48話「空我」49話「雄介」ではゼロ号と呼ばれていた「究極の闇をもたらす者」ダグバとの最終決戦が描かれる。

いきなり人間を発火させて焼き殺す大量殺戮がゼロ号によりはじまった。
倒すには凄まじき戦士(黒いクウガ)になるしかないと悟った雄介はその戦士に変身する決意を固める。

今までかかわった人に一人ずつ雨の中挨拶をして廻る雄介。この戦いが終わったら冒険の旅に出ると言う。

そして・・。


ダグバ(ゼロ号)との戦いがはじまった。

この戦いは光線や必殺技の応酬ではなく最後人間体同士の戦いとなる。

暴力をふるうのが楽しくて仕方ないというように笑いながら拳を振り上げるダグバ。
拳を使う事しか出来なかったことを恥じるように泣きながら拳に力をこめる雄介。

最終決戦が人間体同士の殴り合い・・というのに特撮ファンは激怒したことだろう。
又、小さい子供とともに見ていた親も殴りあい、血まみれになっていくこのシーンに眉をひそめたことだろう。

しかし私は見ていて泣きながらこれでいいんだと思ったのだ。

バーチャルなアクションゲームで殴る事、痛いこと、血が出ることを忘れてしまった子供に暴力というものを教えるためにも。

正義・・。というものがいかに不安定で危ういものかを教えるためにも。

最終回 この戦いの後、3ヶ月後の雄介以外の生活が描かれる。

それぞれが未確認出現以前の生活に戻っていく。そして雄介は・・・・。



生きていた。遠い外国の海岸で些細ないさかいで騒ぐ子供たちにお手玉を見せ、みんなを笑顔にしてそこをはなれてゆく。

しかしその顔には以前の笑顔は無い。

私はこれでいいのだと思う。

究極の闇をもたらすものを倒したクウガはこの世界で最も強い存在なのだ。
たおした「グロンギ」とてこの世界のひとつの種族。その種を滅ぼしたのだ。

勝利者となったクウガは大笑いしてもいいのだろう。しかし雄介は?

拳を見つめて無言だった最初の頃の雄介。戦う事より話し合う事で解決しようとしてきた,また園児たちにもそうさとして来た雄介。

笑顔を守るため,大切な人の泣き顔なんか見たくない!と戦ってきた雄介。

拳で得た勝利は本物ではない事を誰よりも知っている雄介はきっと勝ってもみんなと一緒に勝利を喜ぶ気にはならなかったのだろう。

いつか,みんなが自分を大事にし、他を思いやる心を持ったとき二度とクウガにならなくてすむ世界が来たら雄介はきっと笑顔をとりもどせるのだろう。

「グロンギ」のナンバー2.「バラのタトゥの女」は「リントは我々と等しくなった」と言い残した。
一条刑事に「お前も仲間を狩るではないか・・」と。



人がみんなそれぞれ自分の笑顔だけを求めるなら(そのエゴが)その時クウガの刃は人間に向かわざるをえないのかもしれない。