<第1書架>

読んだ本を思いつくまま
並べてみました・・・!

「火星の土方歳三」(吉岡平 ソノラマ文庫)
 傑作、というより「大怪作」と呼んだ方がいいと思う。

 「新撰組」ファンの方におすすめしたいのもそうだが、かってエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」に熱中した世代には特に薦めたいモノだ。
 
 時期的に云うと、火星シリーズ第一巻のラストで、火星の大気消失の危機を救ったジョン・カーターが一時地球に帰還したアトのお話になると推察される。
 五稜郭の戦いで戦死したハズの土方がさらなる戦いをもとめて、火星へとテレポート!群雄割拠の火星世界。かのジョン・カーターによって新秩序が誕生しつつあった火星で土方は新たに好漢たちをあつめ、大暴れ!仲間たちをあつめ、ヘリウム・シティに浪人隊の屯所をつくっていくとこなんざ、ほとんど新選組(笑)大元帥不在のため混迷の巷となったヘリウム市を誠の文字を染め抜いた段だら羽織をまとった浪士隊をひきいて、疾走する土方(うーむ、絵になる!!)

 奇想天外をいうのもおろかな、ともかく一読して欲しい一篇。

 なお、舞台を「金星シリーズ」に移しての姉妹編「金星のZ旗」、そしてジョン・カーターその人の地球における半生を伝える「南軍騎兵大尉ジョン・カーター」もある。共に、ソノラマ文庫。
「Hyper Hybrid Organization 組織誕生」(高畑京一郎 電撃文庫)
 本編で主人公の(ハズの)山口貴久が加入を決意する「悪の秘密組織ユニコーン」が如何にして誕生したのか、を明らかにしたHHO外伝シリーズの最終回。
 山口にとって、ユニコーンの幹部は速水敬介もそうだし、村上玲奈も、高杉一也も、そして佐々木隼人もそれこそ雲上人であって、その人柄や来歴など知るよしもない。とうぜん読者だって判るわけもない。
 そこにスポットをあてたのが全3巻となったこの外伝である。
日本の裏社会でその名を誇る斜道組。その派閥争いの焦点となった武闘派・阿部と知性派ヤクザの速水の対立に絡んで、米国から秘密裏に帰国した三人の科学者がたずさえてきた強化人間(「仮面ライダー」をイメージしてもらえれば良い)を創り出すハイブリッド技術は、新たな新組織を誕生させることになる。
 そしてそれは大勢の人間の運命を変えていくことにもなっていく・・・。

 ユニコーンの母体となった斜道組がヤクザ組織なだけに、やーさんだらけのお話である。あ、科学者さんもいるし、女医さんもいたりするのだが、どっかズレてたり、はみだし者だったりする。まともなヤツなどほとんどいないお話である。よくもこんなのがライトノベルで出せたモノだなぁ、と感心もする。
 とくに宮内志郎なるヤクザの若親分!こんなのにハイブリッド手術して、ホントにどうなるのか。文字どおり、狂人に核兵器を与えたようなモノであって、正編での展開がおそろしく不安なような、楽しみなような・・・。山口貴久と、宮内の出逢いに期待大!
「大陸の嵐」(花田一三六 スニーカーブックス 角川書店)
 前作、「野を馳せる風のごとく」の一件から12年後の物語。
「大陸」最強の国家、カルディア帝国はついに北への侵略を開始し、ゼニツア、ジェラルスタン、ルマイラの三国は、存亡の危機にさらされることになる。滅亡の危機を回避すべく、ルマイラ王国の重鎮、ルバートはかくして大陸史上かってなかった北国三国の同盟締結という重大な任務をおび、遊説の旅にでる。はたして、対カルディア帝国の同盟は成立するのか?
 これはそんな物語である。
 かってない大戦争を目前に、いろんな人物が登場する。
カルディアの皇帝セヴェロスはむろんのこと、軍師、勇将、密偵、娼婦売国奴、そして一般庶民と、人間像をあげるのにいとまがない。そういう変化にとんだ人間たちを魅力的に描きあげている筆力もさることながら、本書には類書とは一線を画す違いがあるように思う。
 それはこの作品が、およそ千年後の、それもパラレル・ワールドにおける歴史小説としての体裁をもっているということだ。本書をひもといていくと、読者はあたかも実際にあった事件をモデルとした歴史小説を読んでいる錯覚にとらわれる。

 魅力ある人間群像、とぼくは評した。が、作者はそれに決して溺れてはいない。一歩手前で、理性をもった筆力で描ききっている、そんな気がするのだ。
 たとえば「坑道余話」という章がある。ジェラルスタンの軍師、フーシェと、炭坑で働く無名の少年のささやかな出逢いのエピソードである。凡庸な書き手ならば、あるいはこの少年がのちに大物に成長し、ジェラルスタンの発展に大きく寄与した・・・などというストーリーを展開したかもしれない。
 が、筆者はそうした「誘惑」に抗して、その少年を無名の存在のままで本書の本筋とは関わりのないエピソードとして処理している。そっけないまでのそうした扱いこそ、本書を類似の作品とはまるで別の秀作として存在させているのではないだろうか。
 ただし、である。本作品に不満がないわけではない。セヴェロスと彼の帝国にとって重大な岐路となった三国同盟軍との決戦、「ミレイ川の戦い」にどうしたことか、かのダリウス雄姿がないこと、これである。当時、ダリウスが健在だったことは明かなのに、どうして彼はセヴェロスの陣中にいなかったのか?できたら、「大陸の嵐・外伝」においてでもその間の事情を明らかにしてほしい。そんな勝手な願いとともに、拙文をむすぶとする。(97,11/16記)

 その後、著者の花田一三六さんは、練達なストーリーテラーであることを証明し、幾多もの秀作を世に問われている。今後が楽しみな作家さんの一人である。  
「野を馳せる風のごとく」(花田一三六 角川スニーカー文庫)
 ひとつの大陸があった。
本書は、群雄割拠の時代、のちに大陸統一の英雄として知られたカルディア帝国皇帝、セヴェロスと、彼によって滅ぼされたアバール大公国の世子、ダリウスとの出逢いの物語である。
その物語を、おそらくは千年後の歴史家の視点でもって語っている。
それも凄く熱い視線でもって、である。
かくも熱のある筆でもって描き出されたのだから、セヴェロスにしろ、ダリウスにしろ本望だろう。一読して思ったのは、まさにそのことなのだ。どうすれば、こういう英雄伝が書けるのだろう。できたら、ぼくもこういう文章をつづってみたい。酒を一杯飲ったような酩酊感とともにそう思ったりする。

 本書の主人公、ダリウスはまさに無双の英雄である。それもむじゃきな子どもがそのまま大戦士として成長したような存在なのだ。したがって彼に仕える連中の苦労も並大抵のものではない。が、どういうわけか、ダリウスと共に喜んでつきあっているという印象がある。
従者たるキルスとラザーク、愛妾のアスティア、はむろんのこと、後世「豪商」の名を伝えることになる抜け目のない商人・コルネリオもダリウスに惚れ込むありさまである。
これほどのパワーのあるキャラというのは、ちょっと僕の記憶にもない。奔放さという点では、「グイン・サーガ」のスカールが匹敵するかもしれないが、存在感では一歩を譲る。
グインその人といえど、ダリウスの天衣無縫ぶりのまえには分が悪いだろう。
本書を読んでいくと、そうした感慨を覚えるほど、魅力的なダリウスという大戦士、そしてそれを流麗な文章でもって描き出した作者の力量には感嘆を禁じえない。
本書を刊行して1年後、作者は「大陸の嵐」(角川書店)なる新作を上梓した。ダリウスの活躍よりおよそ10年後の「大陸」の物語。これまた、楽しみな一冊!
「ヴェロニカの嵐」(茅田砂胡 C・novels fantasia)
 クラッシュ・ブレイズ・シリーズ第三巻。
本書を一言でいうなら、茅田砂胡「十五少年漂流記」バージョンということになろうか。正確には少年・少女だし、また人数も12人なのだけども。冒頭、よりによってリィが裁判の被告として立ち現れる。なんでまた、そんなことに・・・?読者の疑問に応えるのは、次の章から展開される物語となる。
 リィとシェラ、そしてジェームス、ハンス、ファビエンヌ、フランクら総勢12名、連邦大学の林間学校に参加することになった面々。数百光年を旅し、目的地に到着するが、そこはヴェロニカとはちがい、まったく未知の人跡未踏の惑星だった。なにかしら、とんでもないトラブルに巻きこまれたらしい。リィたちは否応なく過酷なサバイバル生活を余儀なくされる!

 って、まぁ普通の少年・少女だったら一巻の終わりとなるところだけど、あのリィとシェラが参加しているのである。まちがってもヘタなことになるハズもない。水を得た魚とは彼らふたりのこと。全員をリードし、救援がくるまで大活躍をすることになる。
 にしてもリィの目標って、「めざせ、一般市民!」だったハズ。だとしたら、完全に破綻してるゾ?以前から二人を知っているジェームスたちはもちろん、一連のサバイバル活動で初対面の生徒たちにもリィたちの特異性は十二分に認識されたとおもう。とくにジェームスを助けるため、リィが大怪我をして、その治療をした一件。あの応急処置、とてもじゃないが尋常なレベルではない。
 リィのその異常なまでの天才は生徒たちに知れわたってしまった。今後、コレがどんな影響をおよぼしていくのか、興味ある問題である。
 
 そして無事に救出されたのもつかのま、リィは生徒たちの一人から訴えられ、被告となる。その席上、ヴァレンタインクが被告弁護人と化すシーンもあったりするのだが、その顛末は読者が直に読んでもらうとして、僕にとって、本作品はかのヴェルヌの先行作品を想起させた。


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