コレが茅田砂胡「デルフィニア戦記」だ!

  
 
 中央公論社からブックス版により18巻。じつに長大な物語ではあるのだが、いったんハマると、まさに息もつかせぬ
勢いで物語にのめり込んでしまう。この物語の唯一の欠点は、それこそ終りがあると云うこと!そう断言してもいい、そ
んな魅力が、このシリーズにはある。
 
 第1巻から4巻までは、王座奪還篇ともいうべきストーリー。
ウォルとリィの両主役を初め、デルフィニア国中枢の人々、メインのキャラたちの為人が披露されている。
(第一部完結して3年後の設定で)5巻から以降、それこそいろんなパターンの物語が展開するのだ。
ウォルの元恋人が出現したり、宮廷すべてを巻き込んだ愛妾騒動、大貴族の反乱、裏切りによるデルフィニア軍の敗
北、宮廷舞踏会、大海戦・・・等々。むろんそれにともなって続々と新たなキャラたちも活躍している。
 デルフィニア側ではシェラ、ラティーナ、ポーラら物語の根幹に関わる重要なキャラたちが登場するし、また敵側では
オルテス、ゾラタスというウォルの終生のライバル王が本格的にカオを出してくる。
この二人の隣国の王。タイプはまるで違えども、なかなかに「味」のある人柄というべきで、一概に否定できないキャラ
であったりするのだ。
むろん、わがウォル王もこれまた一筋縄ではいかない性格の持ち主というべきで、一見無類の好青年ではあるのだが
すごく冷徹な一面をも秘めている。
そういう重層的なキャラの書き分けが、この物語の魅力のひとつともなっているのだとおもう。
 
  ところで、リィこと、グリンディエタ・ラーデンのこと。
異世界よりやってきたリィと、放浪の戦士ウォルとの出逢いは、デルフィニア国ひいては大陸全土の歴史を大きく変化
させてしまう。後日、二人の相談役ともなった「魔法街」の老賢者によれば、闇に呑まれ込もうとしていたアベルドルン大
陸を救うためリィが呼び寄せられた・・・とのことであるが、それだけではないような気もしている。
リィは最終的には自分の属する世界へと還っていくのであるが、この世界とそこに生きた人々に学んだことが実に多く
あるのではないか?というか、還っていったリィのその後の姿をみていると、むしろリィ本人のために、このデルフィニア
世界行はしくまれたのではないかな?
 リィのもつ人間嫌いを和らげるのが目的だった。

そんな風にも考えたりもするのだが、如何なものだろうか?

この作者には、他に「スカーレト・ウィザード」や、デルフィニア世界より帰還したリィとシェラの物語「暁の天使たち」シリ
ーズ等々がある。とくに後者は、「スカ・ウィ」の登場人物とのコラボレーションが楽しいシリーズ。
それも全6巻、外伝2巻で完結。
現在は、その後伝の位置づけで<クラッシュ・ブレイズ>シリーズがスタート。
2005年11月の時点で、「嘆きのサイレン」「スペシャリストの誇り」「ヴェロニカの嵐」「パンドラの檻」の四冊が刊行。
 
 そして、2006年3月末、完結から7年の歳月をへて、デルフィニア戦記外伝「大鷲の誓い」が刊行さる!
   

 若き日のバルロとナシアスの運命の出逢いの物語。そして、そのラスト・シーンで「その後のデルフィニアの面々」が
語られているのが、ファンにはたまらない!リィと彼らの再会は、真実かなわないのかなぁ? 06,3.29記す