[5]「マーカス岬奪還」
昭和18(1943)年12月初め、長いジャングルの向うにマーカス岬が見えてきた。イボキを発ってから約2ヶ月、やっとここまで到達したわけじゃ。飛行場近くに敵兵や地雷がないかを確認するために、夜、わしは先鋒隊として這って近づいた。しかし飛行場を守っていたのは敵軍の兵士ではなく、島の原住民じゃった。どうやら敵軍に雇われていたらしく、逃げられんように足がつながれておった。
そこでわしらは武力をもって威嚇し、飛行場を奪回することに成功したわけじゃが、すぐに敵軍が攻撃を仕掛けてきた。敵軍の戦車が近づいてきたため、わしは一升瓶ほどの大きさの高射砲の弾を手にとって戦車の進路に置き、すばやく身を隠したんじゃ。「ドーン」という轟音とともに戦車の一部が破壊されてキャタピラが外れた。マーカス岬に着いて4ヶ月ほどは、そうやって飛行場を敵から守る任務に従事しておったんじゃ。またその頃には戦友の多くが戦死しておったのじゃが、ダミーの松明(たいまつ)を焚いたり、戦死した戦友の軍服を脱がせて干したりして、まだ多くの日本軍がいるように敵に見せかけるというようなこともしておった。
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ニューブリテン島 |
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