東京大学秩父演習林は荒川の源流域にあり、秩父湖の西側で国道140号線(秩父街道)より南の
滝川側にある樹木園と、北の入川側にある演習林とがあります。
樹木園については毎年定期的に自由見学日が設けられて開放されています。
そして多種類の樹木について見学・解説が受けられます。
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秋の自由見学日は例年であれば紅葉がちょうどよい時期のはずですが、今年はちょっと早いようでした。
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見学コースの中には滝川軌道跡があり、かつての森林軌道の一部を歩くことが出来ます。
滝川森林軌道は入川と滝川との出合(合流点)の川又から滝川にそって引かれた約5kmの軌道敷きです。
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歩けるのはそのうちの2kmほどで、その間のレールは剥がされていて存在しません。
まくら木もまとめて道の脇に片付けられています。滝川軌道は昭和23年に全線開通し、
昭和44年まで使用されました。
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軌道跡には2箇所ほど切通しがありましたがトンネルはありませんでした。
現地の案内板によれば滑沢近くに滝川隧道が、そしてもう一つ奥のほうにもあるようになっていましたが。
軌道跡の途中から国道側に登っていって見学コースは終了です。
せっかくここまで来たのでこの後、単独で入川側の軌道跡に移動しました。
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国道から川又の集落に下りて入川橋の下をくぐるようにして進むと入川林道となり
キャンプ場と観光釣り場があります。その観光釣り場から奥が東大演習林ということになり、
ゲートがありますが徒歩では入れます。ここは十文字峠への登山道でもあり、歩くだけならば特に規制はされていません。
ちなみにすぐ手前の観光釣り場の駐車場に車を停めることが出来ます(500円)。
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ゲートからはさらに入川林道が続きます。
渓谷側には軌道敷きの廃材レールを活用したガードレールのような手すりがところどころにありました。
もともとは川又からのこの林道部分も軌道敷きだったのです。
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約1.5km歩くと分岐が現れ、下に降りていくと十文字峠への登山コースになり森林軌道敷となります。
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分岐を下るとすぐに軌道レールが現れますが、この場所は複線になっており
トロッコのすれ違いが行なえるような形になっています。
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そしてこの先は不十分ながらもレールの存在はずっと続き、右側が岩盤、
左側が渓谷という位置を縫うようにして緩やかに赤沢谷出合の終点まで登っていきます。
この軌道の起点は入川と滝川の分岐にある川又八間橋(国道の入川橋の下)で、起点からの
距離は5km以上あったそうです。(先の林道分岐から赤沢谷出合までは2.9km、標高差は150m位です。)
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この軌道敷は昭和11年に赤沢出合まで完成し、木材運搬に利用されましたが
その後トラック輸送に変わって使命を終え、昭和44年に一旦は廃止されました。ただ、
上流にある発電所の取水口工事のため再活用されたこともあるとのことです。
後から知ったことですがこの赤沢谷出合から上部にも2kmちょっとの軌道敷き(赤沢上部軌道:昭和26年開通)
があったそうです。現在ほとんど廃状態らしいですが。
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(赤沢谷出合にあった森林軌道を説明した看板)
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後日、川又八間橋周辺を確認しました。
国道から下って300mほどのところに観光釣り場の案内とともに木製の橋が架かっています。
これが川又八間橋ですが板敷きの下は鉄骨構造です。
手前にある小屋は「車庫」となっていますので何か軌道関係の車両を保管したところだと思います。
また橋の向こう側にも何かわからない小さな小屋があり、手前にレール材を使用した基礎のような構造物も見られます。
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橋を渡って対岸を見上げるとなんとも古めかしい「便所」が見られますがかつて建築会社の事務所が
あったのだとか。そして滝川森林軌道はここから滝川との合流点まで下り、滝川に沿って登っていきます。
この二つの軌道の合流点、つまりこの画像の手前付近は方向転換可能なデルタ線で構成されていたようです。
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