秋葉街道と中央構造線U

 前年に続き、今年はいわゆる点線国道の152号線を南からたどり、 つながっていない峠を訪ねてみました。もちろん今回も林道その他の寄り道つきです。

 2005年5月

 中央構造線は日本列島を縦断する大断層で秋葉街道、 つまり国道152号線を経て諏訪湖で糸魚川静岡構造線と交差しています。 この大断層があるために国道152号線は青崩峠 地蔵峠の部分が永いこと建設できずにいるのだそうです。 (実際はそれぞれ林道で迂回しています)

(画像をクリックすると拡大できます)


 国道1号線で富士川を越え、静清バイパスで安倍川を越えた後の「宇津ノ谷峠」でちょっと寄り道をしました。
 宇津ノ谷峠には、大正のトンネルと明治のトンネルがあります。 下り線平成トンネルの手前の旧道を行けば上り線の昭和トンネルを共に跨いで現役の大正のトンネルにたどり着きます。 寂れたラブホの間の狭い道を入ったところに明治9年に掘られた日本最初の有料トンネル (人の通行料は6厘、馬がその倍)だという長さ223mの歩行者専用、明治のトンネルがあります。(左の画像)

 続いて藤枝バイパスから大井川を越え、掛川バイパスを通って天竜川に沿った国道152号線に入ります。
 国道を少し北上して横山トンネルの先で右に分岐する赤い雲名橋を渡り、 県道を横切って直進すると渥美屋酒店があります。そこに天竜スーパー林道の起点表示があり、 秋葉神社まで約8km弱、杉林の中の坂道を登ります。

 秋葉神社は火防の神であり、電気街の秋葉原の地名(かつてこの地は火事が多く、 秋葉様を祭ったといいます)とも関係があるそうです。秋葉神社を過ぎると左に天竜川、 右に気田川にはさまれた尾根筋を北上します。入口から34kmで山住峠となり県道と交差しますが、 天竜スーパー林道はさらに続きやがて水窪ダムに降りていきます。

 ダムから国道に降りる途中に林道灰ノ沢線があります。トンネルがありそうなので入ってみました。 30m位の狭いトンネルでした。
 水窪町の国道に戻りましたがここまで全長53km、全線舗装の天竜スーパー林道は終わります。 感想としては5段階表示で3。

 水窪町の国道を少し北に行くと天竜川林道の入口があります。 舗装路を約7kmほど登ってトンネルを一つ超えたところが大津峠となります。 ここには珍しくも公衆電話ボックスがおいてありました。 さらに5kmほど進むと左に西山林道が分岐していて大嵐駅側に降りられるようです。
 天竜川林道は伊那小沢駅付近までの全長33kmの舗装路です。 天竜第一、第二隧道ほか計4本のトンネルがありますが特に特徴のない普通のトンネルですし、 何かと広場のある天竜スーパー林道に比べると何もないただの山道でした。5段階表示の2。
 県道を大嵐(「おおぞれ」とよむ)駅まで少し戻ります。 大嵐駅はこのあたりの秘境駅には似つかわしくないきれいな駅舎です。

 飯田線の大嵐駅の近くにはトンネルがあり、こちらのほうが興味深いです。 もともとは鉄道が走っていたようで、佐久間ダムにより水没するため水窪経由へと付け替えられた時に その旧線のトンネルが2本残ったのです。1本目は短いのですが2本目は1200mと長く直線で、 「夏焼隧道」と名前があります。地図上では県道になっていますが、 トンネルを出たところで閉鎖されているためその先の通行はできません。
 またこの駅は静岡県にありますが日本で一か二の小さい村として有名な愛知県富山村の最寄り駅となっています。 ついでに、小和田駅は静岡、愛知、長野の県境にあるだけでなく、車やバイクでは近づけない、 いわゆる秘境駅ということです。

 ほとんど寄り道で一日を終わり、佐久間ダムに戻って近くの道の駅で車中泊です。

 翌日再び水窪町に入り国道を北上します。青崩峠に向かって上がっていくと三遠南信道との分岐になります。 三遠南信道は国道474号線として飯田まで行く計画のようですが今のところ草木トンネルを経て 兵越林道に合流したところで止まっています。

 三遠南信道との分岐の手前からはもともとの国道152号線が青崩峠に向かっていますが、 現時点では林道青崩線となっていました。急坂を3.3kmほど登っていくと終点になり、 そこから徒歩20分で青崩峠(標高1,082m)に出られます。 (終点広場の先にはさらにダート路がありその終点からならば5分で行けます。)

 峠は狭く、中央構造線を表現した色の異なる2つの岩石で造った標識が立てられています。 峠からは、いかにももろそうなガラガラに切り立った斜面の山肌が見えました。
 ここからは一旦戻って草木トンネルで兵越林道に抜け、兵越峠(標高1,165m)で越えることになります。

 兵越峠の名前の由来は、武田信玄の兵が越したことによるものだそうです。 兵越峠を長野県側に下って再び国道152号線に合流したところからも、 青崩峠に向かって行き止まりの国道を戻ることができます。約4kmほどでその先は徒歩20分程度らしいです。

 (この兵越峠では毎年10月に静岡、長野の県境を賭けた 「峠の国盗り綱引き合戦」が行なわれていて、勝った方が県境の立て札を相手方に1b動かせるのだそうです。 もちろんあくまでイベントであって行政上の県境が変わるまけではありません。)

 引続き北上しますが、遠山郷を過ぎて上村のあたりはよい道が続いていました。 三遠南信道矢筈(やはず)トンネルへの道の手前で、国道は左手に道を取り直進します。 しばらくすると地蔵峠に向かっては「152号通行不能」、右に「しらびそ高原」の表示があります。

 その通行不能の国道を地蔵峠に向かって3.8kmほど進むと道は河原になって消えてしまいました。
 ここも一旦戻って村道(蛇洞林道)で結ばれた地蔵峠に向かいます。 途中からしらびそ高原への分岐がのびています。

 せっかくなのでしらびそ峠(標高1,833m)に寄り道しました。 南アルプスの展望をダイナミックに見ることができます。 この峠から東の大沢岳方向にに延びる長そうな林道は通行止めになっていますが登山用に利用できるようです。
 さらに少し登ると「ハイランドしらびそ」の立派な建物があり、 そこから南に御池山林道が下栗の里まで降りています。 なお、4kmほど先には御池山クレーターというのがあって、大昔にいん石が衝突してできたものだそうです。 それとなく形が残っていました。御池山林道は5段階表示の4。

 蛇洞林道から再び国道に戻り、地蔵峠(標高:1,314m)を通過しました。ここからは前年に来たところです。      

 分杭峠(標高:1,424m)までくると天気が怪しくなってきました。前浦林道は工事中で今回も通行できません。

 美和湖の西岸に見ておくべきトンネルがあったので中ほどにある神田橋を渡ります。 橋を渡る手前には湖岸に残る中央構造線の露頭があります(中央構造線公園内)。 神田橋は幅の狭い赤い橋で、対岸の遊歩道に渡るためだけにあるようです。 山吹がきれいに咲く道を車止めまで入り、そこから歩くとすぐに細い真っ暗なトンネルがあります。 名前を「こわくび隧道」といいます。長さは200m程、高さ制限2.2mの標識が立っていましたが 入ってみるにはちょっと・・・。

 国道を茅野市に抜け甲州街道と交わったところで今回の国道152号線の旅は終了しました。

 蔦木宿で車中泊のあと、帰りの寄り道は甲州街道牧原の信号を左折してそこで釜無川対岸の崖にある 日野春隧道を、そして釜無川右岸林道、精進ヶ滝林道、さらにフォッサ・マグナ大断層の露頭を見て 御座石林道で下りました。


 秋葉街道は古くから遠州から信州への塩の道でした。 また中央構造線の真上あるため地質的に道路を造ることが困難で2箇所で切れていますが、 近い将来、三遠南信自動車道という高規格道路が整備されて青崩峠は通れるようになるそうです。

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