din ROMANIA 〜ルーマニアからコンニチハ

15.Sep

ブラショフで働いている日本人ナースNちゃんとランチを食べに街へ出た。

久しぶりの日本語の会話で、どちらも日頃のストレスを発散するかのように喋りまくり、ゆっくり時間をかけて食べたのでコーヒーを飲む頃はもう3時過ぎ。

その店に日本人男性の客がいたので同じテーブルで少し話をしているとタクシーで派手めの若い女の子3人がやって来た。どうやらこの男性はプロモーターで日本の外人パブで働かせるホステスの面接らしかった。

Nちゃんは「ちょっと通訳してくれない?」と頼まれ、「あなたカメラマンなら丁度よかった、この娘たちのアップと全身撮ってよ」と私はコンパクトカメラをポンと渡される。私たちはお金を払って客としてここにいるのにボランティアで協力させられるなんて・・・成り行きで変な状況に関わってしまい私たちは顔を見合わせつつも興味シンシンだった。

プロモA→「1ヶ月のサラリーは600ドル、別に食費が300ドル、いや30ドルだっけ?3万円ってドルでいくらだ?」

そんなこともわからなくてビジネスやってんなよ。怒りが込み上げた。

プロモA→「あなたたちがもしいい子だったら、プラス2000ドルだよ」

『いい子』という言葉の意味は、おそらく店が要望する『何か』に素直に応じて成果をあげたならばという怪しいニュアンスを感じた。ストリップかもしかすると売春もアリかもしれない。
彼女らは心情調査書に身長、体重、瞳の色など記入させられている。

プロモB→ 「こいつらブッサイクだな、顔は中の下だな。体重52キロ?ウソだろぉ」
プロモA→「日本行きまでに痩せさせなきゃな」
プロモB→「でも身体はいいスタイルしてるからモノになるよ」

口も悪いが手癖も悪く女の子を立たせて全身を触りまくり、ウブなNちゃんには仰天の状況が続く。これはもう人材派遣の現場ではなく人身売買に近い。

プロモB→「まるでシンデレラだよ。今までジャガイモしか食ってなかった貧乏人が大金稼いで一家が助かるんだからさぁ」

腐っているにもほどがある。こんな言葉を聞かされる私も軽んじられているのだ、この男に。
初対面なのに失礼千万。
シンデレラは掃除はしたけれども身も心も売ってはいない。一緒にしないでね。

<プロモA>→「おい、あの18歳の子はどうした?来てないじゃないか」
<ホステス志願S>→ 「ダンナがダメだっていうからやめるって」

結婚していても採用されるが子供がいる人は雇わないらしい。でも、事実を隠して来日する人もいる。

<プロモA>→ 「日本に行くにはブカレストでオーディションをクリアしなくちゃいけない。それに受かったら2週間、日本語とダンスの特訓をして日本に出発だ。おい彼女、その口の周りの出来モノは何だヘルペスか?オーディションまでに治せよ。それからほかの2人は太りすぎ。ダイエットするんだぞ!」

ルーマニア語しか話せなくても渡航前の特訓で話せるようになるらしい。客との会話がスムーズで楽しんでもらえて指名も増え給料が上がるとあれば必死で覚えるのも当たり前か。私のルーマニア語が上達しないのは金が絡まないから?

私たちは役目を終えて席を離れ、プロモーターに同行していた無口な青年と話をした。
彼はプロモーターの仲間ではなくて、ルーマニアにオンナを追いかけてきたものの結婚サギにあったという。オンナとの出逢いは日本の某外人パブ。結婚式をするために両親まで連れてきたのにオンナは仕事で再来日しておりルーマニアには不在。

戸惑った彼はオンナの女友達Gに電話して、両親の手前、彼女のフリをしてくれないかと頼んで数日つきあってもらうことにした。ところが知らない男5人が車2台で付いてきて、その全ての宿泊費、飲食費、ガソリン代まで払わされて1週間で50万円の大放出。ルーマニアで1週間でそんなに使えるものかと思ったら、「何に幾ら必要だからくれ」と多めに取って半分くすねたりしたみたい。

しまいには帰る日でもないのに空港に連れていかれて「今までの案内料1,000ドルよこせ、払わないとトランクは開けない、荷物は渡さないぞ」と脅されて困った彼は知り合いの日本人男性に助けを求めて電話したそうだ。その日本人男性はGを雇っているプロモーターと親しいので「二度と日本へ行けないようにするぞ」と逆に脅し返したら、Gらグループは青年と両親を置いて逃げてしまった。空港に取り残され英語もルーマニア語もわからない青年は、その日本人男性に迎えに来てもらい、このプロモーターと行動を共にしているという。

なんと騙されやすいのだろう日本人。

でも、事が結婚だけに責めるのは可哀想だ。
結婚を誓った相手に不信感はないだろう。
疑わしい人など愛してしまうわけがないのだから。

彼の経験はヘビー級だけど、このテの話は山ほど聞く。

帰り道Nちゃんは「あんなことに協力するの嫌だったのに」と言った。職場で、同僚の知り合いが日本でホステスとして働いて近頃戻ってきたらしく、日本人男性はああだこうだと話題になったそうだ。 「あの高笑いから察すると日本人をバカにしてるんだと思う」とNちゃんは言う。たくさんのルーマニア人がホステスとして日本へ渡航するけれど、日本人と交流を深めるのはお店の中くらいで、そこに来る客だけを見て日本人男性の平均を測られては見解が狭すぎる。ホステス達はルーマニアに帰国後、家族や友人に「日本人の男はねぇ・・・こうなのよ」と土産話を聞かせる。

日本人は情に弱い。それはとても美しく誇るべき部分でもあるのだけれどヨーロッパ的感覚ではない。ホステス達が金や物を欲しがると純粋な日本人男性は恋した相手に目が眩み、喜ぶ顔見たさに要求に応える。また、お涙頂戴の彼女達がデッチ上げた身の上話(家族が病気とか事故にあったとか。でも、たまに事実)に親切な日本人は胸を痛めて金の工面に協力するのだ。借金を負ってまで応えようとする男性もいると聞く。

彼女達のモラルを問う声もあるけれど、彼女達に言わせれば「手を貸すか否かの最終的な判断は男性側の選択。あちらの善意を受け取っただけで私は悪くない」と反論するだろう。@自分の力の及ぶことをA出来る範囲でB決して無理をすることなくC見返りを求めずに、やることが肝要なのだ。

「でも、できるだけのことはしてあげたいから」と心清らかな日本人男性は言うだろうけれど、相手の女性も本気で好いてくれているならば身を削る思いをしてまで金の工面をしている事実に心が痛むってものだろう。女性も国に親族や親しい知人がいるはずだし、日頃から行いの良い人間に対してなら周囲も協力的なはずで、その点ルーマニアは日本より情が厚い国だと思う。そもそも平均月収100ドルの国の医療費が日本人も戸惑うほどの金額であるはずがない。たとえ「困っているの。助けて頂戴。こんなことが頼めるのはあなただけ」と涙を流されたって、彼女は他にも手立てがあるはずなのだから深刻に悩むことはないのだ。

とパブに行ったこともなく美しい女性に懇願されたこともない私のこんな意見に「判ったようなことを言うなよ、実情は辛いんだ」という男性の皆さんの声が聞こえてきそうだけれども、部外者の意見というのは利害が絡まず冷静に現状を見ることが出来るので実は的を得ているものなのだよ。今まさに渦中の諸兄は御一考あれ。

さて、私はどうなんだろう。
ルーマニアに偏ったイメージを持っていないだろうか。ほんの一側面しか知らないくせに『したり顔』してはいないか。一考しましょ。