din ROMANIA 〜ルーマニアからコンニチハ

8.Aug

ブラショフへ帰る日。列車は14時30分発。

ブラショフに戻る列車は14時30分。それまで山で遊ぶことにした。クラウディアが親しいタクシー運転手のアディに電話すると「お金が要るので車は売った」と言う。突然のことにクラウディアは驚いていたが、この国で『急な金入り』はよく聞く話で、とにかく事情はあるのだろうが彼はアッケラカンとして明るい。山を歩いて天然の湧き水を飲み折り返し駅へ向かう。

マトゥーシャがキャベツとチーズを挟んだ熱々のパイをこしらえてランチに持たせてくれた。「もっと長く居たら色々な料理を食べさせてあげられたのに。またいらっしゃい」と言ってくれて何だか本当に自分の伯母のような親しみを感じる。次に訪問する時は、あのくつろげる部屋でマトゥーシャとお喋りを楽しみたいな。

〜14時30分クルージュ発の列車にて〜

座席につくとコンパートメントに男性と二人きり。彼は携帯電話で誰かと話したり書類に何か書き込んだり忙しかったが列車が動き出すと荷物をしまい話し掛けてきた。「ルーマニアの列車は遅いだろう。しょうがないさルーマニアだもの」それが一言目だった。

彼の名前はドル、40歳。職業はエンジニアで、これからベルギーにあるメルセデスの工場に出稼ぎに行くので書類を調えるため3日ほどブカレストに滞在するのだという。ルーマニアでは縫製工場の機械のメンテナンスをしていて長年、大勢の女性に囲まれて働きウンザリだと話す。「女はとにかく扱いにくい。日によって気分が違う、だって生理があるだろう」と女の私に言われても・・・。それは、でも、まあ事実だ。

「ツイカ飲むか?」遠慮なくいただく。

お決まりの家族の話になると「妻は病気で寝たきりだ。病名は英語で何と言うか知らないけど、ほら、手がこんなになるアレさ」と指をグニャッとひねって見せた。キンジストロフィみたいな筋肉萎縮だろうか。「肉がいけないんだ。食品添加物もね。妻は病気になってから医者に言われてベジタリアンになったよ。そうするとね、汗が臭わないんだ」「ふうん、赤ちゃんが母乳だとウンチが臭わないけど離乳食を始めたらスゴク臭うのと同じかな」と言うと「そうなんだよ!」と食品添加物の恐ろしさを熱心に語り始めた。

彼はとてもお喋りさんで私はほとんど聞き役だ。
私は車窓の風景を写真に撮りたいんだけどなー。

「ルーマニアは何度目?どこに滞在したの?」と訊くので「これまではブカレスト中心」というと「ブカレストは大嫌いだ。あそこに住む60%はジプシーでその80%は悪い奴等だよ」と火がついたようにジプシーへの不満を話し始めた。(その統計は信用していいのだろうか?)

「奴らは危ないよ。勝手に子供を産んで国に出生の事実を届けもしない。お互いトラブルがあれば刃物を取り出してパッと切り捨ててお終いさ。最初から戸籍も無いし問題じゃないよ。働かずに人から物を盗むし、国はジプシーの子供にも教育を与えようとしているのに奴らが拒否して学ぼうとしないんだ。どうすりゃいいんだ!」と私に言われても・・・。

そうしてお喋りしている間に大きな街が見えてきたので「あれは何て街?」と訊くとドルは「知らない」と答えて話を続ける。しばらく停車。

随分経って何気なく駅名を見ると・・・『BRASOV』だった。

「ブラショフだよっ!!」と叫んで慌ててリュックを背負いカメラ片手に席から飛び上がり、ドルも私の辞書やらノートやら掴んで一緒に降りてきてくれた。超パニックになっている私に誰かが「マリアを知っているか?」と声をかけるので「知らないっ」と答える。あまりにも慌てすぎて手も足もガクガク、ブルブル。

停車時間がまだあるとわかるとドルと私はゲラゲラ笑いだしお別れのキスをした。

5時間喋り通した友達と別れの挨拶を交わしているというのに、誰かがしつこく「今夜泊まる部屋はあるのか?」と言っている。「アパートがあるからいいのっ」と言うと姿を消した。

ん〜?あの揉みあげの長い男どっかで見たな。

あとで考えてみたら、『地球の歩き方〜ルーマニア〜』で名の知れたグレッグだったようだ。